近代は快適さや簡便性を求め続けて、ボタンひとつで何でもできるようになり、日常生活から辛抱が乏しくなってしまいました。
人同士の生身の触れ合いも薄れ、親密な人間関係を築きにくくなっています。
そのうえ価値観が混乱,相対化して、生きる上の「核」を作ることが多難な時代です。
枠組が曖昧で、アイデンティティを確立しにくく、「中心を喪失した時代」とも言われています。
時代の急激な変動,欲望をあおる消費市場,何が正しいのか分からない情報の洪水,自己を埋没させる管理システム。
それらのなかで現代人は、主体性やトラブルに対処する力,自分を制する力,悩む力などが弱まり、全体に境界例的気質が増しています。
混迷した今日にあって、自己同一性(アイデンティティ)や自律性をいかに育てていけるかということを、改めて考察する契機にしてみるべきかもしれません。
(続く)