「犯罪被害者の会」シンポジウムでは、当日参加者に犯罪被害者支援の協力をしてもらえるよう、ボランティアを呼びかけました。
心子は犯罪被害者に対するカウンセラーとして協力したいと、アンケート用紙に記入しました。
自分の仕事や心痛で手一杯なのに、このうえボランティアなどできないだろうと、内心僕は心配していました。
心子はこのようにしばしば、思いついたような目標を口にすることがありました。
そのときは確かに本気なのですが、でもそれが持続するわけではありません。
それは実は境界性人格障害の特徴のひとつである、「不安定な自己像」(同一性障害)から来るのだろうというのは、当時の僕はまだ充分には把握できていませんでした。
そこを了解していれば、僕は彼女の言動に戸惑うのではなく、心子の根本的なはかなさを抱き留めるよう、心遣いができたかもしれません。