『マエストロ (1)』さそうあきら(双葉社)
『マエストロ (2)』さそうあきら(双葉社)
『マエストロ (3)』さそうあきら(双葉社)リンク先はamazon.co.jp
この人の作品は知っていたが、ペンタッチや台詞・音の表現が自分には合わなかったので今までまともに読んでなかった。
けど、店頭でこの本の第3巻が平積みであるのを見ながら、何か予感がした。毎日毎日、表紙を眺めながら我慢すること3週間、別の書店で第3巻をパラ見する機会に恵まれ、最初の数十ページを読んだだけで全巻買うことを決意した。
クラシック音楽は15年ほど前にオペラにはまった時に聞き始めたけど、楽器をやっていないので技巧的なことは何もわからない。『のだめカンタービレ』で音楽家という集団が織りなす不協和音やハーモニーの面白さに再びオーケストラを聴き始め、今月はカラヤン生誕100周年ということでカラヤン漬け……ではあるのだけど。
で、このマンガ。面白い! 一度は解散したオケのメンバーに新たなメンバーを加えた音楽家たちの前に、正体不明のオッサンが指揮者として現れ、コンサート目指して『運命』と『未完成交響曲』の練習を始める。ひとりとして完成された音楽家はいなくて、皆何かしらの挫折や悩みや障害を抱えている。無名なのに魔法使いのような指揮者のオッサンに導かれ、摩擦や衝突があり、互いの出会いによって解けるわだかまりもあり、オーケストラは音楽家の集団というだけではなくチームになり、それぞれが自己を超える音を出せるようになっていく……という筋書き。
人と組織を専門にしている自分としてはこれをネタに組織行動論が書けるぐらい面白いと思った……そう思う作品は、過去には三谷幸喜脚本のドラマ『王様のレストラン』があったけど、これはすでに若手の経営学者に本を書かれてしまった。もうひとつの三谷脚本である『新選組!』については、何本か試論を書いている。そして、このマンガにも何本か組織行動論を書けそうだ。
でも、そんなことよりも、一冊に2回ぐらい、涙が出そうになってね……ううっ、台詞と絵だけで音楽のスケール感を感じさせるのはすごい。ペンタッチは好みじゃないけど、しょぼい人物たちのかき分けが凄い。
これ、テレビドラマで見たいなぁ……13回のワンクールなら十分に面白い作品になると思う。