アベノミクスでタクシーがつかまらない? 減車法に見る自民党の業界癒着
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「失われた20年」に苦しんだ日本経済を上向かせることに成功してきたアベノミクス。しかし、デフレ脱却に逆行する消費増税を決めるなど、安倍晋三首相の"経済音痴"を疑わせる場面も相次いでいる。成長戦略では規制緩和での踏み込み不足が目立ち、アベノミクスは「次の一手」を見い出せないでいる印象だ。
そうした中で、アベノミクスの行方を危惧させる新たな政策が、20日に成立したタクシー減車法だ。この法律では、国土交通大臣が、タクシー会社の競争が加熱している地域を指定し、会社や首長などからなる協議会が営業台数の削減目標をまとめる。新規参入や営業台数の追加はできなくなる。
法案成立の背景には、タクシー運転手と事業者の収入のバランスの問題がある。タクシー会社が増車して売り上げを確保しようとすると、運転手一人当たりの売り上げは減ってしまう。タクシー業界からの強い要望を受けて、自民、公明、民主の議員立法で実現したこの法律は、競争状態の緩和を目指している。
しかし、タクシー業界を守ろうとするあまり、議論から抜け落ちているのが肝心の利用客の利益だ。10月の自民党の部会では、居酒屋チェーン「ワタミ」を創業した渡邉美樹参議員が、「居酒屋業界が苦しくなるから居酒屋の新規出店をしてはいけないとなれば、競争はなくなってしまう」と述べたが、目立った反対は渡邉氏だけだったという。タクシー業界が自らの懐を守るために台数を減らし、タクシーがつかまりにくくなってお客が不利益をこうむるなら「誰のためのタクシーだ」という話だろう。
今回のタクシー規制も、安部首相が成長戦略の柱となる大規模な規制緩和を打ち出せていないことも、背景には業界利益を優先する相変わらずの自民党の体質が見え隠れしている。こうした古い自民党の利権構造を突破できるかがアベノミクスの成否を握っているといえる。それはすなわち、長期政権の期待のかかる安倍政権が、本当に意味ある実績を残せるかの分水嶺とも言える。 (呉)
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