一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

沢木耕太郎『危機の宰相』

2007-06-03 | 乱読日記
もとは1977年の文芸春秋への記事で、今回初の単行本化だそうです。

「所得倍増政策」を掲げた池田勇人、立案・実施を支えたエコノミスト下村治、宏地会事務局長田村敏雄を描いたドキュメンタリーです。

病気・敗戦などにより大蔵省の出世コースからはずれた三人の人生が交錯し、池田内閣での「所得倍増政策」により、そのまえの岸内閣時の60年安保問題による政治的混乱から一気に経済的発展へと国民の目を向けさせるまでにいたった軌跡を描いています。

三人を"Good Loser"として共感を持って描くとともに、あの安保闘争がなぜ一瞬にして収束してしまったのかという少年時代の疑問を解き明かそうというあたり、いかにも沢木耕太郎風の対象へのアプローチの仕方が、すでに三人とも故人になっている約40年も前の話を生き生きと描いています。



改めて思ったのは、「敗者」といっても戦前の高級官僚はエリート層を形成していて、その中でのポジションというのは常に用意されていた(「面倒を見る」ともいいますが)んだな、ということ。

公務員(特に上級職)の数や政府系特殊法人の数がいつからどれだけ増えたのかは調べてないのでわかりませんが、おそらく1960年代くらいから仕事が増えたと同時に組織のピラミッドを維持するために戦前入省組の天下りポストを用意しなければならなくなって加速度的に増加したのではないかと思います。
多分それまでは、もともと人数が少なかったり戦死したり、公職追放にあったりしてそういうのが問題にならなかったのでは。

今の公務員制度改革とか年金改革は、平和と経済成長ののツケが回ってきた、ということなんでしょう。
となると「今の公務員」とか「今の年金(非)受給者」についての是非だけでなくもうちょっと長い視野の議論が必要なのかもしれません。







コメント
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