一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

仮装というには

2007-06-14 | よしなしごと

東京地検、元公安調査庁長官宅を捜索 朝鮮総連ビル巡り
(2007年6月14日(木)06:10 朝日新聞)

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部が入った都内のビルの土地建物について、虚偽の所有権移転登記をしていた疑いがあるとして、東京地検は13日、取得した投資顧問会社代表取締役で元公安調査庁長官の緒方重威(しげたけ)弁護士(73)の都内の自宅を電磁的公正証書原本不実記録などの容疑で捜索した。この土地などの代金は未払いのままで、緒方氏は同日夜、「購入するつもりだが、金がストップしているから払えないだけのことで仮装売買ではない」と語った。

緒方氏の説明によると、この取引では、中央会館の鑑定額を約1億円上回る35億円で買い取り、5年間は総連側に買い戻し権を認める形で、総連の入居継続を事実上認める契約を結んだという。  

土地などの購入資金は知人を通じて国内の複数の出資者から集めるめどをつけたとしているが、12日に事態が表面化して出資者が慎重になり、売買成立は困難な見通しになったという。緒方氏は、整理回収機構が総連に628億円の返済を求めている訴訟の判決が予定される18日までに資金調達が間に合わなかった場合、売買契約を解除するとしている。

つまり、所有権を移しておいて整理回収機構からの差し押さえを回避しようという仮装売買だ、という疑いのようです(破産の前に配偶者に財産の名義を移しておくようなものですね)。

さらに時事通信によれば、緒方氏の会社「ハーベスト投資顧問」は

同社の法人登記簿や民間調査会社によると、同社は投資顧問業や貸金業、経営コンサルタント業などを目的に昨年9月に設立。代表取締役は、今年4月19日に東京都文京区在住の男性から緒方氏に代わり、会社所在地も同日、中央区から目黒区の緒方氏の自宅に移された。

入居継続や買戻し権などがあるところはそもそもかなり怪しいですし、自宅が事務所というのもナンですし、出来たばかりの会社がこういう濃いところに手を出すのもナンですし、仮装売買にしても、ちょいと仕掛けが甘すぎるような感じもあります。

信託受益権にして受益権をSPCに売却して、SPCへの出資を海外から持ってくるとかいろいろやりかたがあるような。

信託銀行は詐害信託になる恐れが高いので受けてくれなかったんでしょうね。また信託会社を新たに作るというのも怪しすぎますし。
また海外を回すと、マカオの銀行が凍結されている中で別の送金ルートが注目されるのもいやだったとか・・・
でも、30億くらいなら昨今流行の怪しげな投資ファンドの人々を使えばもうちょっとわかりにくくできたようにも思います。

(取引の内容を確認しない中での細かい話ですが、信託受益権の取引でないとすると、「国内の複数の出資者から集める」取引はどういうしくみで行っていたのでしょうか。ハーベスト社が不動産特定共同事業法の許可を得ているとも思えませんし、土地を買ったハーベスト社に導管性がなければ収益目的の投資スキームとしては成立しないように思います。)


そうだとすると、純粋な支援者による投資、ということもありえますが、それなら騒がれたって資金を引き上げたりはしないはずですよね・・・


ところで、緒方氏の経歴は

緒方氏は最高検検事、最高検公安部長などを経て1993年7月から2年間公安調査庁長官を務めた。その後、仙台高検検事長を務めて広島高検検事長で退官し、現在は弁護士。

というもので、多分捜査畑でなく事務屋だったことが、こいう話に乗っかる脇の甘さにつながったのでしょうか。
もちろん自分で絵を画いた、という可能性もありますが、そうだとしたらもっとおそまつな話であります。


と、ここまで書いてふと思ったのは、どのみち裁判で敗訴したら本部の土地は取られてしまうわけだし、ここであえて話題に取り上げられて袋叩きにされることで、逆に「アラモ砦」にしようという意図があるとか??


<さらに追記>

テレビを見ていたら、緒方氏は本件を、整理回収機構との訴訟で総連の代理人を勤めている元日弁連会長の弁護士から紹介を受けたそうです。

となると、あまり深読みするよりは、単に「看板」に頼るビジネスモデルの限界が露呈した、というだけの話かもしれませんね。

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介護保険制度について(その2)

2007-06-14 | まつりごと

介護保険制度についてはあまり調べないで思いつくままに書いていたのですが、Nikkei BP netに「コムスンを生み出した瀕死の介護業界」 という記事があり、制度の変遷と問題点について簡潔にまとめられていました。 

介護保険制度導入後、給付が当初の見込み以上に増大したため、政府は財源不足に危機感を持ち、06年に仕組みを抜本的に見直し「介護予防サービス」を新設し、予防重視に切り替えて給付を抑制する措置を取りました。

しかし

そのやり方が極端かつ強引の上に準備不足だったために現場には混乱が生じている。利用者は必要なサービスを受けられず、介護サービス会社(事業者)は収益の悪化と人材不足に悲鳴を上げ、介護スタッフは報酬カットと労働強化に苦しんでいる。

そして

事業者は監督者である自治体の指導や改善命令を恐がって、利用者へのサービスよりも保身に走り、必要以上に自粛している。
 (中略)
こうした不正行為は厳しく処罰するべきだが、だからといって必要なサービスを利用者から奪い取ることは許されない。厚労省や自治体は不正行為を取り締まるだけでなく、給付の適正さをチェックし、適正なサービスは提供するのが当然だろう。

ここまではなるほど、と思いながら読んでいました。

ただ、最後のくだりに  

介護保険料を支払いながら、これまで受けていたサービスが急に受けられなくなるというのは、民間企業であれば契約違反だ。サービスを受けられる権利を得ながら(介護認定を受けながら)、保険料だけを払い続けて、サービスを受けていない利用者がいることを厚労省はもっと深刻に考えるべきではないか。今後、保険料を払いたくないという国民が増えることが危惧される。

この記事は連載の第1回のようですが、それにしてもこのまとめは疑問です。 


介護保険制度がまだ試行錯誤の段階にあることは記事を読むと良くわかります。
であればこそ「厚労省や自治体は不正行為を取り締まるだけでなく、給付の適正さをチェックし、適正なサービスは提供する」ために制度や運用を改善していく必要があります。

そのなかで、利用者だけが過去に受けていたサービスを当然のように継続して受けられる権利を持つ、ということを前提に置くのはどうなんでしょうか。

年金や医療保険でも、財政難に陥ったり、公平の観点から問題があれば仕組みの見直しを行ってきました。
出来たばかりの介護保険制度はまだ制度として十分定着していないわけですから、この時点で「当初のサービスを受ける権利」を声高に主張するだけでは、かえって制度の破綻を早めるだけだと思います。

制度の不正や無駄をなくし、国民が広く、かつ将来にわたって、できるだけ高レベルの介護サービスを受けられるようにするにはどうするべきか、という議論が必要だと思います。


今回の騒動で、どうやら介護保険制度うまくいっていない(それも、利用者のサービスは低下、財源は不足、事業者も赤字、従事者の労働受験も悪いと、だれもHappyになっていない)ということが明らかになったのですから、傷口が浅い今のうちに、そもそも「保険」制度が最適なのかというところまで含めて幅広く議論することが必要だと思います。

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