一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『小説 琉球処分』

2010-07-29 | 乱読日記

絶版だったので図書館で借りたものの、2段組で600頁もあったので安易に延長すればいいと思っていたら予約が9件も入っていて貸出期間の延長できませんでした。 

なるほどこういう本は一定の需要はあるもので、図書館も存在意義はあるワイと思っていたら。

(6月)4日、国会で首相に指名された後の記者会見で菅直人民主党代表は、「 数日前から『琉球処分』という本を読んでいるが、沖縄の歴史を私なりに理解を深めていこうとも思っている」と述べた。(参照)  

と、話題の本になっていたのですね。 
さらに  

管首相が記者会見で「数日前から『琉球処分』という本を読んでいる」と述べたことから「小説琉球処分」の古本価格が1000円→8000円と急上昇し入手困難の状態になった。そこで講談社では復刊する事にした。(参照)  

とヒートアップしているようです。 
確かに調べてみると中古も売り切れ。
図書館で再度予約待ちをしているうちに復刊が出そうです。   


さて本書は、明治維新以降、琉球王国が沖縄県として日本国に併合され琉球王国が消滅したいわゆる「琉球処分」を琉球王国の視点から描いた小説です。 
まだ三分の一くらいしか読んでないのですが、かなり面白いです。 

冊封関係で清と薩摩藩の間を緩やかに泳いできた琉球王国が明治維新以後の日本国の国際的な主権の確立というハードは外交に巻き込まれていくところは、その日本自身が欧米列強の国際政治に巻き込まれていく縮図であり(結果は違いますが)、新たな政治力学に対するときのナイーブさと昔ながらの知恵の有効性と限界について考えさせられるものがあります。

このへんは、チベットが1913年の独立宣言以後諸外国と積極的に外交関係を結んだり、国際連盟に加盟したりしなかったことが現在の状況の一因になっていること--「独立」というのは自覚の問題でなく多くの国から共通のプロトコルで認められる必要があることなどが連想されますし。そう考えると開国したばかりの明治新政府は、不平等条約の改正や領土の確定など、いきなり出た外交の大海原でうまく立ち回ったよなぁなどといろいろ考えさせられてしまい、その結果読み進むのが遅くなってしまったということもあります。

これから読む部分の展開としては、清国・薩摩藩との関係の中で成り立っていた「琉球王国」の政治的立ち位置、江戸時代も清国や東南アジアと交易をおこなってきた琉球独自の視点、明治政府の「文明開化」に触れた琉球の若者の感動、王国内部の解明派と守旧派、世襲派と実力派の争いなどが繰り広げられることが期待されます。

スケールの大きさ、登場人物のキャラの立ち方など、大河ドラマの原作としてもとても面白いんじゃないかと思います。
(政治的なトーンが難しいかもしれませんけど)


PS  
首相が歴史を勉強するのに小説が適当かというツッコミはあるかもしれません。
ただそれをいえば幕末・明治についての「司馬遼太郎史観」の影響も大きいですよね。(みんなの党はみんなが坂本龍馬らしいし、皆さん大好きな『坂の上の雲』とか) 

もっとも明治維新から戦後にかけての歴史は現代につながる論点が多いだけに「客観的な研究書」というのが成り立ちにくい(そもそも歴史において成り立つのか?)ので、いろいろな視点から情報を集めるのはいいことじゃないかと思います。

せっかくなら菅総理の読後感も聞いてみたいです。


コメント
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