NHKのクロ現でやっていた震災復興支援ファンドの話
けっこう絶賛気味だったのでTwitterでKYな突込みをしたのですが、実際どんなモンだろうと調べてみました。
多分これのことなんじゃないかと思います。
そのなかの一つ、かまぼこファンドを例にとって見ます。
かまぼこ店を営業者とする匿名組合に出資する(かまぼこ店と匿名組合契約を結ぶ)というスキームのようです。
ファンドを募集している会社は第二種金融商品取引業者の登録をしています(登録しないと募集できないので当然ですが)。
一口5000円ですが、同時に一口あたり5000円の「応援金」を支払わないといけません。
契約期間は86ヶ月で、配当は37ヶ月目から毎月の売り上げの1%相当が回ります。
(「応援金」とすると課税の問題が出るので配当比率を半分にしたほうがいいように思うのですが、今期であれば損失が大きいので消せるということでしょうか。)
ファンドの募集をするミュージック・セキュリティーズ社は手数料として出資金一口あたり500円を報酬として受け取ります。
出資に対して10%の報酬は太いですね。そしてその後は監査をするだけです(websiteではプロジェクトの進捗を公表する予定のようですが)。
また、特典として商品が定期的に送られてきます。(これは配当課税の対象にならないのでしょうか?)
かまぼこ店にとっても無担保で資金が手に入るのであれば、応援金と合わせた額の5%を取られても金融機関から(もし借りられたとしてもそれ)よりは有利な調達かもしれません。
スキーム上ちょっと気になるのが、運用期間終了後の元本返還の原資が確保できるかについてのシミュレーションがないこと。
そのときは「被災地飛躍ファンド」とかでまたミュージック・セキュリティーズ社がファンドで資金調達するのかもしれません。
また、分配金額のシュミレーションの「利回り」が期間を勘案して割引いていないこと。これはちょっとミスリーディングだと思います。
仕事だったらこういう商品は相手にしないのですが、「顔の見える被災者に支援ができるのであればいい」という個人はけっこういるかもしれませんね。
ただ、本来は寄付・支援と分けて、収益性を追求する純粋な投資・金融商品として成り立たせたほうが、あとあとトラブルが少ないしと思います。
(たとえば思いつきですが低利回りだけど担保のあるゼロ・クーポンのデットとハイリスク・ハイリターン狙いのエクイティ商品を分けるとか・・・まあ、そんなに綺麗な収支が組めないからこういう商品なのかもしれませんけど)
クロ現のゲスト解説者は「復興はファンドが支える」などと絶賛してましたが、そこまで言うのは純粋な投資に値するような金融商品としてまっとうなものが出てからにしたほうがいいと思います。
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従い、課税関係は、配当ではなく、事業所得になると理解します。但し、サラリーマンで給与所得のみが収入であれば、20万円の申告不要所得に入り、受領したリターンをそのまま収入と思えばよいと理解します。
ミュージック・セキュリティーズ社のファンドのほとんどが匿名組合で、匿名組合の仕組みや組合員になる場合のリスク(途中で抜けることができないのが、一番大きなリスクかも知れませんが)等についても、番組が伝えたのか、気になりますが。
NHKのキャスターはリスク等について質問していたのですが、解説の藤沢久美という人が絶賛しすぎていたので引っかかりました。
「登録した金融商品取引業者が目利きをして」とというけど調べてみると投資運用業者としてファンド運営するのでなく二種業者の媒介だし・・・
いい試みだとは思いますが、復興支援の「思い」だけでなく金融商品としてよりリスク判断がしやす商品になるといいと思います。
ところで、課税関係ですが、所得税基本通達36・37共-21 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/05/16.htm
によると、匿名組合員の所得は雑所得のようですね。
そうなると、この雑所得の年間所得金額は20万円を超過せず、給与所得者の場合は所得税法121条の確定所得申告を要しない場合に該当する。(ミュージック・セキュリティーズも、様々な同種のファンドを扱っており、多数のファンドに投資をしたら、合算すると年間所得20万円を超える人が出るかも知れませんが)
ミュージック・セキュリティーズのファンドの特徴は、少額の匿名組合方式と考えます。トラブルになっても、金額が小さいので、解決容易と私は思います。しかし、逆に大きな金額を集め、投資した人が、中途で売買したりすることを可能とはできず、限界はある。しかし、取り組み方法の一つとしては、おもしろいと思います。
天邪鬼な私が気になるのは、今週号の日経ビジネスでも取り上げられ方が「ミ社が組成したファンド」とか「被災地企業がファンドから出資を受ける」という書かれ方をしていて、ミ社が運営責任を持つかのように思われているところです。
法的には被災地企業が匿名組合(ファンド)の営業者・資金調達の主体であってミ社は媒介するだけなので、トラブルになっても関係なく、逆に法的責任がないのに尻拭いをすると違法な損失補てんになりかねません。
人々の善意に基づいているのでそういうトラブルにはならないと思いますが、復興支援の切り札になるためには善意に基づくだけでなく投資商品として独り立ちすることが必要だと思うので、さらなる進化を期待したいですね。