褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 自由を我等に(1931) 大量生産時代の到来を皮肉る

2021年12月09日 | 映画(さ行)
 AI(人工知能)の最近の発展は目覚ましく、意外にも早く現在の人間の仕事をロボットが手っ取り早くやってしまう時代が来るかもしれない。今でも昔なら人間が手作業でしていた仕事を機械が効率良くやっているのを多く見受けられるが、そんな時代を予見していたかのような内容の映画が1931年のフランス映画である自由を我等に。社会風刺劇の体を成していながら、人生の哀歓を感じさせるストーリー。この現代社会は労が多い割に、大して報われなかったりすることに嘆きたくなるが、そんな不満を本作は少々でも吹っ飛ばしてくれるのが良い。

 人生なんて良いことも悪いこともあるんだと改めて気づかせてくれるストーリーの紹介を。
 刑務所に入れられているルイ(レイモン・コルディ)とエミール(アンリ・マルシャン)は昼間は長い台を挟んで向き合って仕事をしている。ある日のこと2人は刑務所の脱獄を企てる。しかしながら、看守の目に留まってしまい、エミールはルイを逃がしてやり、自らはそのまま刑務所での生活が続いてしまう。
 脱獄したルイはそれからはトントン拍子で人生を過ごし、蓄音機の製造会社の社長にまで登りつめる。一方、エミールの方は刑務所暮らしから抜け出すものの、浮浪者と間違えられて再び刑務所暮らし。すっかり人生に絶望したエミールは独房で首つり自殺を企てるのだが、何とロープを括り付けた鉄格子が外れて、そのまま脱獄して逃亡。そして偶然にも求職者の列に紛れ込むのだが、何とそこはルイの会社だった。さて、思わぬ形で再会することになった2人だったのだが・・・

 この再会のシーンが非常に印象的。犯罪者でありながら社長にまで登りつめ、その地位を守るための口封じ代としてルイは札束をどんどんエミールに与えようする。しかし、エミールは純粋にルイとの再会を喜んでいたのだ。この2人の友情が良い。何をやっても上手くいかないエミールだが、これがなかなかの愛されキャラ。綺麗な嫁さんとたくさんの札束に囲まれた社長のルイよりも、少しばかりぶきっちょなエミールの方が、一瞬だが羨ましく感じた。
 この感動的な2人の再会だが、ハッピーには向かっていかない。ようやく運が向いてきたかと思われたエミールにしても、ほろ苦いことが起きたりする。ルイにしてもオートメーション化された新工場を立ち上げようとするが、過去のキズが襲い掛かってくる。そしてラストシーンでは2人ともが、みすぼらしい姿に落ちぶれてしまう。最後に高級車を羨ましそうに見つめるルイのケツをエミールが蹴り飛ばすシーンが出てくるが、そんなエンディングを見て俺なんかは人生に何が一番大切なのかを教えられた。
 1931年の作品だから映画自体がサイレントからトーキーに変わっていく頃。本作もどことなくサイレント映画の影響がまだ色濃く残っていて、古さを感じさせる。オートメーション化された大量生産の時代の社会風刺劇ではあるのだが、ミュージカル風でもあり、ドタバタ喜劇を基調としているので、わざわざ深読みしなくても純粋に楽しめる映画。個人的にはけっこう笑いのツボがハマったし、人生ってこんなものだよねって思えるのが逆に勇気づけられた。
 戦前のフランス映画と聞くと全く観る気が失せる人が多いと思うが、個人的には1930年代のフランス映画は最強だと思っている。喜怒哀楽が全てを感じることができる映画として今回は自由を我等にをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はフランス映画史のみならず世界的にも名監督と言われる部類に入るルネ・クレール。同時代のフランスの映画監督には名監督が多いが、特にこの人の作品は人生の哀歓を感じさせるのが良い。お勧めとして巴里の屋根の下巴里祭リラの門を挙げておこう。


 

 

 

 

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