とある植物園で、ジャックと豆の木の花が、11年振りに咲いた。というニュースが流れたそうだ。花が咲きにくいというか、管理が大変なのかは知らぬが、中々咲かないらしい。数年前、あの木は枯れかけていた。瀕死の状態で、訴えてきたのだ。タスケテ・・・
毎朝、仕事に行くと真っ先に、水遣りをする。語りかけ、心の糧を注ぎ、生きて頂戴。と渾身の気持ちで接すること1週間。新芽が吹き出し、甦った。その後は、緑色の小さな蕾を、やがてそれが白い蕾に変わった時、翌日には芳香の素晴しい純白の花になった。
以来、水遣りを欠かさず、心を通わせることに心血を注いだ。何と、3度咲いた。それ以後は、置いてある場所から移動されて、萎れてしまった。事情があって其処の仕事は止めたが、あの木がどうなったかは知らない。きっと無残に捨てられてしまったのだろう。
白い絹織物の、衣擦れの音をさせて、かの人は現われた。とても美しい人だった。艶やかな面差しとは、この人のことを言うのかもしれない。小さいがきりっとした眉、愛くるしい口元。涼やかな目元には丸く澄んだ、一重の瞳。
宮部みゆきの物語にでも出てきそうな、怪奇な話かもしれない。あそこで異様な体験をして、余りの恐ろしさに、止めてしまったが、今でも恐怖が這い上がってくることも。足が向かないのは云うまでもないが、見えない物にも、命が宿っていることに気づいた。
予知することは、私の任務かも知れぬが、その責任までは背負いかねない。わかっていることを教えてあげたとしても、そのことを信じるか信じないかは、相手にあること。偶々、みえたから云ったまで。大難を小難に変えることはできても、取り去ることは不可能。
ジャックと豆の木の花のつぼみ。白い貴婦人が視えますか?