枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

恍惚の人・映画

2012年10月16日 | Weblog

 かなりはしょっているな。と思いながら観た。冒頭が違う。原作は雪である。主人公がおかしくなり始めたのが、寒さの中であって、それから夏が訪れ、晩秋に亡くなる。時間の経過が描かれていないのは残念だ。森繁久弥さんの演技が、自然体だったのが救い。

 昭子さんは、高峰秀子さん。京子は乙羽信子さんで、何れも亡くなられている。登場人物を最低限にしているのか、昭子の方の兄嫁が居なかった。原作の中では、昭子一人が預かってくれる所を探したりする。昭子の夫は悪役であった。

 泰山木を傘も差さずに、食い入るように見上げる茂造を見て、自分が看取ろうと決める件。その後は、片時も眼が離せなかった筈だ。映画では、雨を告げてわざわざ置いて出る。ここのところは原作に忠実であってほしかった。

 小鳥を買ったのは昭子で、その小鳥の姿に、茂造の心の変化が微妙に現れていくのだ。恍惚の人であるから、その純粋な笑顔に救われるものがある。怒ることも、嘆くことも、悲しむことさえもない、恍惚になる。魂の浄化である。

 映画の最後は、雨の中を昭子を追って飛び出していく茂造であったが、原作は様子が急変していき、敏が気づいた。眠るように息を引き取る。巻末、昭子は小鳥の籠に、覆いをしようと行って、溢れる涙を止められなくなる。鳥籠を抱きしめて泣き続ける。

 どの作品もそうだが、原作との差にがっかりする。洋画はともかくも、邦画までこれでは、映画はつまらなくなる。原作への忠実さを描くとすれば、どんなに短くても2時間は必要だ。ポイントを押えれば良いのではない。作者の言いたいことが少な過ぎる。

 初夏の薔薇。挿し木は、晩秋にするのがいいようだ。湿気が多いのも、暑いのも好まないらしい。

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