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枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

うさぎのダンス・14

2023年02月10日 | Weblog
 ふみこはまさ婆が納屋でカタタンパタンとさせているのに、こっそり近づいていた。天窓の明かりの下で、機織り機に腰掛けてのまさ婆がいた。機織り機から手も眼も離さずで「おめさの着るもんだ、坊ちゃまと学校さ行くだろて」ふみこははっとして、自分の姿を眺めた。家から月世界に行き、そのままを翔けていたのだ。

 ふみこは離れでのリョウとの暮らしだけなので気づかなかったが、学校に行くとなれば洋服は怪しまれる。先日のこと、まさ婆は布のほどきをふみこにさせた。「ふ~ん、あたしの着物か?まさ婆が織ってくれるんか」「しょうがないだろに、リョウぼっちゃまが恥かくでな」手伝おうか、と言いかけてふみこは口を閉じた。

 おばあちゃんもしていたけれど、布を均等に織るのはふみこには出来ようもない。機に掛けてある縦糸に横から刺し通すのは、簡単そうだが直ぐには無理だ。まさ婆は台所のことをふみこに任せ、雨の多い日には夕方まで座っている。晴れた日には梅を採りに山に向い、井戸水で丹念に洗い竹笊に上げ甕にいれ塩をまぶす。

 リョウは、ふみこの傍を離れることはないが手伝いはしない。時々遠い眼になるのは、リョウが何かを思いつく時なのでふみこは話しかけない。翌日、半紙に描かれた図の通りに作り上げる。「リョウさん、これはなに?」丸い円の外側には月の形が描かれ、その内側には数字があり三つ目のには漢字が並びそれぞれが回る。

 リョウは得意満面で言う。「暦だよ、僕なりの遣り方だけど」リョウの説明によると、月は朔を始めに上弦から望となり満月で欠けて下弦で元への仕組み。数字は日付で、漢字は大潮や小潮だと熱が入る。リョウの発明に、ふみこは目をぱちくりさせ驚いていたら「何日か分らないでしょう、ふみこにあげるよ」にっこりした。
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