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枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

うさぎのダンス・15

2023年02月11日 | Weblog
 ふみこのズボン姿は、まさ婆には風変わりに見えたものの夜には寝巻になるので構わない。それに洗うにも山瀬の湧き水しかなく、石鹸などどこにもない。茶碗や箸は、さ湯を注いでのことで洗剤はなくあるのは灰だ。草刈をすれば多少の汗はかくが、まさ婆の沸かす枇杷葉茶のせいか臭わないのもありがたかった。

 ふみこがリョウからもらった月の暦を頬を緩ませて見ていると、まさ婆が納屋から織りあがった布を手に「これを春までに縫えや」「織れたん?早いなぁ、ありがとう」ふみこは、反物を胸に深々と膝を突いて頭を下げた。紺絣の中に、小さな花にして一つ赤色が織り込まれている。ふみこは泣きそうなのを堪えた。

 梅雨時には草刈りもままならぬ日が続いたが、明ければ陽射しは強く暑い。ふみこは、早朝を起きるので土間に這い回る生き物に気をつける。今朝は一日の段取りを決めかねていて草鞋を履いた途端、百足に咬みつかれた。まさ婆がふみこの足元を見て、甕の中へ手拭いを浸すと足指に縛り付けたら痛みが消えていく。

 リョウはそんなふみこを心配そうに見ていたが、まさ婆に何か告げるといなくなった。百足の毒はふみこには強烈で、身体中が熱くなり板の間に倒れ込んだ。リョウさん…ふみこは朦朧とした意識の中、リョウのことばかりが瞼に浮かんできて心もとなかった。夕方には、熱が引いたようでふみこの傍にリョウもいた。

 リョウは小枝の先を削って細くして、粉を練っては付けているが何か異様な臭いがする。ふみこが起き上がろうとすると「寝てなくちゃだめだよ、お腹空いたの?」「まさ婆は?」リョウはほほえみ「今日は寝てていいってさ、ふみこ暗いとよく見えないでしょう」小枝を握り差し出すと硫黄の臭いがした、マッチだ。
コメント (4)
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