ふみこはリョウを送り迎えし、まさ婆に代わっての台所や家畜の世話に明け暮れていた。夏が来ると少し長い休みになり、リョウはふみこが立働く姿を見ていて奇妙な物を作り上げた。竹細工だが人形の手や足が、時間で動く仕掛けになっている。「ほらっ、ふみこがしていることだよ」ふみこは眼を丸くして感心した。
リョウの作る物を見ながら、ふみこはそういうことを思いつくのに不思議な気持ちで「リョウさん、学校で習うの?教わるん」「誰も教えてはくれないよ。僕がね、考えて作るの」ふみこはリョウを間近に見て、なんて強い志なんだろうと思う。同時にふみこの心を捉え揺さぶりだし、寄せる波のように浸すのだった。
リョウには学校という場は必要なく、知識にかけては教師よりも多くを知り得ていた。ふみこと一緒にこの時代に紛れ込んだ限り表向きには通らないし、まさ婆が困るのも承知だ。リョウが、年齢よりも年かさに見えるのも正直なところだ。ふみこはリョウに対して時に気持ちがおいつかずなのが、もどかしかった。
ふみこの月日は、日々の暮らしに追い立てられる。風に涼やかさが混じり、天空に輝く星の位置が変わると冬支度の用意だ。山に栗を拾いに行き、茸類を探しておいたりも欠かせない。柿は皮を剥き藁で紐を編んで吊るすのも、まさ婆とふみこの仕事だ。柿剥きには、茣蓙を膝に敷いてするのは渋が付くと落ちないのだ。
枇杷葉の樹に花が咲きだすと、冬を知らせる雪が散る。ふみこは、花の香りとその姿に自分を重ねてしまう。まさ婆は枇杷葉に関しては長けていて、表には回れない者に頼りにされている。ふみこは、まさ婆のしていることからも眼が離せないのだった。学校に通わずとも、学ぶ気持ちであれば知識は増えるのだもの。
暦・別記 天皇誕生日 八せん始まり
リョウの作る物を見ながら、ふみこはそういうことを思いつくのに不思議な気持ちで「リョウさん、学校で習うの?教わるん」「誰も教えてはくれないよ。僕がね、考えて作るの」ふみこはリョウを間近に見て、なんて強い志なんだろうと思う。同時にふみこの心を捉え揺さぶりだし、寄せる波のように浸すのだった。
リョウには学校という場は必要なく、知識にかけては教師よりも多くを知り得ていた。ふみこと一緒にこの時代に紛れ込んだ限り表向きには通らないし、まさ婆が困るのも承知だ。リョウが、年齢よりも年かさに見えるのも正直なところだ。ふみこはリョウに対して時に気持ちがおいつかずなのが、もどかしかった。
ふみこの月日は、日々の暮らしに追い立てられる。風に涼やかさが混じり、天空に輝く星の位置が変わると冬支度の用意だ。山に栗を拾いに行き、茸類を探しておいたりも欠かせない。柿は皮を剥き藁で紐を編んで吊るすのも、まさ婆とふみこの仕事だ。柿剥きには、茣蓙を膝に敷いてするのは渋が付くと落ちないのだ。
枇杷葉の樹に花が咲きだすと、冬を知らせる雪が散る。ふみこは、花の香りとその姿に自分を重ねてしまう。まさ婆は枇杷葉に関しては長けていて、表には回れない者に頼りにされている。ふみこは、まさ婆のしていることからも眼が離せないのだった。学校に通わずとも、学ぶ気持ちであれば知識は増えるのだもの。
暦・別記 天皇誕生日 八せん始まり