枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

悠紀の彼

2023年11月03日 | Weblog
 悠紀は十代でも二十代に在らずで、既に四十代に差し掛かっている微妙な年齢でもある。無論のこと独身で、仕事はてきぱき熟し特段に願いもなく毎日が満足の日々だ。彼氏?いない訳じゃないけど、仕事の上で対等にしても付き合おうという気が起きない。数人の同僚は、年齢も上下の良好な関係を築く間柄だ。

 自宅からの通勤で不自由さはなく、自転車は快適そのもの。最近は、痩せるというよりも健康維持に貢献度が大きい。雨の日には父親の車に便乗で、途中に降りれば勤務先に着くのも便利だ。運動も適度にしている為、身体は柔軟で一日椅子に掛けての仕事も難なくやれる。生活へ親の干渉はなく、自由と責任に。

 深まり行く秋の季節に、移動や配置換えは先ずないのが新入社員と達しがある。今時の中途入社は、親のコネか所業に拙いことで首になったと悠紀は無視することに。朝に出勤すると、着替えたら掃除があり当番で割り振りが決まっている。机は決まっていて、余程のことが無い限り変わらない。隣に机が増えた。

 初日、朝礼で紹介された彼はにこにこ顔であった。背は低からず高からずで少し横が広いのと、何より顔のでかさに沈黙。悠紀は、職場の空気の変化に独身者の当てが外れたと知った。成程だわ、外見じゃないけど行動を一緒には抵抗もあるか。その彼が、隣の机に来て座るではないか…悠紀は眉間を寄せ縦皺。

 彼はにこやかに微笑むと、右手を差し出して「よろしく」と言った。悠紀は無視できなく、握手はしないものの「こちらこそ」と口元を緩めた。彼は決して男前ではないが、身体から発するオーラを持っているようで一瞬にして心を射抜かれた。これまでの経験に全くない感情に、支配されていくのが妙な気分にも。

 手塚治虫生誕日・文化の日。新連載を開始、お待たせ・誰も待ってない?期待に添えるとうれしいです。
コメント (14)
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