バックから一歩、売り場へ出て行くと、
「あれえ~、私って、こんなに人気者だったのかしら?」
と、勘違いしそうなほど、声を掛けられる。
お昼を回った頃、上品なお客様が、聞きにくそうに荷出し中の私の顔を覗きこんだ。
「あのー、ちょっと、お尋ねしますが・・・。砂糖は・・・もう、ないんですか?」 ああ、また砂糖。
「申し訳ありませんが、売り切れました。開店前から、並ばれてる方が多くて・・・」
私は、申し訳なさそうに、答えた。
すると、何故か、お客様は、急に、打ち解けた感じで、
「実はですねえ、他の店舗へ今朝、行ってきたんですよ。そちらも、もう、売り切れでねえ。ここは、本店だから、もしかしたら・・・って期待したんですけど、遅く来る方が悪いわよねえ。ごめんなさいね、お仕事中に、邪魔して」
「いえいえ、そんな・・・。また、お越し下さい」
癒しのオアシスのようなご婦人が去ったあと、背後から、おじさんの声がした。
「ちょっと、ねーちゃん。鏡餅の下にしく昆布があるやろ?あれ、どこね?」
振り返った私は、一瞬、ぽかんとした。
「昆布・・・ですか? 餅の下に・・・ですか?」
シダか、なんかの葉じゃなくて? 昆布とは、初耳な・・・。
「毎年、ここで、買いよるんよ。久しぶりじゃけなあ、この店へ来るのは。昨年も、あったやろ?」
「昨年・・・(私、ここに居ませんでしたから)実は新人でして」
新人なんて言っていいの 思わず、そう言ったものの、即、後悔した。
「新人なら、分からんな」
立ち去ろうとする、おじさまを呼び止めた。
「鏡餅は、入り口横です。お正月コーナーは、そちらですからご案内・・・」
振り返った おじさんは、かなり、急いでいるようだったが、片手を上げて答えた。
「そうかい、いや、いいよ。自分で行ってみるから ありがと!」
「***どこですか?」
「はい、ご案内します」
・・・をざっと数十回繰り返した。
「お忙しいのに、すみませんねえ」
「わざわざ、ありがとうございます!」
と、おっしゃって頂くたびに、わたくし、疲れも吹っ飛び、元気を頂いておりまする。
ありがとうございます。
こんな瞬間こそ、お客様=神様です!
中には、「」 (返す言葉もない)というケースも稀に・・・。
そんな時は、記憶から消そう。
「貴方も、忙しいんだから、わざわざ、案内してくれなくても、いいのよ。どっちか、言ってくれたら、自分で行くから」
ご案内しようとする私の腕を引っ張って、そう おっしゃって下さったご婦人もいました。
年末で、人を掻き分けねば、なかなか前へは進めないので、 この際、お言葉に甘えさせて頂くことに・・・。
今年一年、(私にとっては半年)
時には(特売日や年末など限定期間)
闘牛化しつつも (たまには結構!)
当店へ足を運んで下さり、
「がんばってね~」
「ありがとう」 などなど励ましのお声を掛けて下さった、数多くのお客様。
心から、御礼申し上げ・・・ 来年も、また来てね