今朝、新しいスタッフが入った・・・と、思った・・・が違った。
ハイジの教育係、ロッテンマイヤーさんの愛用眼鏡を掛けた若造がこちらへ歩いてくる。
あの子、誰だ!?
近くで見ると、ハマグリ君だった。
「あれ?眼鏡・・・?眼鏡かけると随分イメージが変わるね!秀才お坊ちゃま君みたい」
「よく、言われます」
今日は、比較的、仕事が少ない。乾物の発注もないし、荷物も少なかったのだ。私は補充しようと、台車を引っ張っていった。余り出せる品は、なさそうだけど・・・。
そこへ、秀才お坊ちゃま君に変身したハマグリ君がやって来た。
「手伝いますよ!」
なっ・・・なんと!手伝うとな?「お手伝い」を自ら志願するとは!
まあ、仕事は、さして無いんだけど。
せっかくなので、焼きそば一平ちゃんを出してもらうことにした。
「じゃ、これ出して!」
「UFOと一平ちゃん、どっちが売れますか?」
「どっちもよく売れるけど。UFOかな」
「じゃあ、どんべえの肉うどんと、きつね、どっちが売れますか?」
これには、即答した。「きつね!」
「そうなんだ。俺は、肉のほうが好きだけど」
君の好き嫌いに関わらず、売れるのは、こっちなのである。出さずに済ませてもOKなほど、棚は埋まっているが、暇なのでハマグリ君に聞いてみた。
「賞味期限は手前だけ、ちょっと古いけど、あとは奥まで同じ日付けだから、一箱、出したい?」
入れ替えは、忙しい時には結構大変なのだ。「暇で、やること無い!」というハマグリ君の為に仕事を敢えてクリエイトした。たまには、こんな日もあって、いいよね。
「俺、全部、入れ替えないっすよ。こないだ副店長と一緒に補充したっすけど、副店長がやること見てたら、半分しか入れ替えないんすよ!副店長が言うには、
『俺の域に達したら、いいの お前は、まだ、駄目!』」
ハマグリ君、きっと、が~ん!だったでしょうね。
そうこうする内、ハマグリ君が『オリジナル』と『新発売』のメキシカン味を交ぜて補充していることに気付いた。
「ちょっと待って、これね、違うの。こっちは、ババロネ味で・・・」
私は目をショボショボしながら小さな字で書かれたカップラーメンのパッケージを読みながら言った。
「ん?ババ・・・?ハバロネでしょ?ハバロネはっすね、唐辛子でも一番辛い やつっすよ」
「へえ~、詳しいね。そういう知識、何処で仕入れてくるの?」
ハマグリ君、秀才お坊ちゃま君ぶりを発揮し始めた。
「御菓子にもあるんすよ。これ使ったのが。菓子袋に書いてありますよ」
「へえ~、よく読むね。私は、食べるだけで、読まずに捨ててしまうけど」
「暇っすから」
「ところで、日清カップヌードルビッグのオリジナルとシーフード、どっちが売れますか?」
なに?また、売れ筋についての質問・・・?
「シーフード」
と、私は短く答えた。
「そうっすよね!副店長、何故かオリジナルの方を多く取るでしょ!?」
年末在庫を一度、副店長が発注上げたことがある。その時は、確かに・・・。
「これは、ぼちぼち・・・売れるでしょ?こっちは、微妙・・・。あんまり売れないようで、突然、どっと売れる時もあるし・・・」
以下、略!この後も、「カップラーメン売れ行きに関する分析発表」は続行された。
まさか、売り場でハマグリ君のプレゼンテーションを聞くことになるとは思いもしなかった。こんなに、すばらしい分析結果なのに、
発表者、ひとり。聴衆ひとり・・・
というのが、なんとも嘆かわしい。この場に副店長が居ないのが実に残念だ。副店長は風邪をこじらせ前日には早退した。
「へえ~、よく知ってるねえ。観察力あるじゃん! 担当、私と替わろうか?」
「俺、あちこち、ウロウロしてるからっすよ」
謙遜するハマグリ君だが、感心した!
今日学んだこと
まず、何事も、形から入るべし!
秀才になりたい人は、ロッテンマイヤ~さんから眼鏡を借りよう!