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■第3期所蔵品展「三岸の魅力再発見!-素描から《飛ぶ蝶》まで」 (1月18日まで)

2009年01月10日 23時20分39秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 あえて言います。ぜひ見てください。
 この展覧会は、いわば、三岸好太郎の「SIDE B」です。 

 このブログをごらんになっている方のうち、かなりの方は、道立三岸好太郎美術館にはもう何度か足を運ばれて、代表作といわれる作品も見ているのではないかと思います。
 こういう個人美術館は、所蔵品展を開くときは、代表作といわれるものを軸に、それぞれのテーマにあった作品を選んで、なにを展示するかを決めているのでしょうが、今回は、毎回のように壁にならんでいるおなじみの作品がほとんどありません!
 じつは、神奈川県の平塚市美術館に「鳥海青児と三岸好太郎」展が巡回しているため、「オーケストラ」「檸檬持てる少女」「道化」といった主要作品がほとんど出払っているのです。
 今回は、そういう機会ででもなければめったに収蔵庫から出てこないような作品が目白押しです。
 いわゆる代表作で、札幌に残ったのは、稲垣吾郎・瀬戸朝香主演のドラマにも登場したことがある「飛ぶ蝶」(標本の6匹のうち右上の1匹が飛び立とうとしている絵)ぐらいではないかと思います。
 したがって、熱心に三岸好太郎美術館に足を運んでいる人でも、「あ、これ見たことない!」という発見があることは確実です。

 もちろん、その手の作品は、代表作といわれるものにくらべると、明らかに描きこみが不足していたり、完成度がいまひとつだったりします。
 しかし、どんなはや書きの作品にも、三岸の個性は刻印されているように感じます。

 気になった絵について記してみます。

「風景」
1927年ごろの作。三岸の絵にしてはわりあい大きく、「大通風景」ぐらいはありそう。緑をべちゃっと塗った部分が多いが、たしかにこういうのを見ていると、岸田劉生の「でろりとした美」ということばを思い出してしまう。

「鷺宮風景」
遠景の左側は濃い緑の針葉樹、右半分はやや薄い緑で、手前を畑のようなものが占め、中央に小川が流れている。空は水色。川は妙正寺川、あるいは江古田川だろうか。いま、中野区鷺宮にこんな田園風景は残っていないだろうなあ。

「我孫子風景」
ふだんこの美術館によくかかっているのは、同じ題の違う絵。初期の三岸に岸田劉生の影響が感じられるのは、よく指摘されるところだが、岸田流の行きかたが一歩間違うと南画調に流れてしまうことの危険性もこの絵に感じられる-といったら、深読みのしすぎだろうか。
 このコーナーでは「青木湖付近の風景」「茶畑」もめずらしい作品だと思う。

「裸婦」
こういう素描のたぐいは、あまり目にする機会がない。おなじ裸婦を素材にしながら、3つの描法を試しており、三岸の研さんぶりを示している。

「黒い服の婦人像」
この絵もはじめて見たような気がする。白いえりと手首の飾り以外は真っ黒な服を着た女性。すこし陰のある表情が忘れがたい。
このコーナーにある「童女花持てる図」「少女の像」「横向き婦人像」など、あまり見た記憶がなく、これだけでも来たかいがあったと思う。

「窓辺」
素描。ふたりの人物が室内にいて、妙に遠近法を強調しているのは、キリコを連想させる。三岸とキリコの関係についてはあまり言及されてことがないだろうから、なんだかおもしろい。あるいは、福沢一郎経由かもしれない。


 というわけで、ふだん目にすることの少ない作品がたくさん並んでいるので、どうかこの機会をお見逃しなく!


2008年11月1日(土)-09年1月18日(日)
道立三岸好太郎美術館(中央区北2西15 地図D)


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