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山内壮夫(5) 「新渡戸稲造」像

2009年01月12日 00時42分00秒 | 街角と道端のアート
承前)

 以上で大通公園とその周辺はおしまい。
 都心からやや離れたところに立っている野外彫刻の紹介に移ろう。

 新渡戸稲造は、札幌農学校の2期生で、のちに国際連盟の事務次長になるなど、戦前を代表する国際人であった。
 5000円札に肖像が採用され、また「武士道」という名著があることで、ご存知の方も多いだろう。

 彼が札幌農学校教授時代に、貧しい子弟のために開いたのが「遠友夜学校」。
 米国人のメリー夫人に2000円の遺産が入り(当時としては大金)、そのお金を開設の資金としたという。
 授業料は無料で、先生役は札幌農学校・北大の学生が買って出た。有島武郎や宮部金吾も協力した。「遠友」は、「論語」の「朋(とも)有り遠方より来る、またたのしからずや」に由来するのであろう。
 まさに、札幌のボランティアの発祥ともいえるこの学園は、昭和19年に、軍部から「教練をやっていない」などと難癖をつけられたこともあって、また学徒動員で北大生の教え手も減って、閉鎖を余儀なくされた。
 学校の跡は、現在、勤労青少年ホーム(愛称「レッツ中央」)となっている。
 建物の中には、夜学校の記念室があるらしい。

 台座に刻まれた
「学問より実行」
という文字は、稲造自身の揮毫(きごう)になるもので、そのもとになったものは、記念室に展示されている。

 山内壮夫は、ここでは写実的な作風で、札幌の精神文化をつくった偉大な先人をしのんでいる。
 男が手にしているメダル様の中に、稲造と満里子(メリー)夫人の肖像がはめこまれているのだろう。




 ここに新渡戸を顕彰する銅像が建っていること自体、ほとんど知られていないように思う。
 筆者は、ART-MAN GALLERYに行くとき、このレッツ中央のわきをよく通るので、そのたびに新渡戸の事績をしのぶことにしている。


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