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中山岩太は、戦前から戦後にかけて活躍した日本の新興写真を代表する写真家。
ニューヨークやパリに滞在し、マン・レイとも交遊があったという説明文を読むと、なるほどと思う。複数のネガを組み合わせるなどの手法で、1920、30年代らしいモダンな写真を撮っている。
ただ、個人的には、「新人画会展」を見たばかりなので、なんだかふしぎな感覚を持った。
新人画会展は、描かれているのは妻や静物であっても、あの暗い時代をどこかで反映している。
ところが、中山の写真には、世相や時代の動きがまったくと言っていいほど関係していない。
会場には1943-46年の写真が欠落しており、この時代は写真どころではなかったのか、それとも一転して国策に沿った作品を撮っていたのか、そのあたりはさだかではない。
はっきりしているのは、47年以降の作品も、遺作の「デモンの祭典」(49年)にいたるまで、戦前となんら変わらず、まるで戦争などなかったかのように見えることだ。
なんだか、外の世界から隔絶した暗室にこもり、少年のように、いつまでも孤独にプリント作業を繰り返している人物が、想像されてくるのだ。
つい
「この人、どうやって稼いでたんだろう。とくに戦争中や戦争直後は」
と思ってしまう。
もちろん、今回展示されている作品はメシの種ではなく、職業的には余技として続けていたものだろうけど。
好みでいえば、複数のイメージを組み合わせた写真や、作り込んだ女性のポートレイトなどよりも、スペインの風景にレンズを向けた初期の作品とか、30年代末に神戸で雨の街路を撮ったスナップのほうが、気に入った。
スペインの風景写真は、絵画の下描きのような茫漠とした画面。井戸端で話す女たち、ロバなどが、遠い昔の、夢の光景のようだ。1枚だけ、建物が曲線でできている写真があり、これは曲面レンズに反射させて撮ったのだろうか。
最後のコーナーでは、残されていたオリジナルのガラス原板から新たにプリントしたものを展示。複数の印画紙を並べて、焼きの微妙なちがいを来訪者に見せるなど、おもしろい展示をしている。
そういえば、写真の焼き付けなんてやったことがない来訪者が、デジタル時代になってますます増えてるだろうからなあ。
ところで、こちらのブログを偶然ひらいて思い出したのだが、中山はパリ滞在中、藤田嗣治の肖像写真も撮っているのだ。
ぜんぜん意識しないで何度も目にしていた写真だったので、ちょっとびっくりでした。
2008年12月13日(土)-09年2月8日(日)10:00-18:00(木、金は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで。月曜日・12月29日-1月1日休み(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
東京都写真美術館(東京都目黒区三田1丁目13番3号 恵比寿ガーデンプレイス内)
一般 700円/学生 600円/中高生・65歳以上 500円。小学生以下無料(団体割引、他の展覧会とのセット料金などもあり)
・JR山手線恵比寿駅から約600メートル(動く歩道が完備されているので、楽です)
ニューヨークやパリに滞在し、マン・レイとも交遊があったという説明文を読むと、なるほどと思う。複数のネガを組み合わせるなどの手法で、1920、30年代らしいモダンな写真を撮っている。
ただ、個人的には、「新人画会展」を見たばかりなので、なんだかふしぎな感覚を持った。
新人画会展は、描かれているのは妻や静物であっても、あの暗い時代をどこかで反映している。
ところが、中山の写真には、世相や時代の動きがまったくと言っていいほど関係していない。
会場には1943-46年の写真が欠落しており、この時代は写真どころではなかったのか、それとも一転して国策に沿った作品を撮っていたのか、そのあたりはさだかではない。
はっきりしているのは、47年以降の作品も、遺作の「デモンの祭典」(49年)にいたるまで、戦前となんら変わらず、まるで戦争などなかったかのように見えることだ。
なんだか、外の世界から隔絶した暗室にこもり、少年のように、いつまでも孤独にプリント作業を繰り返している人物が、想像されてくるのだ。
つい
「この人、どうやって稼いでたんだろう。とくに戦争中や戦争直後は」
と思ってしまう。
もちろん、今回展示されている作品はメシの種ではなく、職業的には余技として続けていたものだろうけど。
好みでいえば、複数のイメージを組み合わせた写真や、作り込んだ女性のポートレイトなどよりも、スペインの風景にレンズを向けた初期の作品とか、30年代末に神戸で雨の街路を撮ったスナップのほうが、気に入った。
スペインの風景写真は、絵画の下描きのような茫漠とした画面。井戸端で話す女たち、ロバなどが、遠い昔の、夢の光景のようだ。1枚だけ、建物が曲線でできている写真があり、これは曲面レンズに反射させて撮ったのだろうか。
最後のコーナーでは、残されていたオリジナルのガラス原板から新たにプリントしたものを展示。複数の印画紙を並べて、焼きの微妙なちがいを来訪者に見せるなど、おもしろい展示をしている。
そういえば、写真の焼き付けなんてやったことがない来訪者が、デジタル時代になってますます増えてるだろうからなあ。
ところで、こちらのブログを偶然ひらいて思い出したのだが、中山はパリ滞在中、藤田嗣治の肖像写真も撮っているのだ。
ぜんぜん意識しないで何度も目にしていた写真だったので、ちょっとびっくりでした。
2008年12月13日(土)-09年2月8日(日)10:00-18:00(木、金は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで。月曜日・12月29日-1月1日休み(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
東京都写真美術館(東京都目黒区三田1丁目13番3号 恵比寿ガーデンプレイス内)
一般 700円/学生 600円/中高生・65歳以上 500円。小学生以下無料(団体割引、他の展覧会とのセット料金などもあり)
・JR山手線恵比寿駅から約600メートル(動く歩道が完備されているので、楽です)