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■神田日勝・浅野修 生誕75年記念展 (~5月26日、鹿追) 2013年4月26日は4カ所(10)

2013年05月09日 21時57分00秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
承前この記事の写真も、美術館の許可を得て撮影しています)

 ありそうでなかった、絵画と立体の2人展。

 生まれは東京だが、戦後開拓のために十勝の鹿追の原野に入植し、早世したものの、北海道の美術に大きな足あとを刻んだ神田日勝。
 同じ年に帯広に生まれ、その後美大に進んで画家となり、近年は多くの人を巻き込んだプロジェクトなど、絵画の枠にとどまらない活動を続けている浅野修さん(神奈川県在住)。
 日勝の絵に取り囲まれるように、浅野さんの立体が配されている。

 神田日勝記念美術館は、日勝の絵画を展示するために建設された施設のわりには、中央部があいている(今回の展示に直接関係はないが天井もかなり高い)。そこに、浅野修さんの立体が置かれている。
 この展覧会では、道立近代美術館から借りてきた日勝の代表作「室内風景」も展示されていて、浅野さんの、馬そりを用いた作品「馬橇の転写」は、日勝の2大代表作である「室内風景」と「馬」の間をむすぶかのように、設置されている。



 それにしても、いまさら書くのも気が引けるのだが、「馬」「室内風景」をのぞいた晩年の作品は、原色の絵の具をぶちまけた激しい絵が多い。
 学生運動が高揚していた60年代末の時代を反映しているのかもしれない。




 浅野さんの作品は、転写という技法を使っている。
 開拓の歴史を刻んだモノにインクか何かを塗って紙に転写したのだろう。
 手前は「五右衛門風呂の転写」。丸い風呂を転がすと、大きな円が紙の上に描かれる。

 そこにあるのは、単にフォルムへの関心ではない。十勝という土地に、層のように重なっている「時間」を露呈させる試みなのだといえるのではあるまいか。 




 階段を上ったところにある中二階の展示スペースは、通常なら日勝の画室が復元されたり小品が展示されているが、いまは浅野さんの平面作品が全面に広がっている。

「柄・蕨」
「虚と実」(同題2点)
「筋交」(同題2点)
「虚と実(ながれる構造)
「構造体」(同題3点)
「轡の転写」
「炉の転写」
「三面の虚と実」
「雪の風景」
「構造」
「台当て布団」
「巨大じゃがいものアートは世界を救う」

 ところで、入口からすぐのところに、筆者初見の日勝初期の作品2点が展示してあって、興味深かった。
 右側は15歳ぐらいの水彩。家の近所の風景を描いているようだ。

 左側は「風景」という題の油彩。
 手前に柵、上り斜面の途中ににお積みを配して、斜面の上に家を置いた構図がおもしろい。この配置が画面に奥行き感を与えている。


2013年4月23日(火)~5月26日(日)午前10時~午後5時、月曜休み(ただし祝日は開館し翌火曜休み)、祝日の翌日休み(ただし土日が重なる場合は開館)
神田日勝記念美術館(十勝管内鹿追町東町3)

一般510円、小中高生300円

●ギャラリートーク・ミニライブ 5月19日(日)午後1時半:赤津侃(美術評論家)

□浅野修の世界 http://www7a.biglobe.ne.jp/~asano_osamu/
□ブログ 浅野修の世界 http://o-asano.cocolog-nifty.com/

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