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■置戸コンテンポラリーアート(1) 体育館

2012年08月19日 23時10分01秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 まず、ぶっちゃけた話から。

 この「置戸コンテンポラリーアート」は、確固としたテーマやコンセプトがあるグループ展ではない。
 昨年夏、帯広の真鍋庭園で繰り広げられた「帯広コンテンポラリーアート 真正閣の100日」に出品しインスパイアされた北見・置戸の美術家たちが、こちらでも何かやろうと手がけたものである。

 したがって、出品者の選定も、実行委員会(置戸の鈴木順三郎さんや松井淳紀さん、北見の林弘堯さん、田丸忠さんら)で、知り合いを中心に声をかけている。
 顔ぶれは
札幌 3人
帯広など十勝 6人
北見・置戸・網走など地元関係 11人
その他(旭川、京都、倶知安、岩見沢、東京) 5人
という内訳だ。

 わりあい短い準備期間で開催にこぎ着けることができた背景には、これまで何度か、北見の北網圏ほくもうけん北見文化センターなどを会場として現代美術のグループ展を手弁当で林さんたちが行っており、ノウハウを持っていたことが大きいのではないかと思う。
(もちろん、置戸町のサポートなども大きい)

 そして、この良い意味でのいい加減さ、自由さが、展覧会に反映しているように感じた。


 さて、このエントリを含め6本の記事で、展覧会を紹介します。
 会場の雰囲気のとおり、ゆるゆるといければ、と思ってます。
 ゆるすぎて、写真を取り忘れてしまった作家さんがいます。すみません。


 冒頭画像は、いちばん大きな会場の体育館。

 林弘堯さん(北見)の、ビニールを用いたインスタレーションが目を引く。

 天井に渡したワイヤからつり下げられており、扇風機の風でそよそよと揺れる。

 林さんは半世紀にわたって北見の現代美術をリードしてきたベテラン。
 校門から玄関までの間に「地上にひとつの場所を」と題した、長さ100メートルにもおよぶ作品も出品している(昨年、北見の遊木民族で発表しているものと同じシリーズ)。


 左手前の金属による立体は、阿部典英さん(札幌)の「貴婦人の舞踏会」。
 道立近代美術館での個展にも出品されていたシリーズ。

 阿部さんは道内を代表する現代美術作家のひとりで、この春の道立近代美術館に続き、現在は市立小樽美術館で個展を開催中。
 ユーモアを漂わせる立体が多い。




 その奥の、床の上に置かれている幾何学的な立体作品は、塩田晃さん(帯広)「Vijfvoudige kubus」。
 同一の形を反復した形状が、ハチの巣を思わせる。

 


 林教司さん(岩見沢)のボックスアート4点。

 ジョゼフ・コーネルふうである。

 右側の作品、左の側面内側に貼ってある紙は、西洋の本のページだが、どうやらアイヌ語のユーカラか何かの英訳のようだ。

 林さんは、絵画からインスタレーションに移行した作家で、札幌のギャラリーたぴおの主宰者でもある。




 池田緑さん(帯広)の、シルクスクリーンによる組み作品「ALICE'S JEANS」。
 ジーンズの形状に着目した版画で、おそらく、マスクやテープを使った現代美術よりも以前に手がけたものではないかと思う。




 鈴木順三郎さん(置戸)「夢の後の永い睡眠・・・ 気がつくとそこに佇んでいた」

 牧草ロールをばらしたもの。
 酪農や畑作がさかんなこの地域らしいインスタレーション。

 ただし、最初に訪れたときはにおいが相当きつかった。
 最終日にはかなり薄らいでいたが。

 鈴木さんは畑作農家のかたわら、美術、詩、即興音楽など幅広く活動している。




 林雅治さんは「思考の1」「思考の2」「思考の3」と題するオブジェを出品。
 白は化粧土の色だろうか。
 うねうねとこんがらかるさまは、思考という題にふさわしいかもしれない。

 林さんは後志管内倶知安町の廃校舎をアトリエにして陶芸にたずさわっている。
 倶知安の旧寒別小は木造のいかにも昔懐かしい建物で、新しくきれいな旧秋田小を見て「こんな閉校校舎はないよね」と苦笑していた。
 かつて寒別グラウンドアートという、今回の展覧会と共通するところのある野外美術展を2度開催したことがあり、そこに鈴木さんが出品していた縁で、今回の登場となったようだ。


 「糸は機で織られ布になる
機を離れた布はどこに…
立ったよ」
という長い題を持つ、片岸法恵さんの立体。

 これまで伝統的な染織作品ばかり見てきたので、こんなに明るくポップな色彩で立体を作って出品しているのは、とても意外であった。

 片岸さんは北見市留辺蘂 る べ しべ町在住だが、秋田地区からは、置戸町市街よりも留辺蘂のほうが近い。


 なお、余談だが、この体育館には

林さん

が3人も出品している。

 札幌には林亨さんもおられるので、筆者に電話があって、いきなり「林です~」と名乗られるとどの林さんかとっさにわからず、どぎまぎすることがある。


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□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/

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□「てんぴょう」誌に筆者が寄稿した文章



□minimum line http://www.h3.dion.ne.jp/~m-line/

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□FAF工房 http://www8.plala.or.jp/FAFkoubou/index.htm

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