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大型連休の旅(5) 宮島達男展 Art in You

2008年10月01日 23時43分48秒 | 道外で見た展覧会
 このエントリは、札幌でのトークイベントと1セットになっている。

 「Art in You」というコンセプトに関しては、上記のエントリで書いた。

 この個展で中心になっているのは、宮島さん得意のデジタルカウンターといっても、ちょっと様子が異なり、北海道の天売島、奈良、広島、沖縄の4カ所で行ったワークショップ。
 ふたり一組になって、互いの体に数字をボディーペインティングし、周囲の風景とともに写真に撮る-というものだ。
 顔や腕、腹などに、LEDではなく、さまざまな色の数字が書かれ、それが青い日本海や、原爆ドームと一緒の画面で、撮影される。プリントはどれも巨大だ。

 もうひとつは「Death clock」。
 ワークショップ参加者が自ら「死ぬ年月日」を決め、その時点までの秒数と、参加者のモノクロの画像を、コンピュータの画面に表示するというシステムだ。
 画面ではどんどん数字が目減りしていく。参加者の顔は少しずつ薄くなっていき、ゼロになった時点で真っ白になるという。

 札幌の若い人たちが天売まで渡ったという話は耳にしていたので、つい「知り合いはいないかなあ」と、会場を行きつ戻りつして、探してしまった。



 ただ、ボディーペインティングのほうはともかく、Death clockのほうには、ちょっとひっかかりをおぼえた。

 おそらく作者は、この作業を通じて、各自に死を意識してもらいたかったのではないか。
 「メメントモリ」ということばがある。死を意識することで、生をいきいきとしたものにするという側面は、たしかにあるだろう。

 でも、死への時間って、みんながみんな、いつでもおなじ速さで流れていくものだろうか。
 それが、最大の疑問なのだ。

 なにかに感動したとき、ゲーテじゃないけど、時間は止まったようになるのではないか。
 あるいは、退屈な作業をやっているとき、なんだか時間の進み方が遅いと感ずることは誰にでもあるのではないか。

 筆者が、宮島さんのデジタルカウンターの作品を好きな理由は、どのカウンターも、ひとつとしておなじスピードで作動していないことなのだ。
 みんなちがってみんないい-という哲学がそこに感じられるのだ。

 でも、「Death clock」にはそれがないと思う。

 そこらへんを札幌のトークイベントで訊きたかったのだが、若い人からの質問がひきもきらなかったので、未来のない老人である筆者は発言を控えた。
 

2008年 2月16日(土)- 5月11日(日)月曜休み(ただし 5月 5日は開館)
水戸芸術館現代美術ギャラリー/現代美術センター(茨城県水戸市五軒町 1)


 なお、2008年5月の本州旅行のシリーズ「大型連休の旅」は、これでようやく最後です。
 読んでいただいてありがとうございました。

(1)札幌→京都
大型連休の旅(2) 絵画の冒険者 暁斎 近代に架ける橋
(3)京都を少しだけ歩く
(4)水戸を歩く

(6)いわき市・平
(7)いわき市・平(続き)
(8)常磐線の車窓から
(9) ヴィクトリア アンド アルバート美術館所蔵 浮世絵名品展
(10)磐越東線の車窓から
(11) 北へ
(12)砂川・子どもの国


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