高校生以下は無料、肖像権が絡む二つのセクション以外は撮影可という、なんとも太っ腹な写真展。
会場は六つのセクションに分かれ、それぞれの特徴がはっきりしていてメリハリがついた構成で、誰でも楽しめると思います。
(七つ目のセクションとして、3本の映像上映も行われていましたが、筆者は見ていません。3本合わせて25分なので、見てくれば良かった…)
マナーとしてほかの人がうつりこまないように撮ってきたので、会場ががらんとして見えるかもしれませんが、筆者が訪れたときは帯広美術館としては「3密」にはならない程度にかなりにぎわっていました。
長島有里枝、ヒロミックスと木村伊兵衛写真賞(写真界の芥川賞といわれる)を受賞し、当時続々と世に出てきた女性写真家の中でも最も活躍をみせる一人です(などと書くと、そもそも「女性」などとくくることにどんな意味があるのかと言われそうですが)。
筆者は2009年に写真展を見ましたが、頭が悪そうな感想をいえば
「色彩がハデ!」
というものでした。
今回、「1 永遠の花 Everlasting Flowers」と「2 桜 SAKURA」を見ると、そのときの印象は変わっていません。
とにかく明度、彩度とも高い花の写真が並び、天井や床までを覆い尽くすインスタレーションのような会場になっています。
訪れた人は、ど派手な蜷川ワールドに包囲されてしまうのです。
ただ派手なだけではなく、つぎのようなことばをフライヤーに見つけました。
続く「3 Potraits of the Time」は、膨大なポートレート。
とにかく芸能人がたくさん並んでいて、これほど多くの広告や雑誌の仕事をしてきたこと自体驚異的です。
かつて篠山紀信が持っていたようなオーラというか、写真界の位置を、蜷川が引き継いだといえるのかもしれません。
筆者はテレビをほとんど見ないので、誰が誰やら分からないのです(瀬戸内寂聴、ももクロ、ハリソン・フォードは分かった)。
美術界がいないのが残念だなあ、あっ、村上隆と草間彌生がいました。坂本龍一も。
ただ肖像を撮っているだけでなく、いろんな格好や表情があって、じつにバラエティーに富んでいます。
このセクションも色鮮やかなのですが、なぜ阿部寛はモノクロなんだろう?
ここと、セルフポートレートを集めた「4 Self-image」のセクションは撮影不可でした。
「5 うつくしい日々 The days were beautiful」は撮影可ですが、1、2、6と違ってここでシャッターを切っている観客はほとんどいませんでした。
そうさせない、何か、居住まいを正させる雰囲気が会場に漂っていたのだと思います。
ここは父親で演出家の蜷川幸雄が2016年に他界したときのドキュメントになっていて、他のセクションに比べて小さくプリントした身の回りの情景の写真と、最期の日々を淡々とつづったテキストが壁に並んでいます。
父親の肖像の写真はなく、そのことがかえって、彼の「不在」を印象づけているようにも感じられます。
ここまで振り返って気づくのは、アラーキーこと荒木経惟との共通性です。
花やポートレートも共通点ですが、なにより「最愛の人の死まで」を題材にしている点はよく似ています。
なんでもない空などにレンズを向けることで、ポートレートよりもいっそうのかなしみを感じさせるあたりも。
「6 INTO FICTION / REALITY」は、ライブコンサートの会場や水槽、動物、首都高速など、極彩色の世界が戻ってきます。
虚構と現実はもとより、高速と静止、生と死とが同居したような、ふしぎな空間が現出しているように思いました。
熊本→豊川(愛知)→大分→いわき(福島)→宇都宮→札幌芸術の森→山梨と巡回し、2021年まで全国各地で開かれるようです。
さて、この写真展を見て、直接は関係ないのですが、ちょっと考えたことがあるので、別項で記します。
2020年9月19日(土)~12月6日(日)午前9時半~午後5時(入館30分前まで)、月曜休み(祝日と11月2日開館)、9月23日と11月24日も休み
道立帯広美術館(帯広市緑ケ丘)
一般1300円、大学生500円、高校生以下無料
https://mikaninagawa.com/
・帯広駅バスターミナル2番乗り場から、拓殖バス「21~24 南商業高校線」「25 帯広の森線」に乗り「緑ケ丘6丁目・美術館入口」で降車、約500メートル、徒歩6分
・JR帯広駅から約2.4キロ、徒歩30分
会場は六つのセクションに分かれ、それぞれの特徴がはっきりしていてメリハリがついた構成で、誰でも楽しめると思います。
(七つ目のセクションとして、3本の映像上映も行われていましたが、筆者は見ていません。3本合わせて25分なので、見てくれば良かった…)
マナーとしてほかの人がうつりこまないように撮ってきたので、会場ががらんとして見えるかもしれませんが、筆者が訪れたときは帯広美術館としては「3密」にはならない程度にかなりにぎわっていました。
蜷川実花は海外でも個展を成功させている写真家、映画監督。
長島有里枝、ヒロミックスと木村伊兵衛写真賞(写真界の芥川賞といわれる)を受賞し、当時続々と世に出てきた女性写真家の中でも最も活躍をみせる一人です(などと書くと、そもそも「女性」などとくくることにどんな意味があるのかと言われそうですが)。
筆者は2009年に写真展を見ましたが、頭が悪そうな感想をいえば
「色彩がハデ!」
というものでした。
今回、「1 永遠の花 Everlasting Flowers」と「2 桜 SAKURA」を見ると、そのときの印象は変わっていません。
とにかく明度、彩度とも高い花の写真が並び、天井や床までを覆い尽くすインスタレーションのような会場になっています。
訪れた人は、ど派手な蜷川ワールドに包囲されてしまうのです。
ただ派手なだけではなく、つぎのようなことばをフライヤーに見つけました。
桜は日本の国花。人は桜に、単なる花の美しさだけでなく、咲き誇り、儚く散る様に「いのち」や「人生」も重ねてきた。蜷川実花は「死ぬ間際にも桜を見たい」と言うほどの桜好きだが、同時に日本の桜のほとんどがクローンであることに、文明の宿命を見てとるのである。(ルビは筆者)
続く「3 Potraits of the Time」は、膨大なポートレート。
とにかく芸能人がたくさん並んでいて、これほど多くの広告や雑誌の仕事をしてきたこと自体驚異的です。
かつて篠山紀信が持っていたようなオーラというか、写真界の位置を、蜷川が引き継いだといえるのかもしれません。
筆者はテレビをほとんど見ないので、誰が誰やら分からないのです(瀬戸内寂聴、ももクロ、ハリソン・フォードは分かった)。
美術界がいないのが残念だなあ、あっ、村上隆と草間彌生がいました。坂本龍一も。
ただ肖像を撮っているだけでなく、いろんな格好や表情があって、じつにバラエティーに富んでいます。
このセクションも色鮮やかなのですが、なぜ阿部寛はモノクロなんだろう?
ここと、セルフポートレートを集めた「4 Self-image」のセクションは撮影不可でした。
「5 うつくしい日々 The days were beautiful」は撮影可ですが、1、2、6と違ってここでシャッターを切っている観客はほとんどいませんでした。
そうさせない、何か、居住まいを正させる雰囲気が会場に漂っていたのだと思います。
ここは父親で演出家の蜷川幸雄が2016年に他界したときのドキュメントになっていて、他のセクションに比べて小さくプリントした身の回りの情景の写真と、最期の日々を淡々とつづったテキストが壁に並んでいます。
父親の肖像の写真はなく、そのことがかえって、彼の「不在」を印象づけているようにも感じられます。
ここまで振り返って気づくのは、アラーキーこと荒木経惟との共通性です。
花やポートレートも共通点ですが、なにより「最愛の人の死まで」を題材にしている点はよく似ています。
なんでもない空などにレンズを向けることで、ポートレートよりもいっそうのかなしみを感じさせるあたりも。
「6 INTO FICTION / REALITY」は、ライブコンサートの会場や水槽、動物、首都高速など、極彩色の世界が戻ってきます。
虚構と現実はもとより、高速と静止、生と死とが同居したような、ふしぎな空間が現出しているように思いました。
熊本→豊川(愛知)→大分→いわき(福島)→宇都宮→札幌芸術の森→山梨と巡回し、2021年まで全国各地で開かれるようです。
さて、この写真展を見て、直接は関係ないのですが、ちょっと考えたことがあるので、別項で記します。
2020年9月19日(土)~12月6日(日)午前9時半~午後5時(入館30分前まで)、月曜休み(祝日と11月2日開館)、9月23日と11月24日も休み
道立帯広美術館(帯広市緑ケ丘)
一般1300円、大学生500円、高校生以下無料
https://mikaninagawa.com/
・帯広駅バスターミナル2番乗り場から、拓殖バス「21~24 南商業高校線」「25 帯広の森線」に乗り「緑ケ丘6丁目・美術館入口」で降車、約500メートル、徒歩6分
・JR帯広駅から約2.4キロ、徒歩30分
札幌芸森でも若い観覧者が(他の展覧会に比べると)多く、にぎやかな印象でした。
私の方がポートレートの人はもう少し分かるのではないかと思います。それでも半分以下でしたが。