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ようやく先週末、見に行った。
今さら遅いのだが、もっと早く訪れるべきだった。前期、後期で、かなりの展示替えがあるのだ。これは、2度足を運びたい展覧会だった。
なお、筆者は一部駆け足で通り過ぎたが、それでも1時間40分かかった。
混雑の度合いによるが、普通に見るなら1時間半から2時間は見ておいたほうがよいかもしれない。
また、展示は時代順などではないので、朝一番に行って、すいているところから見るのも一つの手だと思う。
「徳川」という名称から筆者もちょっと勘違いしていたのだが、江戸時代の美術品ばかりが展示されているというわけではない。
11世紀の、藤原公任筆と伝えられる「葦手古今和歌集切」が最古で、平安、室町、桃山時代の貴重な収蔵品も数多い。
また、分野についても、書や絵画、明や南宋や朝鮮半島から伝来した陶器だけでなく、茶器、頭巾や羽織、能面、よろい、刀剣、楽器など一般の美術展ではあまり出品されないものまで非常に多岐にわたる。香道(という、におい当ての技芸)のためのゲーム一式とか、三味線、碁盤などもあったりする。伝説の香木である「伽羅」もある。蘭奢待という銘をもつ伽羅は、正倉院の所蔵品から少しずつ切り取ってきたものらしい。もっとも、香木は、見てもおもしろいもんではないなあ。どんな良い香りがするのか、知りたい気がする。
東京や京都の人は国立博物館の常設展示に行けばいいが、道内ではこの水準の古美術品をまとめて見られる機会はめったにない。この好機を逃す手はないと思う。
各自の好みに応じて楽しめる展覧会であり、こういう見方をすべきだ―と押しつける気はさらさらないが、筆者なりにおもしろいと感じた点をいくつか。
一つは、日本文化の装飾過多というか、バロック化傾向と、武家文化の簡素さとのせめぎ合いである。
たとえば、火縄銃が並ぶ一角に、「唐銅飛龍形百目大筒」という武器があったが、単に鉄砲のでかい武器にどうして龍の細工が必要なのか。
どうも日本人は、放っておくと、武器すらも美しく飾っていくようである。
ただし、そこは武家であるから、華美に流れることを良しとするわけではない。
したがって、碁盤やかるた、蒔絵のハコなど、もっぱら女性の用になるものは、どんどん装飾的になっていくにしても、男のものは、行き過ぎないように押しとどめているフシがある。
そこがおもしろい。
2点目。
やはり、名画、名筆がそろっているところ。
狩野探幽や本阿弥光悦の真筆なんて、そうそう北海道で見られるものではないと思うし。
「源氏物語絵巻」は、展示期間がきわめて限定されており、19日以降は模写が展示されている。
土佐派の屏風も、一見の価値あり、と思う。
3点目。
茶器も、16世紀の井戸茶碗など見事なものだし、油滴天目など見事なものである。
このあたりの器が、日本人の美意識に革命的な変化をもたらしたのは間違いない。ごくおおざっぱに言ってしまうと、アシンメトリーの美の発見である。
出口のあとで、渡島管内八雲町の郷土資料館に所蔵するクマの木彫りが何点か並んでいる。
筆者は、教室で、先生が出した問題が解けずに頭をかいているクマの作品が大好きだ。黒板を見ると、クマの生徒たちが挑んでいる問題は、分数の計算で、けっこう難しそうだ。
八雲町は、尾張徳川家の家臣たちが、明治維新の後で失業して開拓に渡ったところである。クマの木彫りの道内での発祥地とされる。これは、大正だか昭和初期だかに、徳川家当主がスイス旅行で買い求めたクマの木彫りを、八雲に持っていき、農閑期の副業として農民たちにすすめたという歴史があるためだ。
ただし現在の八雲町には、木彫り作家として創作活動をしている人はすでにいないという。
なお、一般の入場料は1300円。
ただし、道新ぶんぶんクラブ会員証で1100円に割り引きとなるので、お忘れなく。
2014年7月5日(土)~8月24日(日)午前9:30~午後5:00(金曜日は午後7:30まで。入場は閉館30分前まで)、月曜休み(7月21日は開館し翌日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
今さら遅いのだが、もっと早く訪れるべきだった。前期、後期で、かなりの展示替えがあるのだ。これは、2度足を運びたい展覧会だった。
なお、筆者は一部駆け足で通り過ぎたが、それでも1時間40分かかった。
混雑の度合いによるが、普通に見るなら1時間半から2時間は見ておいたほうがよいかもしれない。
また、展示は時代順などではないので、朝一番に行って、すいているところから見るのも一つの手だと思う。
「徳川」という名称から筆者もちょっと勘違いしていたのだが、江戸時代の美術品ばかりが展示されているというわけではない。
11世紀の、藤原公任筆と伝えられる「葦手古今和歌集切」が最古で、平安、室町、桃山時代の貴重な収蔵品も数多い。
また、分野についても、書や絵画、明や南宋や朝鮮半島から伝来した陶器だけでなく、茶器、頭巾や羽織、能面、よろい、刀剣、楽器など一般の美術展ではあまり出品されないものまで非常に多岐にわたる。香道(という、におい当ての技芸)のためのゲーム一式とか、三味線、碁盤などもあったりする。伝説の香木である「伽羅」もある。蘭奢待という銘をもつ伽羅は、正倉院の所蔵品から少しずつ切り取ってきたものらしい。もっとも、香木は、見てもおもしろいもんではないなあ。どんな良い香りがするのか、知りたい気がする。
東京や京都の人は国立博物館の常設展示に行けばいいが、道内ではこの水準の古美術品をまとめて見られる機会はめったにない。この好機を逃す手はないと思う。
各自の好みに応じて楽しめる展覧会であり、こういう見方をすべきだ―と押しつける気はさらさらないが、筆者なりにおもしろいと感じた点をいくつか。
一つは、日本文化の装飾過多というか、バロック化傾向と、武家文化の簡素さとのせめぎ合いである。
たとえば、火縄銃が並ぶ一角に、「唐銅飛龍形百目大筒」という武器があったが、単に鉄砲のでかい武器にどうして龍の細工が必要なのか。
どうも日本人は、放っておくと、武器すらも美しく飾っていくようである。
ただし、そこは武家であるから、華美に流れることを良しとするわけではない。
したがって、碁盤やかるた、蒔絵のハコなど、もっぱら女性の用になるものは、どんどん装飾的になっていくにしても、男のものは、行き過ぎないように押しとどめているフシがある。
そこがおもしろい。
2点目。
やはり、名画、名筆がそろっているところ。
狩野探幽や本阿弥光悦の真筆なんて、そうそう北海道で見られるものではないと思うし。
「源氏物語絵巻」は、展示期間がきわめて限定されており、19日以降は模写が展示されている。
土佐派の屏風も、一見の価値あり、と思う。
3点目。
茶器も、16世紀の井戸茶碗など見事なものだし、油滴天目など見事なものである。
このあたりの器が、日本人の美意識に革命的な変化をもたらしたのは間違いない。ごくおおざっぱに言ってしまうと、アシンメトリーの美の発見である。
出口のあとで、渡島管内八雲町の郷土資料館に所蔵するクマの木彫りが何点か並んでいる。
筆者は、教室で、先生が出した問題が解けずに頭をかいているクマの作品が大好きだ。黒板を見ると、クマの生徒たちが挑んでいる問題は、分数の計算で、けっこう難しそうだ。
八雲町は、尾張徳川家の家臣たちが、明治維新の後で失業して開拓に渡ったところである。クマの木彫りの道内での発祥地とされる。これは、大正だか昭和初期だかに、徳川家当主がスイス旅行で買い求めたクマの木彫りを、八雲に持っていき、農閑期の副業として農民たちにすすめたという歴史があるためだ。
ただし現在の八雲町には、木彫り作家として創作活動をしている人はすでにいないという。
なお、一般の入場料は1300円。
ただし、道新ぶんぶんクラブ会員証で1100円に割り引きとなるので、お忘れなく。
2014年7月5日(土)~8月24日(日)午前9:30~午後5:00(金曜日は午後7:30まで。入場は閉館30分前まで)、月曜休み(7月21日は開館し翌日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)