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■与勇輝 人形芸術の世界 (11月5日で終了)

2007年11月07日 00時55分49秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 けっこう有名な人でよく作品の写真を見かけるし、ペンネームがださいので、あまり気乗りはしなかったのだが、見に行って良かったと思う。

 最終日のため、会場はけっこう混雑していた。
 筆者はここでひとつの法則(?)を見いだした。

 おばさんは黙って見ることができない

 「きれいねえ」
 「これ『●●』(作品名)だって」

 べつに、いちいち口にしなくてもいいことばかりである。
 それが、音の塊になって会場に満ちる。
 こんなにやかましい展覧会場というのもめずらしい。

 でも、まあ、筆者は、作品に関係のあることだったら、しゃべっているのはあまり気にならないのだ。
 許し難いのは、まるで関係ない話を延々としている女どもである。たまにいるんだよなあ。


 さて、会場は、おおむね3つのセクションにわかれている。

 最初はすべて和服の子どもたち。
 これがなかなかいい。 
 筆者は
「昔は良かった」
という言説にはつい反論したくなるタイプだが、この人形を見ると
「やっぱり昔のほうが良かったかも」
と、つい思ってしまう。
 男の子が懸命に和綴じの本を読んで勉強している「灯火」とか幼くして働きに出ているのであろう少女が正坐しているさまを作品化した「叱られて」(「あすは藪入り、がんばろう」と註記してある)とかを見ていると
「むかしの日本人は立派であった。それにくらべていまのガキは…」
などと、通俗的な考えに走ってしまいそうになるのだ。
 そして、いまのじぶんが、ネクタイは結べても和服を着ることができないことについては、ほんとうに残念に思う。これは、排外的なナショナリズムとはべつの次元で、やはりじぶんのルーツみたいなものが失われているのだなあと思うのだ。

 中央のセクションは、妖精とか、戦後から現代にかけての子どもとか、西洋人の人形である。
 筆者はすっかり懐古モードに突入しており、視線にバイアスがかかっているので、携帯電話でおしゃべりに夢中になっている21世紀の少女たちの人形を見ると
「ほーら、さっきの、一生懸命生きているむかしの子どもたち(の人形)にくらべると、魂が抜けたみたいな顔してる」
と反射的に思ってしまうのだけど、それはあまりに物事を単純化してしまっているんだろう。

 そして最後は、小津安二郎の映画がテーマ。
 「東京物語 もう帰ろうか」は、笠智衆と東山千栄子が旅館の浴衣を着てすわっているシーンを再現しており、一見して、映画を思い出してしみじみ。
 おなじく「東京物語」の「紀子」は、白いブラウス姿の清楚な原節子に「萌え」です(←おじさんが無理して使ってる感じ)。

 このほか「秋刀魚の味」「麦秋」「晩春」「お茶漬の味」「長屋紳士録」「お早よう」の情景や登場人物を再現した作品と、小津監督の人形とがならび、与さんの、小津安二郎への並々ならぬ傾倒ぶりがうかがえた。



07年10月24日(水)-11月5日(月)10:30-19:30(最終日-16:30、閉場30分後)
大丸札幌店(中央区北5西4) 


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2 コメント

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最初の5行目で・・・ (イエローマン)
2007-11-07 12:43:08
お茶を吹きこぼしてしました。w

普通に、動じないでみれる著者はえらいですねぇー

おばさまたちって独特の音域でしゃべってますよね。

そんな中平然とみれる あなたがすばらしい。
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受けてうれしい花いちもんめ (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-11-07 22:21:29
イエローマンさんこんにちは。

ウケたようで、うれしいです。

まあ、おばさんの声がうるさくないわけではないのですが、展覧会に関するお話なら、それほど目くじらをたてることもないと思うんですよ。

美術館でも、それほど押し黙ることはなく、感想なんかは話していいんじゃないかと思います。
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