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五十嵐ユースケさんは札幌の建築家です。
美術家ではないのですが、見て回るのが好きだそうです。
ギャラリー門馬のオーナー大井恵子さんが、ギャラリー内部の改装について、五十嵐さんに相談したことから、このユニークな展覧会が始まったようです。
このブログの読者にはご存知の方が多いでしょうがギャラリー門馬は住宅を改造した空間とあって、アートの展示空間としては、なかなかユニークです。
ただ、大井さんとしては、埋め込み式の照明が多いなど、改善したい点もいろいろあるようです。
どのギャラリーでも、出品者が作品を固定するため、壁にガンタッカー(ホッチキスの親玉みたいな工具)などで穴を開けます。
各ギャラリーは何年かに一度、定期的に壁を塗り替えるなどします。
五十嵐さんは、これまでいろいろな作家によって開けられてきた壁や天井の穴に着目したようです。
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ギャラリー門馬(アネックスではなく本館のほう)の壁や天井にあいている穴のすべてに、細い棒を突き立てました。
それはいわば、この空間で開催された展覧会の痕跡、展覧会の記憶といえましょう。
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棒は、玄関と、それに続く部屋とをあわせて、600本以上あったので、すべてあわせると千本を上回るのは確実です。
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ただ、大井さんは随時埋めなおしているので、意外と棒が少ない壁も目立ちます。
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レールがないところが多いので、壁のいちばん高い場所に棒が並んでいる箇所が多いです。天井にもかなりの数の棒が刺さっています。
玄関の次の間のように、ほとんど全面に棒が分布している壁もあれば、高い場所に集中している壁もあります。意図がない、ランダムな分布というのは、それだけでおもしろい。
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玄関の、れんがの壁には、黒い棒がささっています。
中二階の暗室も同じです。
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それよりも、棒によって、過去にこの会場で開かれたさまざまな個展が想起されるということが、大きいのではないでしょうか。
たとえば、中二階のバルコニー状になっている部分の天井にささっている棒は、おそらく川上りえさんの、吹き抜けを貫通する彫刻の大作を設置した際のものでしょう。
暗室の黒い棒は、久野志乃さんの個展を思い出しますし、1階の斜めの壁は、森本めぐみさんや山本雄基さんの個展を想起させます。
これまでのギャラリー門馬の歴史を思い起こさせる触媒が、おびただしい棒であり、五十嵐さんの展示であるとは、いえないでしょうか。
今後、壁を塗り替えたり、内部は変わるかもしれませんが、壁と人は、展覧会の数々をどこかで記憶していることでしょう。
2015年4月1日(水)~15日(水)午前11時~午後7時
ギャラリー門馬(札幌市中央区旭ケ丘2)
□ http://igarashiatelier.com/
□ブログの関連エントリ http://igarashiatelier.com/blog/2015/04/03/2692/
そしてヤナイさんすごい!!
穴があった位置で個々の展示をそんなに想起できるとか。
私がいかに漫然と展示を流し見してるかよくわかりました。
常に記事を書くことを前提にものを見、記憶にとどめる記者魂のようなものがあるのでしょうか。
そのように記憶にとどめて貰えるなら作家冥利につきるというものです。
感動しました。
素敵な論評ありがとうございました。
ただ、こうしてブログに書いたりすると、一度記憶を呼び返し、定着させているわけなので、記憶が確かになるという面はあるかもしれないです。
あの最後の縦写真の棒は、川上りえさんがあけた穴に違いないと思います。
このときの、鉄のグループ展の記事、まだアップできてなくて、これは申し訳ないです。
改装、がんばってください。