北海道美術ネット別館

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■近未来美術研究所展 (11月17日まで)

2008年11月16日 21時40分03秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 七三分けに白衣姿でパフォーマンスを行う4人組「近未来美術研究所」(略称は近美)。
 テレビ番組「たけしの誰でもピカソ」出演や、毎年のライジングサンロックフェスティバルでの登場で、美術関係者以外にも知られてきていると思う。美術館関係では、前回のFIX・MIX・MAX!や「絵画の場合」展のオープニングにも出演した。
 今回の企画は、現在市内7カ所で開催中の現代美術展「FIX・MIX・MAX!2」の関連として開かれたもので、意外なことに、単独での展覧会という形式ではこれが初めてのことらしい。たしかに、彼らはパフォーマンス集団なので(そしてデザインなどを請け負う会社でもある)、静的な展覧会という形式にはしっくりこないのかもしれない-と思いながら、会場に出かけてみると、けっこうおもしろかった。
 もちろん、4人のパフォーマンスを実際に見たことのある人のほうが楽しめることは請け合いだが、見たことのない人でもそれなりに笑えるのではないだろうか。

 冒頭の画像は、ギャラリーの入り口でわたしたちを出迎えてくれる4人。
 カラー写真を樹脂に貼って、切り抜いたもの。業者に発注したのではなく、じぶんたちで輪郭に沿って切ったという。樹脂の大きさの関係で、実物大よりはすこし小さい。




 奥に見えているコンクリートの塊は、近美が開発した非常用食糧で、核戦争後など汚染された環境でも食べられる非常食を目指して作られた。上からお湯を注いで3分以内にコンクリートを破壊し、食べるというもので、この破壊行為は、彼らのパフォーマンスでは定番になっている。
 手前の覆面は、コンクリートを壊す際に、顔に着けるもの。
 「NOAH」の中身は要するにカップヌードルである。
 コンクリートを壊してから湯を注いだほうが合理的ではないか? という質問は野暮なのでしないでおこう。

 まあ、すくなくても、移り香はしなくてすむかもしれない。




 以前発行していた「月刊近美」のバックナンバーなどがずらりとならんでいる。
 「月刊」といっても、作られたのは表紙だけで、単に、週刊誌やエロ本に貼り付けただけだったりする。
 この表紙はサイトのほうで見ることができる。また、サイトには、ちゃんと座談会など中身もあったりする。

 台の上にアイロンが見えるが、これは、例の、熱で絵を描くときに使用するものだろう。


         

 近美の得意なパフォーマンスのひとつに、感熱紙にドライヤーやアイロンなどを使って絵や文字を浮かび上がらせるというものがある。近年は技法の種類も増え、この会場にも、山水画を掛軸に仕立てたものが展示してあった。さりげなく「絵画とは何か」を問うインテリな作品でもある。

 で、この習字は、小学生の作品を装い、ことし1月ごろ、地下鉄琴似駅のメトロギャラリーに展示したもの。
 近美の研究員(メンバー)によると、説明をよく読まない人が駅構内の展示を見て「さいきんの小学生はすげー」と、2ちゃんねるなどで話題にしたそうである(よく嫁、と小一時間問い詰めたくなるぜ)。

 個人的には左上の
「デベロッパー」
あたりがツボです。
 会場では「しめり気」も好評でした。


         

 気の小さい息子のかわりに他人とのコミュニケーションを図るロボット「マザー」。
 これまで友達になってくれた人たちの写真がずらっと展示されていた。

 その裏側には「失敗作」もつんであったりするのが、近美らしくておもしろい。


 すこしまじめに分析すれば(それも野暮なのかもしれないけど)、近美のおもしろさは「ズレ」なのだと思う。
 核戦争後の地球という想像力は大切なものだが(いまも米ロを中心に人類を何度でも絶滅させるに足る核爆弾が保有されていることを、冷戦終了後はわすれてしまっている日本人が少なくない)、その危機感をコンクリート障壁入りカップヌードルにしてしまうという「ズレ」。
 あるいは、いかにも昭和的というか古典的な「ロボット」にコミュニケーションを代行してもらおうという「ズレ」。
 そのズレというか、微妙な間合いの感覚と、実はまっとうな文明批評が同時に表現されていることが、近美のおもしろさなんじゃないかと思うのだ。


http://www.kinbi.net/

2008年11月13日(木)-17日(月)10:00-19:00(最終日-17:00)
ギャラリー創(中央区南9西6 地図F)

・市電「山鼻9条」降車1-2分
・地下鉄南北線「中島公園」降車5分


C/C HARVEST MARATHON LIVE VOL.5 (2007年12月)
2007年のライジングサン・ロックフェスティバル


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