(承前)
最初に引用したのが、モエレ沼公園のサイト。
次の引用が作者のステートメントで、これは同時に赤々舎から出た写真集にもおなじ文章が印刷されています(言わずもがなかもしれませんが、このステートメントの末尾の「まるで無数の惑星ように。」は文字が脱落していると思います。しかし、写真集も会場のパネルもモエレ沼公園のサイトもこのようになっています)
逆に言うと、写真集にも会場にも、これ以外の文字はいっさいありません。
本人のウェブサイトに撮影場所の緯度経度が附記されている程度です。
個々のプリントにも題などはなく、会場に章立てなどもありません。
二つの引用文で写真集の概要については、おおむね言い尽くされていると思われますが、いくつか付け加えます。
キャプションがないということは、これらの写真が、モンゴルの現在を、ジャーナリスティックに、あるいは社会的に紹介しようという意図で発表されているわけではないことが、明らかです。
ここにある写真はきわめてバラエティーに富んでいます。
まず、見事なまでに何もない砂漠をとらえた一連の写真に続き、にぎやかできらびやかなウランバートルの都市部、家畜たちと暮らす遊牧民、ごつごつした岩場と星空(以前も書きましたが、デジタル時代になって感度が飛躍的にこうじょうしたため撮影が可能になったタイプの写真です)などが数点ないし数十点ずつ、それぞれひとまとまりになっています。
とりわけ、夕映えの空を反射した、砂漠の中を流れる川を撮った1枚は、すなおに美しいなと感じました。
にもかかわらず、個展タイトルは「モンゴル」ではなく「惑星」です。
「モンゴルの美」でもない。
地球上の大自然と、まばゆい都市。
それらさまざまな要素をそのまま提示することで、それこそがこの惑星=地球であるというのが、写真家の思いであるのでしょう。
わたしたちは複数の人生を生きることができません。
都市住民も遊牧民も、それぞれの人生を生きています。
それらを、ミクロな目で見て、ひとりひとりの息遣いに接近していくと同時に、俯瞰的に見つめていく…。
そういう両義的な見方というか、かまえを可能にしている写真展だと思いました。
2020年7月18日(土)~8月30日(日)午前9時~午後5時、会期中無休
モエレ沼公園・ガラスのピラミッド2階(札幌市東区モエレ沼公園)
・地下鉄東豊線「環状通東駅」(H04)で中央バス「東69 あいの里教育大駅行き」か「東79 中沼小学校通行き」に乗り継ぎ「モエレ沼公園東口」降車。約840メートル、徒歩11分
・バスセンター、JR苗穂駅から中央バス「東6 モエレ沼公園行き」に乗り終点で降車。約530メートル、徒歩7分
2020年4月29日~11月3日の土曜日・日曜日・祝日(7月20日~8月21日は毎日運行)
・地下鉄南北線「麻生駅」(N01)、同東豊線「栄町駅」(H01)で中央バス「麻26 モエレ沼公園行き」に乗り継ぎ、終点で降車。約530メートル、徒歩7分
2020年4月29日~11月3日の土曜日・日曜日・祝日(7月20日~8月21日は毎日運行)
最初に引用したのが、モエレ沼公園のサイト。
次の引用が作者のステートメントで、これは同時に赤々舎から出た写真集にもおなじ文章が印刷されています(言わずもがなかもしれませんが、このステートメントの末尾の「まるで無数の惑星ように。」は文字が脱落していると思います。しかし、写真集も会場のパネルもモエレ沼公園のサイトもこのようになっています)
逆に言うと、写真集にも会場にも、これ以外の文字はいっさいありません。
本人のウェブサイトに撮影場所の緯度経度が附記されている程度です。
個々のプリントにも題などはなく、会場に章立てなどもありません。
二つの引用文で写真集の概要については、おおむね言い尽くされていると思われますが、いくつか付け加えます。
キャプションがないということは、これらの写真が、モンゴルの現在を、ジャーナリスティックに、あるいは社会的に紹介しようという意図で発表されているわけではないことが、明らかです。
ここにある写真はきわめてバラエティーに富んでいます。
まず、見事なまでに何もない砂漠をとらえた一連の写真に続き、にぎやかできらびやかなウランバートルの都市部、家畜たちと暮らす遊牧民、ごつごつした岩場と星空(以前も書きましたが、デジタル時代になって感度が飛躍的にこうじょうしたため撮影が可能になったタイプの写真です)などが数点ないし数十点ずつ、それぞれひとまとまりになっています。
とりわけ、夕映えの空を反射した、砂漠の中を流れる川を撮った1枚は、すなおに美しいなと感じました。
にもかかわらず、個展タイトルは「モンゴル」ではなく「惑星」です。
「モンゴルの美」でもない。
地球上の大自然と、まばゆい都市。
それらさまざまな要素をそのまま提示することで、それこそがこの惑星=地球であるというのが、写真家の思いであるのでしょう。
わたしたちは複数の人生を生きることができません。
都市住民も遊牧民も、それぞれの人生を生きています。
それらを、ミクロな目で見て、ひとりひとりの息遣いに接近していくと同時に、俯瞰的に見つめていく…。
そういう両義的な見方というか、かまえを可能にしている写真展だと思いました。
モエレ沼公園グランドオープン15周年記念として、「Imaginary Landscapes」シリーズの第4弾、「山内悠 惑星」展を開催します。
山内悠は、自然の中に長期間滞在し、自然と人間の関係性を見つめることで、世界について探求している写真家です。
本展で発表される「惑星」は、2014年から毎年モンゴルに通う中で撮影されたシリーズです。山内は、自然と人間が調和した世界を求めて旅をはじめ、モンゴル全土、内モンゴル自治区をめぐりました。旅を終えたあと、現像した写真にあらわれた光景を見た山内は、時間や空間を飛び越え、異なる世界を行き交うような旅をしていた事に気がついたと言います。
地球の創生を思わせる鉱物の世界、自然と動物とが共存する原始的な暮らしを営む遊牧民のポートレート、現代の文明を享受する都市のスナップ。そして、どこか既視感のある未来を彷彿とさせる砂漠のランドスケープ――。
本展では山内がモンゴルで出会った、今、この瞬間に隣り合わせに存在しているこれら多元的な世界を、新作プリント約50点によって表現します。ままならない自然のなか、難しい状況に置かれている現在の私たち。作品にあらわれた世界が、「いま」という時のあり方を語りかけてくれるかもしれません。
地球の創生を思わせるような鉱物の世界、自然と共存し原始的な暮らしを営む遊牧民、現代の文明を享受する都市、そして、どこか既視感のある未来を彷彿とさせる砂漠の風景。旅を終え、撮影した写真を並べてみると、そこにはこれらの光景が表われていた。
自然と人間が調和する世界を求めて始まった旅は、モンゴル全土、中国の内モンゴル自治区を巡った。旅は僕自身の目的を追いかける中で、いつのまにか思わぬ場所を行き来するものになっていた。
これらの写真は横に並ぶことで、あたかも人類の歩みを俯瞰するようにも感じられるが、実際にはそれぞれの世界が、同時に、同じ国の中ですぐ隣り合わせに存在していた。
あらゆる世界が並行して存在し、並行した異なる「いま」を生きている。それは宇宙に広がる惑星から、地球全ての場所、家族や個人、心の内側に至るまで、 無数の世界がいま此処に隣り合わせに存在しているということだ。 時間という過去や未来も、理にかなう直線的な実態はなく、全ては出来事でしかない。 相対的な「いま」という点として、互いに秩序なく隣り合わせに在るだけだ。
すべてが「いま」という瞬間に存在している。僕たちがいま此処に在るということ。それは、すべての瞬間における無限の選択の集約である。
世界は常に「いま」という時の中で無限に形成されていく。
まるで無数の惑星ように。
山内 悠
1977年、兵庫県生まれ。長野県を拠点に国内外で作品を発表している。独学で写真をはじめ、スタジオアシスタントを経て、富士山七合目にある山小屋・大陽館の滞在中に撮り続けた作品をまとめた写真集『夜明け』(赤々舎)を2010年に発表。2014年には、大陽館の主に焦点をあてた山小屋での日々を著した書籍『雲の上に住む人』(静山社)を刊行。2020年、モンゴルで5年をかけて撮影した写真を収録した『惑星』を青幻舎より出版する。
https://www.yuyamauchi.com/
2020年7月18日(土)~8月30日(日)午前9時~午後5時、会期中無休
モエレ沼公園・ガラスのピラミッド2階(札幌市東区モエレ沼公園)
・地下鉄東豊線「環状通東駅」(H04)で中央バス「東69 あいの里教育大駅行き」か「東79 中沼小学校通行き」に乗り継ぎ「モエレ沼公園東口」降車。約840メートル、徒歩11分
・バスセンター、JR苗穂駅から中央バス「東6 モエレ沼公園行き」に乗り終点で降車。約530メートル、徒歩7分
2020年4月29日~11月3日の土曜日・日曜日・祝日(7月20日~8月21日は毎日運行)
・地下鉄南北線「麻生駅」(N01)、同東豊線「栄町駅」(H01)で中央バス「麻26 モエレ沼公園行き」に乗り継ぎ、終点で降車。約530メートル、徒歩7分
2020年4月29日~11月3日の土曜日・日曜日・祝日(7月20日~8月21日は毎日運行)
(この項続く)