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書道評論の佐藤庫之介さん死去か

2022年02月24日 08時34分28秒 | 情報・おしらせ
 北海道新聞2月24日「おくやみ」欄の札幌市豊平区の項にある、佐藤庫之介さん(94)は、道内で長年、書道評論を書き続けた方と思われます。
 住所は手稲富岡だったはずですが、ご長男の名前や年齢が一致しています。

 葬儀は終了しています。

 1928年(昭和3年)、札幌生まれ、北海道帝国大学(現在の北大)文学部哲学科中退。
 ご本人は「美術評論家」という肩書でしたが、対象分野はほとんどが書道でした。
 1989年、札幌市民芸術賞を受賞。

 いささか難渋な文体ながら、大陸の漢字の歴史はもちろん戦前からの書の運動史を踏まえての的確な批評は、道内の書家の厚い信頼を得ていました。
 佐藤庫之介の前に佐藤庫之介無く、佐藤庫之介の後にも彼に匹敵する存在はいないと思います。

 昨年、書論が一冊にまとめられ、中西出版から上梓されています。

 そこで筆者が書いたことを、ここで繰り返しておきます。

 その根底には「いかに書くか」という技法論にとどまらない、「なぜ書くのか」という、書家の生にあいわたる根源的な問題意識が横たわっているといえましょう。

 つまらない党派性や「偉い人」への忖度とは無縁の厳しい視線が、この書き手に信頼が寄せられてきた理由ではないかと感じました。
 そして、道立近代美術館を借りて開かれた「'91北海道の「書」20人の世界展」など、この何十年か、北海道の書をめぐる展覧会企画や文章は、佐藤庫之介さん抜きには考えられないことが、あらためて痛感させられます。


 札幌のギャラリーで開かれる書展の会場で、言葉を交わしたことが何度かあります。
 テレビでしばしば見かける或る若手書家について、評価の低さで意見が一致し、筆者が生意気にも
「腰や腹を使わず、腕だけで書いているから駄目なのでは」
と言うと、我が意を得たり、というふうに賛意を示してくださったことを、いまでも思い出します。


 ご冥福をお祈りします。

佐藤庫之介書論集『書の宙(そら)へ』


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