脳梗塞で倒れた後、懸命のリハビリで、ふたたび絵画制作を続けている佐藤萬壽夫さん(札幌)。再起後、2度目となる個展である。
まずおことわりしておきたいのは、佐藤さんの絵は、「病人のリハビリ」のレベルでとらえるべきではない、ということだ。
たしかに、画材はアクリル絵の具から色鉛筆へと変わり、作品サイズも小さくなった。支持体は、ふつうのスケッチブックだ。
だが、一般的に色鉛筆画ということばから受ける印象とは異なり、何度も塗りを重ねているので、画面は力強い。
小さいが、広がりと力のある現代絵画といえば、思い出すのはパウル・クレーだ。佐藤さんの絵はもちろんクレーとは違う。しかし、筆致のひとつひとつに、精神がこめられているという点では、クレーと共通しているのだと思う。
冒頭の画像で、右側手前にあるのは「大きくなあれ」。
この絵に限らず、樹木を人に見立てた作品は「三人」「姉妹」「仲間達」など何点かある。
実際の木にくらべると、さまざまな色が配されて、ずいぶんカラフルというか装飾的であり、それが絵の魅力でもあると思う。
右の絵は、「浜辺」。
遠くにおだやかな海をのぞむ1軒の家。
近景の草花が妙に簡略化されているのが不思議な感じだが、これが雲(煙突の煙?)と、絶妙な響きあいを見せている。
もっとも、佐藤さんの絵で、技法的なことばかりに着目してもしかたない。たいせつなのは、自由のきかない手で丹念に、幾日もかけて描かれた画面にこめられた、気持ちなんだと思う。
個人的にいちばん気になったのが、この「浜辺」という絵だった。
描いたときの気持ちを勝手に推し量ってはいけないのかもしれないが、見ていて、芸術家のすさまじい孤独をかいま見たような気がした。
手前の灌木(?)が、三角形と線で構成されているのは、先の「浜辺」と共通している。
こちらは、海辺に立っているのは、赤と白のしま模様をした燈台。
たったひとりでぽつねんと、海を眺めている人のようにも見える。
明るく穏やかな風景だけに、よけいに透明なさびしさを漂わせているようだ。
出品作の中には「来た道」「時」といった、暗い心境を描いたものもある。
頭の中をたたいたら鈍い感じがして、暗い中を歩いて行ってるようだ…。佐藤さんは身ぶりを交えて語っていた。
まずは健康な自分としては、想像するよりほかないが、闘病生活は苦しいものなのだろう。おそらく体調は一進一退であり、どんどん快方に向かっていくというものではないのだろう。そこで、佐藤さんには絵がある。絵を制作することが、希望への1本の道なのではないか。そう思う。
もっとも、佐藤さん自身は、弱音を吐いているわけではない。
あいさつ文にこうあった。
このほか、以前訪ねたパリの印象を、スケッチそのままではなく、記憶の中のイメージを大事に描いた「遠いパリ」3点や、北海道の畑作地帯の空撮写真を思わせる「四季」など、多彩な作風の絵画が並ぶ。
発症以前の作品も展示されている。
出品作は次の通り。
仲よし
楽しみ
夢
丘の家(同題3点)
赤い家
おぼろ月
ひと休み
仲間達
丘
待ち人
大きくなあれ
三人
9月の色
姉妹
来た道
時
ファミリー(同題2点)
春
赤い風
空の風
四季(同題2点)
遠いパリ(同題3点)
街
灯
浜辺
小鳥
白樺
画室
ふた組
(以下は、闘病生活より以前の作)
空の下
ある日…
卓上の詩
男女
冬の屋根(流氷)
夏から秋へ
風の旋律(夏)
風の旋律(緑)
古里の想(同題2点)
道(同題2点)
北風
黄昏の飛翔
春の風(版画)
木立をすぎる時間(版画)
2010年4月26日(月)~5月1日(土)10:00~6:00(最終日~5:00)
札幌時計台ギャラリー(札幌市中央区北1西3 地図A)
■第59回新道展で書き漏らしたこと。佐藤萬壽夫さんの作品 (2009年)
■佐藤萬寿夫ドローイング展 (2009年4月)
■企画展「07-08展」
■佐藤萬寿夫展(2007年)
■06年の「順子・真知子・萬寿夫展」 (画像なし)
■NORD展 X(04年)
■NORD IX (03年)
■02年の個展
■NORD VIII (01年)
まずおことわりしておきたいのは、佐藤さんの絵は、「病人のリハビリ」のレベルでとらえるべきではない、ということだ。
たしかに、画材はアクリル絵の具から色鉛筆へと変わり、作品サイズも小さくなった。支持体は、ふつうのスケッチブックだ。
だが、一般的に色鉛筆画ということばから受ける印象とは異なり、何度も塗りを重ねているので、画面は力強い。
小さいが、広がりと力のある現代絵画といえば、思い出すのはパウル・クレーだ。佐藤さんの絵はもちろんクレーとは違う。しかし、筆致のひとつひとつに、精神がこめられているという点では、クレーと共通しているのだと思う。
冒頭の画像で、右側手前にあるのは「大きくなあれ」。
この絵に限らず、樹木を人に見立てた作品は「三人」「姉妹」「仲間達」など何点かある。
実際の木にくらべると、さまざまな色が配されて、ずいぶんカラフルというか装飾的であり、それが絵の魅力でもあると思う。
右の絵は、「浜辺」。
遠くにおだやかな海をのぞむ1軒の家。
近景の草花が妙に簡略化されているのが不思議な感じだが、これが雲(煙突の煙?)と、絶妙な響きあいを見せている。
もっとも、佐藤さんの絵で、技法的なことばかりに着目してもしかたない。たいせつなのは、自由のきかない手で丹念に、幾日もかけて描かれた画面にこめられた、気持ちなんだと思う。
個人的にいちばん気になったのが、この「浜辺」という絵だった。
描いたときの気持ちを勝手に推し量ってはいけないのかもしれないが、見ていて、芸術家のすさまじい孤独をかいま見たような気がした。
手前の灌木(?)が、三角形と線で構成されているのは、先の「浜辺」と共通している。
こちらは、海辺に立っているのは、赤と白のしま模様をした燈台。
たったひとりでぽつねんと、海を眺めている人のようにも見える。
明るく穏やかな風景だけに、よけいに透明なさびしさを漂わせているようだ。
出品作の中には「来た道」「時」といった、暗い心境を描いたものもある。
頭の中をたたいたら鈍い感じがして、暗い中を歩いて行ってるようだ…。佐藤さんは身ぶりを交えて語っていた。
まずは健康な自分としては、想像するよりほかないが、闘病生活は苦しいものなのだろう。おそらく体調は一進一退であり、どんどん快方に向かっていくというものではないのだろう。そこで、佐藤さんには絵がある。絵を制作することが、希望への1本の道なのではないか。そう思う。
もっとも、佐藤さん自身は、弱音を吐いているわけではない。
あいさつ文にこうあった。
脳梗塞で倒れてから2年4カ月になります。以前のように油絵はまだ描けてませんが、色えんぴつ画を描くようになり、昨年に続き「ドローイング展 II」を見ていただいて元気をもらい、一歩二歩と前進していきたいと思います。
(中略)
病気をして悔しいけど新しい出会いもあり自立に向かってゆっくり歩いています。
絵を描く事が今の私の「仕事」だと思う様になり、右手が使えて左手が嬉しそうなので、日常生活もマイペースで過ごしています。
今後も同じ様な事になると思いますが、少しずつ良くなってくれる事を祈るだけです。
荒巻先生(ヤナイ註:ギャラリーオーナーでSF作家の荒巻義雄さん)曰く「右脳へギアが入れ替わったのです」
この言葉に感動感動、時々思い出そう。
このほか、以前訪ねたパリの印象を、スケッチそのままではなく、記憶の中のイメージを大事に描いた「遠いパリ」3点や、北海道の畑作地帯の空撮写真を思わせる「四季」など、多彩な作風の絵画が並ぶ。
発症以前の作品も展示されている。
出品作は次の通り。
仲よし
楽しみ
夢
丘の家(同題3点)
赤い家
おぼろ月
ひと休み
仲間達
丘
待ち人
大きくなあれ
三人
9月の色
姉妹
来た道
時
ファミリー(同題2点)
春
赤い風
空の風
四季(同題2点)
遠いパリ(同題3点)
街
灯
浜辺
小鳥
白樺
画室
ふた組
(以下は、闘病生活より以前の作)
空の下
ある日…
卓上の詩
男女
冬の屋根(流氷)
夏から秋へ
風の旋律(夏)
風の旋律(緑)
古里の想(同題2点)
道(同題2点)
北風
黄昏の飛翔
春の風(版画)
木立をすぎる時間(版画)
2010年4月26日(月)~5月1日(土)10:00~6:00(最終日~5:00)
札幌時計台ギャラリー(札幌市中央区北1西3 地図A)
■第59回新道展で書き漏らしたこと。佐藤萬壽夫さんの作品 (2009年)
■佐藤萬寿夫ドローイング展 (2009年4月)
■企画展「07-08展」
■佐藤萬寿夫展(2007年)
■06年の「順子・真知子・萬寿夫展」 (画像なし)
■NORD展 X(04年)
■NORD IX (03年)
■02年の個展
■NORD VIII (01年)