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夕張在住の全道展会員、独立美術会友・土屋千鶴子さんが、4年ぶりに個展を開いています。
土屋さんは、一貫して「サラトモケのニケ」を題材にした絵画を制作しています。
石像が崩れかけたさまは、どこかで人間の崩壊を思わせます。
その意味で、彼女の絵は、人間存在を追究する全道展らしい作風なのではないかと思うのです。
もちろん全道展の絵が文学的なものばかりと言っているのではありません。
むしろ、モダニスム的だと思います。絵画は絵画で他の領域にかかわらず成立しています。程度の差こそあれ、マティスの影響下にあるといってもよいでしょう。
ただ、それが技術至上主義にとどまるのではなく、かたちや色彩を追究する果てに見えてくるのが、裸の人間なのではないのかという気がします。あるいは、人間の実存への問いというべきか。
うまく言えないし、そもそも団体公募展の作品をまるめてもしかたないといえば、そうなんですが。
今回の個展では、彫像のかたちがわりあい原型をとどめているものと、かたちがほとんど失われて原色があふれているものの2系列があるのが、見て取れます。
次に、画像を掲げます。
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どちらの系列にしても、重厚な精神性が通底しているように感じました。
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21世紀初頭に描いた「夕張風景」。4点組です。
いずれも本町地区ですが、左端の絵の商店街、つぎの絵に登場するそば屋、右端の絵の「石炭の歴史村」など、すでに多くが失われているそうです。
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小品では、上の画像の左端にある「窓からみる街」が印象に残りました。
江別から札幌方面の夕暮れを眺めた図で、空のオレンジ色が鮮烈です。
出品作は次の通り
聚富の浜
花 =同題5点
翔III
翔(想い出すまま)=同題2点
夕張風景=4点組
ニケライテウ
翔I
変容I
翔(ある日)
窓からみる街
人
窓辺の花
2009年11月9日(月)-14日(土)10:00-6:00(最終日-5:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)