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■開館17周年記念展 西村計雄・山岸正巳 それぞれの道 (2016年10月15日~17年3月12日、共和町) 後志4館(4)

2016年11月28日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 このブログの読者はすでにご存知かもしれませんが、西村計雄けいゆう(1909~2000)は洋画家。
 小沢 こ ざわ村(現・共和町小沢)生まれで、東京美術学校(現・東京藝大)で藤島武二に師事。戦後の51年に渡仏し、ピカソの画商カーンワイラーに見いだされて、欧洲各地で個展を開きました。パリでは、実際の風景や静物をもとにしつつも、すばやい直線や曲線を大胆に走らせた、個性的な画風を展開していました。晩年は帰国して東京にアトリエを構えていました。

 一方、山岸正巳(1929~2004)は、おとなりの岩内町生まれの洋画家。
 17歳で西村にデッサンの手ほどきを受け、47年に東京美術学校に入学、安井曾太郎に師事しました。パリに行ったこともありますが、50年代末に帰郷し、73年に共和町にアトリエを移しました。ほぼ一貫して、アカデミックで写実的な画風を堅持し、北海道知事の肖像も担当しました。

 今回はこの2人の作品を比べてみてみようという企画です。
 見終わっての感想は、芸術家というものは頑固というか、自分の画風にこだわるのだなあと、あらためて思いました。

 西村さんは、一度見たら忘れない画風というか、とくに60年代以降にはどの絵にも、独特の勢いある線が画面を風のように縦断し、横切っています。
 西村は先輩ですから、山岸のパリ滞在時には、指導かたがた「山岸が困るぐらい」加筆したこともあったとのこと。
 
 山岸さんはパリで「平面的な風景画」に挑戦したりもしますが、結局は従前の画風に戻ります。
 さすがこだわりのある人物は、パリ滞在時にも少女の横顔など、やわらかくやさしい描写は面目躍如です。
 また、静物では「ぬめりも描きたい」と言っていたというアイナメなどの魚の描写には、迫真のものがあります。

 ただし、こういうことを書くのもなんですが、風景に関しては、この程度描ける人はパリに数百人はいるんだろうなあという感じ。もちろんうまいことはうまいのですが、あまり個性というものが感じられません。

 人物画では51年の女性像が、後年の作からするとちょっと意外。
 写実的な描写は確かなのですが、白いシャツ、黒いスカート、革靴姿で木のベンチに座っている若い女性が、どこか不安げな表情をしているのです。左の傍らには、赤い婦人ものの洋傘と黒く堅牢なトランクが置かれており、旅に出るときの心もとなさがあらわれているのでしょうか。


 西村の絵では戦前の「アイヌ」が初見。
 縦長の100号ぐらいありそうな大作で、立ってこちらを向いている女性と、その前で背中を向けてしゃがんでいる人物(性別はわからない)の2人がメインのモティーフです。
 2人とも紺色に白のアイヌ文様が入ったアットゥシのような服を着ていますが、なぜか女性の服のところどころにレモンイエローの絵の具が重ねられています。
 もちろん1941年の作ですから、後年の西村の画風とはまったく異なります。
 女性の頭部の後ろには三角形の灰色があります。それ以外は、背景は一面真っ白で、だいぶ上のほうに(すなわち遠くに)、地平線があって、茶色などで塗られた空が見えています。また、魚網かかごのようなものが遠くに見え、右上には白鳥のような鳥が2羽走っています。
 背景から見て、冬の湖か海なのでしょう。ただし、手前の人物が立っているあたりは茶に塗られているので、縁側のような場所が想定されているのかもしれません。ここまで見てきて、ふいに、居串佳一の40年代の作品(たとえば「洋上漁業」)を思い出したのでした。


 所蔵品展というと、ともすれば、いつ行っても同じ絵が展示されていると思うかもしれませんが、1度や2度行ったぐらいではそんなことはないようです。今回も大半が初めて見る作品でした。


2016年10月15日(土)~17年3月12日(日)午前9時~午後5時(入館~4時半)、月曜休み、12月28日~1月2日休み
西村計雄記念美術館(後志管内共和町南幌似143-2)

一般500円、高校生200円、小中学生100円。JAF会員は一般400円




・都市間高速バス「高速いわない号」、ニセコバスの「共和役場前」から約820メートル、徒歩11分




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