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鈴木昭男「点音」札幌芸術の森野外美術館コンプリート(2)

2017年10月05日 23時16分05秒 | 札幌国際芸術祭
(承前)

 奥まった山林から下ってきて、野外美術館の真ん中あたりにある「ヴィーゲラン広場」へ。

 ノルウェーの国民的彫刻家、グスタフ・ヴィーゲランの5点が集まっています。

 ヴィーゲランの作品がノルウェー国外にある例はごく少なく、札幌に5点もあるのは貴重なんだそうです。

 この5点のうち有名なのは、母親が両腕を伸ばして小さな子どもをかかえる「母と子」ですが、鈴木昭男さんが、耳を澄ます「点音おとだて」を設置する位置に選んだのは、この中ではわりと地味な「腰に手をあてて立つ男」の背後でした。

 作品を正面から見ると、左の画像のとおり。

 鈴木さんによると、ちょうど男のまたぐらから「母と子」の像が見えるそうです。



 7カ所目。
 李禹煥 リ ウ ファンの「関係項」。

 李禹煥(1936~)は、戦後日本の現代美術を代表する潮流である「もの派」の理論的支柱として、海外でも知られています。

 「関係項」という題の立体はたくさんあり、石や鉄など素材を投げ出すように提示したシンプルな作品です。

 ところが、この作品の「点音」がやたらと離れた場所にあるのです。

 左側の画像で、遠くに「関係項」のさびた鉄が見え、位置関係がわかると思います。
 むしろ、となりのハンス・シュタインブレンナー「人物」のほうが近いくらい。

 李さんも、芸術の森美術館で展覧会(全版画展)を開いているんだよなあ(三鷹市美術ギャラリーから巡回)。1998年だったと思います。


 ちなみに筆者の場合、とくに後半は、どこに立って耳を澄ましても、大型の機械を用いて園内で落ち葉の掃除をしていたらしく、その「ブーン」という音が聞こえてくるばかり。
 できれば、小川のせせらぎや葉ずれ、キツツキが木をたたく音などを耳にしたかった―という思いがぬぐえませんが、考えてみれば落ち葉掃除も秋の風物詩なので、それはそれでよし、と考えることにしました。


 8カ所目は中井延也「月下」。

 鈴木さんが形容する通り「ひょうきんさ」を感じさせる作品が木々の間に横たわっています。

 中井延也(1934~99年)は、上川管内愛別町出身。
 旭川東高から東京藝大に進み、石の彫刻で中原悌二郎賞優秀賞を得ています。
 愛別町の北町農村公園に作品12点が置かれているそうですが、筆者は行ったことはありません。

 ところで「点音」ですが、李禹煥作品にもまして、どこに置かれているのか、皆目見当がつきません。

 さんざん探し回って、ようやく見つけたら、作品からこんなに離れたところに設置されていました。

 左側(スマートフォンでは先のほう)の画像で、奥の木と木の間に濃緑の立体が横たわっているのが見えるでしょうか。

 あまりに離れすぎていて、これはむしろ秋山沙走武「ミロク'89-1」の前といったほうがいいような位置です。
 右側(スマートフォンでは後のほう)の画像を参照してください。

 鈴木さんは、具象彫刻にあんまり興味がないのかもしれないなあ。


関連記事へのリンク
中井延也「舞・I」



 9カ所目はホルスト・アンテス「人物1000」。



 なんだか、7カ所目あたりから急に難度が上がったような気がしますが、これも、作品が立っているのと反対側の、通路としげみの境界線あたりに「点音」が設置されていました。

 アンテスは1936年、ドイツ生まれの彫刻家だそうです。 


 最後は、ダニ・カラヴァン「隠された庭への道」。
 イスラエルの生んだ世界的彫刻家の作品が、1点ではなく、まとまりとしてあるというのは、札幌芸術の森野外美術館の「売り」のひとつでしょう。

 札幌国際芸術祭にかかわらず一度は見てほしい作品です。

 ここでも鈴木さんは、作品の近くではなく、円錐形近くの木陰にあったベンチの傍らにすえつけました。「おとだて」ツアーの「お疲れさんポイント」として選んだのだそうです。
 

 筆者も、どっこいしょとベンチに腰掛けて、葉がそよぐ音に耳を傾けていました。


 野外美術館はこれでおしまいですが、補遺として、有島武郎旧邸の鈴木昭男コーナーについて次項でちょっと書きます。




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