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川本ヒロシ遺作展(5月7日まで)

2006年05月04日 11時53分21秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 「道東の自然と風景を愛した画家」という副題がついています。1924年、釧路生まれ、2005年歿。釧美展、新道展の会員として活躍しました。今回の遺作展を拝見しますと、長男の川本ヤスヒロさん(石狩市、全道展会員)の画風の原点のようなものを感じるとともに、道東の風土が色濃く反映しているという思いを強く抱きました。
 「遥かなるエトロフ」という20号の絵に、惹かれました。中央に2人の人物が斜めに配され、その右側には船の操舵に似た形が描かれています。右上には3羽の黄色な鳥が画面の外へ向かって飛んでいます。人物は、2人とも、白い鉢巻をして、胴巻きを身に着けているようですが、粗いタッチでもっぱら黒い色に覆われているため表情や服装などはよくわかりません。背景にはラベンダー色や黄色が飛び散り、ごつごつしたマティエールをつくっています。
 一体に、川本ヒロシさんの作品は、風景はわりあいモティーフが明確ですが、人物の場合、デフォルメがなされ、色づかいも斬新なものになるようです。

 それにしても感じるのは道東の風土の特異性です(道東に住んでらっしゃる方が読んで不快に思われたらごめんなさい)。
 とくに、釧路・根室地方は、海霧の影響でほとんど夏らしい夏がないこともあって、景観が道内の他の地方とまるで違うように思います。
 筆者は、白糠から釧路へとつづく海沿いの原野を走っているとき(車でも列車でも)、まなぼっとのラウンジから人通りの少ない幣舞橋や北大通りを眺めているとき、つくづく、はるばる遠くへ来たという感懐を抱きます。原田康子さんの「挽歌」を読んでいるときもおなじです。旅愁という感情に近いものがあるかもしれません。
 そして、この地に生きる芸術家の多くが、風土の刻印を強く受けていることに、あらためて思いをいたすのです。

5月2日(火)-7日(日)10:00-19:00
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A

8月1日(火)-6日(日)、釧路市北大通の画廊丹青に巡回(展示作品は一部変更)。


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