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■熊切圭介写真展 都市像

2014年04月08日 02時01分00秒 | 展覧会の紹介-写真
 
 東京の街角を題材にしたカラーのスナップ40点。
 フットワークが軽いというか、ちょっと気になる光景があればすぐにシャッターを押す好奇心の強さに感心しながら、もう一度、会場に貼られた略歴のパネルを見て驚いた。
 1934年生まれ。
 ということは、今年で80歳か!
 とても、そういうふうに見えない。
 東京のストリートを、どんどん歩いて、どんどんレンズを向けているかのように見える。

 池袋西口公園で、馬のかぶりものをしているスーツ姿の男。
 白山の地蔵尊。
 池袋駅東口地下で、銀色のマントを着て床に坐る大勢の男たち。災害訓練か何かだろうか。
 西池袋で、ハイヒール姿で、地面に坐っている女。
 東陽町の巨樹。
 東池袋で、「人世横丁」という看板がある街燈の横で、取り壊しが進む家。
 なぜか何枚もあるのが、ホームレスの写真だ。
 そういう、21世紀になってからの、現在の東京が活写されるなかで、なぜか1980年代の写真が2枚だけある。
 1枚は、1985年の大手町で、上半身裸で石垣によじのぼる男。
 もう1枚は、1981年。小菅・東京拘置所裏で、赤いTシャツ姿でフォークギターをかきならす男。そばに置かれたスポーツバッグのデザインが時代を感じさせる。
 とはいえ、21世紀の東京と、そんなに変わっていないようにも感じられる。
 異形の人も、家のない人も、おかしな建築も平然と飲み込んで、何事もなかったかのように日々走る巨大都市、東京。
 好奇心の存在を許しているのは、気味悪いほどの他者への無関心であるのかもしれないのだ。

 熊切圭介の項目は「日本写真家事典」にも載っている。
 ただ、1961年の「名張ぶどう酒事件」に材を得た仕事など、代表的な個展や著作が順を追って記されているだけで、どんな写真を撮るのか、評価はどうなのかといったことが全く記載されていない。これは非常に珍しいことだ。ジャーナリスティックな媒体が多いようだが、それにとどまらない、まさに「フットワークの軽さ」を発揮した仕事が多いのだろう。著作には、釧路出身の異色の建築家を取り上げた「毛綱毅曠」が挙げられている。

 あらためて、80歳とは思えない若々しい写真展だった。


2014年4月3日(木)~ 4月9日(水)午前9時~午後5時(最終日~午後3時)
キヤノンギャラリー札幌(中央区北3西4 日本生命札幌ビル)



 
□K2写真研究室 http://k2-labo.com/root/


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