東京の街角を題材にしたカラーのスナップ40点。
フットワークが軽いというか、ちょっと気になる光景があればすぐにシャッターを押す好奇心の強さに感心しながら、もう一度、会場に貼られた略歴のパネルを見て驚いた。
1934年生まれ。
ということは、今年で80歳か!
とても、そういうふうに見えない。
東京のストリートを、どんどん歩いて、どんどんレンズを向けているかのように見える。
池袋西口公園で、馬のかぶりものをしているスーツ姿の男。
白山の地蔵尊。
池袋駅東口地下で、銀色のマントを着て床に坐る大勢の男たち。災害訓練か何かだろうか。
西池袋で、ハイヒール姿で、地面に坐っている女。
東陽町の巨樹。
東池袋で、「人世横丁」という看板がある街燈の横で、取り壊しが進む家。
なぜか何枚もあるのが、ホームレスの写真だ。
そういう、21世紀になってからの、現在の東京が活写されるなかで、なぜか1980年代の写真が2枚だけある。
1枚は、1985年の大手町で、上半身裸で石垣によじのぼる男。
もう1枚は、1981年。小菅・東京拘置所裏で、赤いTシャツ姿でフォークギターをかきならす男。そばに置かれたスポーツバッグのデザインが時代を感じさせる。
とはいえ、21世紀の東京と、そんなに変わっていないようにも感じられる。
異形の人も、家のない人も、おかしな建築も平然と飲み込んで、何事もなかったかのように日々走る巨大都市、東京。
好奇心の存在を許しているのは、気味悪いほどの他者への無関心であるのかもしれないのだ。
熊切圭介の項目は「日本写真家事典」にも載っている。
ただ、1961年の「名張ぶどう酒事件」に材を得た仕事など、代表的な個展や著作が順を追って記されているだけで、どんな写真を撮るのか、評価はどうなのかといったことが全く記載されていない。これは非常に珍しいことだ。ジャーナリスティックな媒体が多いようだが、それにとどまらない、まさに「フットワークの軽さ」を発揮した仕事が多いのだろう。著作には、釧路出身の異色の建築家を取り上げた「毛綱毅曠」が挙げられている。
あらためて、80歳とは思えない若々しい写真展だった。
2014年4月3日(木)~ 4月9日(水)午前9時~午後5時(最終日~午後3時)
キヤノンギャラリー札幌(中央区北3西4 日本生命札幌ビル)
□K2写真研究室 http://k2-labo.com/root/