
彫刻という枠にとどまらない、ユニークでコンセプチュアルな作品の制作を続けてきた藤本和彦さん(札幌)。
大けがの後、初めての本格的な発表になると思います。

今回の特徴は、ギャラリーの入り口を閉め切り、ガラス窓越しに鑑賞するというシステムです。
ギャラリー内にはインスタレーションが設置されていますが、中には入れません。
会場は、道銀本店ビル1階の自由通路に面して、大きなガラス窓が特徴です。
札幌にはほかにも、ギャラリーエッセや HOKUSEN GALLERY ivory 、ギャラリー創が大きなガラス窓を有していますが、らいらっく・ぎゃらりいはこれらのギャラリーに比べると、窓の大きさの割に、中の面積が狭いです。大きな窓から、メインの壁面までは2~3メートルほどしかありません。
この狭さのため、100号などの絵を飾る際には、後ろに下がって見ることがむずかしく、らいらっく・ぎゃらりいの大きな制約でした。
絵画や現代美術の本格的な発表に使われることが少ないのも、会場の小ささと細長い形状が要因だと思われます。
しかし、そのおかげで、奥にあるものも、通路の窓越しからよく見えるというわけです。
こういう「窓越し鑑賞」という変則的な発表形態を採用したのはこれが初めてではありません。
一昨年だったと思いますが、ハルカヤマ藝術要塞のサテライト展も、入り口を閉め切って、窓越しに見るようになっていました。
しかし、いかに小さな画廊とはいえ、向こう側の壁面に掛けられている作品を、通路側の窓から見るのは、いかにも隔靴掻痒の念がぬぐえません。
その点、今回の藤本さんの展示は、会場いっぱいに広がるインスタレーションですので、もどかしい思いはそれほどしなくて済みます。
とはいえ、やはり、展開されている空間に入りたいという気持ちはすこし残りますね。

裁断後なので、もともとどんな紙だったのかは判然としませんが、白い部分が多く、黄色いところもあります。
いずれにせよ、材料費はあまりかかっていないのではないでしょうか。
中央部の床の、紙くずの山の中に、裁断した紙片をかためた80センチ四方ほどの立方体が置かれています。
背後の壁には、同じくらいの大きさの、金属製の正方形の枠が掛けられています。
この正方形の枠は格子状になっており、中央の立方体にも同一の模様がうっすらついていることから、この枠を使って紙片を固着させたと、推測できます。
おなじ素材でも、まったく異なる形状を見せるというのが、おもしろいところといえるかもしれません。
2016年12月27日(火)~17年1月14日(土)午前9時~午後5時(となっていますが、7時ぐらいまでは見られそうです)
らいらっく・ぎゃらりい(札幌市中央区大通西4 北海道銀行本店1階通路)
関連記事へのリンク
Sapporo Coneception 札幌現代アート交流展「レタラ野外前線」 (2014)
防風林アートプロジェクト (2014)
■川上りえ 札幌文化奨励賞受賞記念 Plus1 Group Exhibition (2013)
藤本和彦「野槌(のづち)」 ハルカヤマ藝術要塞 (2011)
■記憶の循環(2011年8月、画像なし)
【告知】タニグチアカシ + フジモトカズヒコ インタープレイ (2011)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■PLUS 1 Groove (2009年8月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦(2009年8月)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展(2009年7月、画像なし)
■北海道立体表現展'08(画像なし)
■『カナコ雪造カンパニー』~除雪原風景へのオマージュ~(2008年)
■PLUS1 groove (2007年)
■グループ プラスワン展(2006年)
■北海道立体表現展(06年、画像なし)
■北海道立体表現展(03年、画像なし)
■畑俊明 藤本和彦 コラボレーション展(画像なし、02年)
■地上インスタレーション計画(01年)
■北の創造者たち2001(画像なし)