札幌の郊外、長沼町に広がる田園地帯の丘陵のすそにあるスペース「ポエティカ」で、町内在住のガラス作家西山亮さんが、今年9月まで20回にわたって企画してきた工芸・クラフトのグループ展「響き合う感覚空間」。
展覧会が幕を閉じるにあたり、特別企画?として西山さんが「やってみたかった」という2人展を企画しました。
伊達市で、道内の土による、土の味を生かした作品を作る加地学さん。
石狩を拠点に金属の力強い彫刻を手掛け、近年は参加型のプロジェクトにも取り組む川上りえさん。
2人が「大地」をテーマに展覧会を開きました。
中央に、野焼きで焼いた加地さんの作「地層」が2点と、川上さんの鉄による旧作「抽象空間」が、どーんと床の上に置いてあります。
加地さんが使った土のうち、野幌と上川管内剣淵町については陶土の産地として時折耳にしますが、同管内中川町やオホーツク管内滝上町についてはほとんど聞いたことがありません。
(道内の陶芸家は信楽などから土を購入して制作している人が少なくない)
どれがどこの土なのかは判然としませんが、色味の異なる土がまじっているのは見ればわかります。
とにかく、土という物質の圧倒的な存在感が伝わってきます。
陶という芸術が、火で作られることと相まって、人間の根源的なところと通じていることを、あらためて感じます。
野焼きは3、4時間で終わることが多いですが、今回は朝から夕方まで1日限り。
「あついので、体力を消耗するんですよ」と川上りえさん。「私は1回だけ参加したけど、加地さんはそのあと、4回も行ったので大変だったと思う」
加地さんの壺は黒の色が強く出ています。
窯は石炭を使っているそうです。
灯油や電気以外に、薪を使っている人はちょくちょくいますが、石炭は珍しい。
ろくろではなく、ひもを積み上げる手法で、ゆがんだ成形がおもしろい。
すっきりと整った形が主流の現代にあって、異端の美学みたいなものを感じます。
その横に並んでいるのは、川上りえさんの Series of "Pebble of Clay" 土の石シリーズ。
「大地の土を石に戻すという構想」だそうです。
なお、右手の窓の上の壁には、本来の鉄による壁掛け型作品が3点並んでいました。
「丸みのある四角」「りくなみ II」「錆四角」と題されています。
川上りえさんは近年、レジン(樹脂)を用いた作品も手がけています。
窓辺に並んでいた「不安定な水」シリーズ。
紙袋が水をいっぱいにたたえているという、ありえない光景のようで驚きますが、これもレジンを入れたもの。
気泡が生じないようにレジンを注いでいくのは細心の注意をはらう必要があるそうです。
レジンの作品にはほかに「水満ちる山」というシリーズもありました。
普通ではなかなか実現しない「異業種格闘戦」とあって、興味深い展観でした。
2024年9月25日(水)~29日(日)午前10時半~午後5時
ポエティカ(空知管内長沼町幌内1720-275)
□ https://erikartgallery.wixsite.com/riekawa
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