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■黒展 vol.3 black exhibition(2017年12月21~26日、札幌)※文章追加しました。

2017年12月26日 23時59分59秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 路面電車が走る南1条通りに面した、やや古い高層住宅。
 吹きさらしになっている階段を2階まで上り、エレベーターで4階まで行ってすぐの部屋に、イベントスペースやギャラリーとして利用されている「SAPPORO UNDERGROUND NECCO(ネッコ)」がある。
 参加者をその都度募るグループ展が時折開かれており、年末、3度目の黒展こくてんが開催されている。

 マンションのワンルームか1DKしかないような広さに、30人以上の作品がびっしり。
 しばりは「モノクロ」というだけで、立体、人形、絵画(イラスト)、写真など、ジャンルは多彩だ。

 冒頭画像は、NECCO 主宰者で「近未来美術研究所」の活動でも知られるアラキヨシキヨさんの“WHAT A WONDERFUL EARTH”
 もちろん、世界初のSF映画として知られるジョルジュ・メリエス監督の『月世界旅行』の有名な場面のパロディーなのだが、球体にぶち当たったミサイルの側面にはなにやらハングルのような文字が書かれていて、北朝鮮のミサイルに対する皮肉にもなっている。題も「MOON」じゃなくて「EARTH」だし。
 なんだか、口元が、見てると腹が立ってきますね(笑)。

 なお、元ねたの映画は、Youtubeにあったので、末尾に貼り付けておきました。


 手前はモジャ「いーかんじ」。
 オセロゲームに興じるイカやなぞの生物(黒い河童?)がかわいらしい。

 その奥は、ツギハギコロナ「変態」。
 白い人間の背中から黒い人間が、まるでチョウがサナギから出てくるように生まれる瞬間を表現したユニークな作品。

 それにしても、モノクロの作品ばかりなので、写真もモノクロみたいだな(笑)。


 手前は先述の「変態」。

 その奥で、美しい流麗なポーズを取って空中に横たわっているように見える人形は、球体関節人形と思われるが、作者と作品名をメモしてない。ごめんなさい。
(※12月27日追加。如月六日さんの「弔」だそうです。如月さん、ありがとうございます!)


 「地下之会」や「北の病展」など目ざましい活動を見せる黒崎三眼さん。
 文章もたくさんあるのだけれど、個人的には写真が良いと思うし、写真だけで独自の世界を展開できていると思う。
 「表現せずにはいられない人」特有の心の叫びや切なさの感情が、写真にもっともストレートかつ独自のかたちであらわれていると感じるのだ。


 会場全体ではイラストも多かった。モノクロだと、画材をそろえなくて済むので、参入しやすいのかもしれない。

 画像は、阿鼻叫喚ちゃん「シュトラストちゃん」。
 なかなか大きな作品で、涙する少女の表情を、陰影ぬきで描いている。
 どなたかのツイッターに、日々顔が少しずつ変わる―と書いてあったが…。

 ただイラストの大半は、静止している人物を正面から描いているもの。
 具体的な場面の中の人物や、動作をしている人物の絵がまったくといっていいほどなく、そういう絵もあればよかったのになあ~と、ちょっと感じた。
 もちろん、そちらのほうがはるかに難度が高いのも理由だろうけど。


 正面から人物を描いた絵も、ここまでたくさん、バリエーション豊かにあると、すなおにすごいと思う。ニシカワアイ「portrait」シリーズ。
 それぞれ「Nick」「Susan」など、西洋人の名がつけられている。


 こぅじ「無題」。
 モノクロ写真5点。
 いずれも霧のかかった水辺の風景。
 デジタル時代のモノクロ写真には、モノクロにする必然性の感じられない作品も少なくないが、これは独特の幻想味が漂う佳作だと思った。


 水中蝶生ちょういさんは来年個展やグループ展が集中しており、今から張り切り中。
 点描技法で彼岸花を描いた「幽霊花 存在しなくても見つけてほしくて」は紙の裏側から明かりで照らしているのがおもしろい。

 右側は、24DANGER「雨」とナガレ「黒夜夢」(下)。
 いずれも、アンダーグラウンドという名の会場にふさわしい、おどろおどろしさをたたえた作品で、精緻にかきこまれている。


 水月「忘れ形見」。
 写真4枚で、いわゆる廃墟系。
 昔ふうの手術台や、遊園地の木馬など。シャープなプリント。


 会場は、筆者のような中高年から、高校生まで、いろいろな人で大にぎわいだった。
 
 ここに集まっている作品は、現代アートとして札幌国際芸術祭や各地のトリエンナーレで紹介される可能性はあまりなさそうだし、道展や新道展などで活躍している人もいない。
(NECCOがタコツボ化しているというのではなく、出入りしている人で全道展会員もいる)
 現代アートの最先端とはかかわりがないのは確かだと思うし、べつに作品に命を懸けておらず片手間でやっている人もいるかもしれないが、それでもなお、こんなに楽しいのはどうしてだろう。不思議だ。

 若い世代にとっての「リアル」は、道展や公募団体のような絵画にもなければ、難しい理論の上に成り立った現代アートにもなくて、こういう表現のなかにあるのかもしれない。
 うまく言えないけれど。


2017年12月21日(木)~26日(火)午後7~11時(土日は午後1~5時)
event gallery space SAPPORO UNDERGROUND 「NECCO」 (札幌市中央区南1西12 AMSビル4階)

黒展 2 (2016)




・市電「中央区役所前」から約200メートル、徒歩3分
・地下鉄東西線「西11丁目駅」から約250メートル、徒歩4分

・じょうてつバス「西11丁目駅前」から約250~440メートル、徒歩4~6分(上り下り、系統によって異なる)

・中央バス、ジェイアール北海道バス「教育文化会館前」から約490メートル、徒歩7分


『月世界旅行』"Le Voyage dans la Lune / A Trip to the Moon/Viaje a la Luna"(1902)


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