![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/a8/24ae4af29966fa213b7755d5ce58510a.jpg)
デザインをベースに、絵画や立体などを精力的に制作し、個展やグループ展で発表している札幌の畑江俊明さん。
よけいなものを加えないシンプルでシャープな作品を見るたびに
「さすがグラフィックデザイナーだよなあ」
と、舌を巻いています。
(もっとも、一般的に絵画などでは、スマートにまとめない美しさというのもそれはそれで在るので、算数の試験のようには、どんな画面が美しいかを決めることはできません)
写真もけっこう前から撮っていて、若いころに欧米などを旅して回ったときの記録を以前、Gallery Kamokamo で見たことがあります。
札幌国際芸術祭SIAF2024の公募プロジェクトとして開かれた “Future is in the Past” にも街撮りの作品を出品していました。
ただし、写真だけによる個展となると、意外にも今回が初めてだそうです。
冒頭画像と2枚目は、その “Future is in the Past” の時と共通するイメージもある、おもに札幌市内で撮ったスナップの数々。
インクジェットで出力したモノクロ作品です。
大通公園や南1条通など、見慣れた街路もちょっと新鮮に映ります。
個人的にいちばん感じたのは
「硬調の銀塩モノクロプリントにえらく似てるなあ」
ということ。
わずかに薄茶色を帯びているようにも見えますが、まるで印画紙の表面に残った定着液を思わせます。
(この話が通じるのは40代以上の世代に限られるかもしれませんが)
畑江さんはそこまで意識はしていないようでしたが、中央に置いて1枚500円で販売しているオリジナルプリントのレーザープリントに比べると、インクジェットプリントはで白黒がはっきり表現されないかもしれない、という意味のことを話していました。
モノタイプ版画の手法を取り入れた5点。
会場で、色がついているのはこの部分だけで、全体の良いアクセントになっています。
ちなみに右の2点はアイルランドなどの海外で撮ったそうですが、札幌などをとらえた左側3点と、違和感なく並んでいます。
畑江さんは、ことさらに横文字の看板をフレームに入れて異国情緒を強調することはないですが、巨大な広告やおなじみの建物(テレビ塔など)は注意深く画面から外していて、「札幌なんだけど札幌じゃないみたい感じもする」という絶妙のところを切り取っています。
こちらは自作のピンホールカメラによる作品。
といっても巨大な暗箱などではなく、デジタル一眼レフに、市販のレンズのかわりに、穴のあいたレンズキャップのようなものを取り付けたもの。
したがって、感度さえ高めに設定すれば、ふつうのデジタルカメラとおなじように撮影ができます。
全体にソフトフォーカスになっていて「札幌なんだけど札幌じゃないみたい」感が増しているようです。
飼っている猫の写真もたくさん展示していました。
ポストカードとして販売もしています。
ところで、筆者は要するに、畑江さんの写真が「良い」と思っているからこそ、こうしてブログで紹介しているわけですが、実は「良い写真ってなんだろう」ということに関しては最近モヤモヤしています。もちろん、畑江さんの写真の評価を下げるつもりはないのですが、世間で評価されている写真の中に、筆者が全く良さの理解できないものがけっこうあるのです。
しかも、いわゆる広告写真など写真畑から出てきた人の場合は「なんだこれ」と感じることはほとんどありません(好き嫌いはありますが)。現代アート寄りの作家の写真に、正直よく分からないものが時々あるのです。
自分はけっきょく、写真は、絵画と同じように
・構図
・エモーショナルな要素
で判断しているのかもしれません。
たとえば森山大道の構図のうまさについては、清水譲がくわしく述べています。森山大道はもともと画家志望でした。
身もふたもないまとめ方になってしまうかもしれませんが、畑江さんの写真もデザイナーらしく構図が決まっているから、良いと感じられるのでしょう。
会場にこんな文章のパネルが貼ってありました。
誤解の無いようにつけ加えておくと、筆者は、畑江さんのような写真も好きですが、コンセプチュアルだったらダメとか、キャプションがないと理解しにくいのは不可といっているのではなく、たとえば米田知子や志賀理江子の写真はとても良いと思っているんです。
近年出た写真論の本を何冊も積ん読状態にしているので、時間ができたら読んで勉強します。
2024年4月16日(火)~21日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)=H&M の上です
□Instagram toshiakihatae
□Facebook 畑江 俊明 (Toshiaki Hatae)
過去の関連記事へのリンク
■写真展 “Future is in the Past” 未来は過去にある。 (2024年1月20日―2月25日、札幌)
■多面体の誘惑 再び 畑江俊明 個展2023
■ こころのにわ (2019)
■New Point vol.15 (2019)=畑江さん出品、画像なし
■つながろう2018 TIME AXIS 時間軸
■畑江俊明個展 on the line, at the surface 線と面の上での[デキゴト] (2018年3月)
■畑江俊明個展 swinging with…/揺れるモノたちと… (2017年3月)
■つながろう2016 Hard/Soft
■Six in October (2013)
畑江俊明「湿原」 釧路の野外彫刻(44)
よけいなものを加えないシンプルでシャープな作品を見るたびに
「さすがグラフィックデザイナーだよなあ」
と、舌を巻いています。
(もっとも、一般的に絵画などでは、スマートにまとめない美しさというのもそれはそれで在るので、算数の試験のようには、どんな画面が美しいかを決めることはできません)
写真もけっこう前から撮っていて、若いころに欧米などを旅して回ったときの記録を以前、Gallery Kamokamo で見たことがあります。
札幌国際芸術祭SIAF2024の公募プロジェクトとして開かれた “Future is in the Past” にも街撮りの作品を出品していました。
ただし、写真だけによる個展となると、意外にも今回が初めてだそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/f3/d7394b368a9e2c00cd89cb870b6c2c68.jpg)
冒頭画像と2枚目は、その “Future is in the Past” の時と共通するイメージもある、おもに札幌市内で撮ったスナップの数々。
インクジェットで出力したモノクロ作品です。
大通公園や南1条通など、見慣れた街路もちょっと新鮮に映ります。
個人的にいちばん感じたのは
「硬調の銀塩モノクロプリントにえらく似てるなあ」
ということ。
わずかに薄茶色を帯びているようにも見えますが、まるで印画紙の表面に残った定着液を思わせます。
(この話が通じるのは40代以上の世代に限られるかもしれませんが)
畑江さんはそこまで意識はしていないようでしたが、中央に置いて1枚500円で販売しているオリジナルプリントのレーザープリントに比べると、インクジェットプリントはで白黒がはっきり表現されないかもしれない、という意味のことを話していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/8f/2ab73c17c2bbed13a1be9ef9ea3ac1b4.jpg)
モノタイプ版画の手法を取り入れた5点。
会場で、色がついているのはこの部分だけで、全体の良いアクセントになっています。
ちなみに右の2点はアイルランドなどの海外で撮ったそうですが、札幌などをとらえた左側3点と、違和感なく並んでいます。
畑江さんは、ことさらに横文字の看板をフレームに入れて異国情緒を強調することはないですが、巨大な広告やおなじみの建物(テレビ塔など)は注意深く画面から外していて、「札幌なんだけど札幌じゃないみたい感じもする」という絶妙のところを切り取っています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/e8/6c5c4cb515aff60ac87defc58107a9f3.jpg)
こちらは自作のピンホールカメラによる作品。
といっても巨大な暗箱などではなく、デジタル一眼レフに、市販のレンズのかわりに、穴のあいたレンズキャップのようなものを取り付けたもの。
したがって、感度さえ高めに設定すれば、ふつうのデジタルカメラとおなじように撮影ができます。
全体にソフトフォーカスになっていて「札幌なんだけど札幌じゃないみたい」感が増しているようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/ff/e6aa790d858f18a761e8518dc36e5c2e.jpg)
飼っている猫の写真もたくさん展示していました。
ポストカードとして販売もしています。
ところで、筆者は要するに、畑江さんの写真が「良い」と思っているからこそ、こうしてブログで紹介しているわけですが、実は「良い写真ってなんだろう」ということに関しては最近モヤモヤしています。もちろん、畑江さんの写真の評価を下げるつもりはないのですが、世間で評価されている写真の中に、筆者が全く良さの理解できないものがけっこうあるのです。
しかも、いわゆる広告写真など写真畑から出てきた人の場合は「なんだこれ」と感じることはほとんどありません(好き嫌いはありますが)。現代アート寄りの作家の写真に、正直よく分からないものが時々あるのです。
自分はけっきょく、写真は、絵画と同じように
・構図
・エモーショナルな要素
で判断しているのかもしれません。
たとえば森山大道の構図のうまさについては、清水譲がくわしく述べています。森山大道はもともと画家志望でした。
身もふたもないまとめ方になってしまうかもしれませんが、畑江さんの写真もデザイナーらしく構図が決まっているから、良いと感じられるのでしょう。
会場にこんな文章のパネルが貼ってありました。
意識を持った写真が どれだけの高みにあると言うのか
コンセプトの濃淡は その写真の本質とは関係が無いのでは
説明の必要な写真は ビジュアルとして成立しているのだろうか
そのレンズの先は いったい何処を向いて 何を切り取ろうとするのか
方向性を持たないこと / 視点を定めないこと / 深さなど求めないこと
刹那を切り取ること / 日々の営みを記憶すること / ただ心地よいこと
様々に揺れ動いてきたけれど
自分はそんな写真を撮りたかったのかも知れない
誤解の無いようにつけ加えておくと、筆者は、畑江さんのような写真も好きですが、コンセプチュアルだったらダメとか、キャプションがないと理解しにくいのは不可といっているのではなく、たとえば米田知子や志賀理江子の写真はとても良いと思っているんです。
近年出た写真論の本を何冊も積ん読状態にしているので、時間ができたら読んで勉強します。
2024年4月16日(火)~21日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)=H&M の上です
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/48/85e2681b6573e4a63b1d874a8d84242b.jpg)
□Instagram toshiakihatae
□Facebook 畑江 俊明 (Toshiaki Hatae)
過去の関連記事へのリンク
■写真展 “Future is in the Past” 未来は過去にある。 (2024年1月20日―2月25日、札幌)
■多面体の誘惑 再び 畑江俊明 個展2023
■ こころのにわ (2019)
■New Point vol.15 (2019)=畑江さん出品、画像なし
■つながろう2018 TIME AXIS 時間軸
■畑江俊明個展 on the line, at the surface 線と面の上での[デキゴト] (2018年3月)
■畑江俊明個展 swinging with…/揺れるモノたちと… (2017年3月)
■つながろう2016 Hard/Soft
■Six in October (2013)
畑江俊明「湿原」 釧路の野外彫刻(44)