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■橋本礼奈展 (6月20日まで)

2009年06月17日 22時53分49秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 東京在住の橋本礼奈さんによる、札幌では6年ぶりとなる個展。
 「ようやく作品がたまりまして」
と謙遜気味の作者だが、大作から、絵を担当した絵本の原画、水彩の小品まで、さまざまな作品で会場は埋まっている。
 いずれも高い伎倆をいかんなく発揮した作品ばかりで、たんに「リアル」という形容だけでは済まされないものをもっている。

 とくにサイズの大きな作品では、画面の端がゆがみ、本来まっすぐな線が曲線で表されている。
 筆者はこれを、カメラの超広角レンズを使ったためだとばかり考えていた。
 画角の広いレンズを使えば、画面の端がゆがむのは、よく知られている。
 しかし、個展であらためて絵をみつめていると
「むむ、こんなにつごうよく画面におさまるようなカーブになるか!?」
と思えてきた。

 橋本さんご本人にたしかめると、やはり超広角や魚眼レンズで撮ったそのままを絵にしているのではないとのこと。
 冒頭画像の「同じ日は二度とこない」も、地面が大きく弧を描いている。
 参考のために空の写真を何枚も撮ったが、いざ絵にする段になると、それをつなげて、目で見て不自然でないようなカーブにするのだという。

 ちなみに、このドラマチックな夕空は、2001年9月11日のもの。颱風が通り過ぎた後、雲が急速に動いていたという。
 あとで、娘さんの顔と組み合わせて絵に仕立てた。
 もちろん、空の写真を撮っていた時点では、その後にニューヨークの超高層ビルに飛行機がつっこむことになろうとは思ってもいない。
 作者の自宅は文京区で、東京ではかなりの都心部であるが、高層建築は意外と少ない。中央に、池袋の「サンシャシン60」がめだつ程度である。
「家の裏手に墓地があるので、マンションがたたないんです。たすかってます」
と橋本さん。なるほどー。

(余談ですが、筆者も1984-88年には文京区民でした)




 まな娘を題材にした作品も多い。
 テレタビーズやバイキンマンなど、子どもがいる家庭の人ならわかるキャラクターが大勢登場している。

          

 先の主体美術北海道グループ展にも出品された「薔薇色の毛布」。
 もちろん4人ともおなじ子どもで、時期がちがう。


 浅草あたりの「昭和的」な商店街を題材にした絵もユニーク。
 2点は、おなじ街路を描いているのだ。




 先に述べた「小石川三丁目」。

 「電柱をまっすぐにかくと、かえって写真のように見えてしまう。だいたいこんな感じかなー、と曲げているんです」
という橋本さんのことばは、なかなか考えさせられる。
 わたしたちの目が球体であり、レンズが曲面であることを考えれば、完璧にリアルな絵を平面に描くというのは原理的に不可能だからだ。

 なお、末尾にgoogleマップへのリンクをはってみたので、ストリートビューで、この絵と見比べてみるのもおもしろいかもしれない(悪ふざけな企画ですいません)。


 出品作は次の通り。
ブルーバックより「海の母」
ブルーバックより「囚われる」
ブルーバックより「ブルーバックに出会う」
ブルーバック
ヨハネスブルクへの旅
ミッフィーとわたし
木漏れ日・鳥居
白ねこ
同じ日は二度とこない
遠い町で
草の上におりる
まんが100円 雑誌120円
あさ路カレーショップ
薔薇色の毛布
動物列車
日曜日に
土星
答えのない問い
小石川三丁目
緑陰
ボイラー音の家
おいしい水
泳ぐ人
建てる人
夏の薔薇1
夏の薔薇2
夏の薔薇3
冬の薔薇
クロッキー1
クロッキー2
クロッキー3
クロッキー4


2009年6月15日(月)-20日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)


□橋本礼奈画帖 http://city.hokkai.or.jp/~reina/

第6回主体美術北海道グループ展 (2006年、画像なし)
橋本礼奈個展(2003年)


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2 コメント

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Unknown (SH)
2009-06-21 08:00:51
ヤナイさん、こんにちは。

この記事は作品がとても見やすく出ていましたので、展覧会紹介で使わせていただきました。
私はどうも子供が登場している作品は苦手で(生々しくて)、風景が大好きです。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2009-06-21 21:15:32
礼奈さんの絵に出てくる子どもは、なんだか彼女が「これはふしぎな生き物だなあー」とちょっと突き放して見てるようなところが感じられて、でもやっぱり愛情も持っていて、そんなところが好きだったりします。

直線にかくとむしろ写真みたいに見える-というのはすごくおもしろい話でした。
こんなに都合よくカーブする広角レンズなんてないわけで、とても興味深い個展だったと思います。
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