北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

荒川修作氏が死去したこと、および1998年の「森弘志展」

2010年05月24日 23時28分01秒 | 新聞などのニュースから
 ちょっと古い話題ですが、美術家の荒川修作さんが亡くなりました。

 北海道新聞、2010年5月20日夕刊から。
 朝日、読売、毎日は朝刊に載っており、半日遅れになりました。

 19日、ニューヨーク市内の病院で死去、73歳。名古屋市出身。

(中略)

 60年ごろに日本の前衛美術で活躍した後、61年に渡米。製図のような図形による「ダイアグラム絵画」を確立した。70年代から欧米や日本で大規模な個展を開催、戦後日本の代表的な現代美術作家として知られた。

 パートナーで詩人のマドリン・ギンズさんとの共著「意味のメカニズム」などで、哲学と科学、美術を総合した思考を展開。公園のような美術作品「養老天命反転地」を95年に岐阜県養老町に開設、近年は都市プロジェクトなどに取り組んでいた。96年に日本芸術大賞、03年紫綬褒章。


 「意味のメカニズム」と題された作品は、道立函館美術館に所蔵されています。



 本格的な追悼は本格的な人に任せるとして、どうでもいい話を。

 いまの若い人だと、「世界に通用する日本のアーティスト」といわれて思いつくのは、草間彌生だったり村上隆なんだろうけど、筆者の若いころはなんといっても荒川修作だった(たぶん筆者より少し上の世代だと「岡田謙三」かなあ)。

 1981年に「美術手帖」誌が特集した「現代美術事典」は、「ポップアート」「ジャクソン・ポロック」といった項目を並べていたけど、日本人アーティストの項目はたったの二つだけ。
 「荒川修作」と「河原温」。

 1997年にはグッゲンハイム美術館で個展も開催されている。

 たしか1986年に西武百貨店(池袋)内の画廊だったと思う(美術館ではなかった)けど、個展があったときには、見に行った。よくワカランなりに、これはおさえておかねば-と思っていたのだ。

 で、見に行った。
 幾何学的図形と英語だかフランス語だかの単語が線で結ばれている作品がいくつか並んでいる。

 …よくわからん。

 「こんせぷちゅあるあーとっていうのは、むつかしいのお」
という感想を抱いて会場を後にした(←バカだったんです)。

 筆者の友人は画廊の人から英和辞典を借りて鑑賞したと言っていた。




 ところで、荒川修作といえば、筆者は1998年、北海道新聞の文化面にこんな展覧会評を書いていた。
 これは、森弘志さんが喜ぶ文章ではないような気がするし、荒川修作さんとも直接関係ないのだが、いま読んでも、こんな文章が実際に紙面を飾ったのは或る意味で痛快だとも思うので、再録する。

 男 森弘志(一九六〇年生まれ、十勝管内新得町在住)は、現代において絵画を描くことの困難さを自覚しながら制作に携わっている少数の画家の一人である。
 女 なに気取ってんのよ。森さんの絵って、写真みたい。「それ、普通」=写真=なんて、すごいよねえ。
 男 ほめ言葉の語彙(ごい)が貧困だなあ。ただ単に写真に似せてどうするんだよ。これだって、題名とは裏腹に「普通」じゃあないだろう。
 女 この手の静物画なら酒びんや花をかくのが「普通」だって言いたいんでしょ。
 男 そうそう、その通り。ついでに言うと、左のジーンズは衣、パンやショートケーキは食、左上の木片は住、うさぎは子供、ケチャップは女、マヨネーズは男をそれぞれ表し、たばこが×を、セロテープが〇を示している。この絵は人間にまつわるすべてを描こうとしているのだ。
 女 すっごーい。よく読み解いたねえ。
 男 実は作者本人に聞いてきたんだ。
 女 なあんだ。感心して損しちゃった。少しは自分の頭で考えたら? それにしても、森さんの絵にはなぞが込められている。いくら頭をひねっても私には分かんないけど。ただ、「少年深夜劇」などで画面に詩をかきいれたり、「樹木門(未完)」で描き残しがあるまま筆を置いたり、ちょっと変わったことをやるよね。
 男 従来の絵に対する批評性があるのは確かだよな。ただ、いわゆる文学性というものとはちょっと違うような気もする。社会的な、あるいは文明批評的なメッセージを、明確に織り込んでいるわけではない。直ちに言葉に置き換えられる主張とかコンセプトが描かれているわけではないし、もちろん叙情的でもないんだ。近代絵画は言語的なものを一貫して排除してきており、その純化の達成が抽象表現主義だと思うんだけど、それに対するアンチテーゼという側面が彼の絵にはあるんじゃないか。影響を受けた作家として、言語や文字、記号に対じしてきた荒川修作を彼が挙げるのも、あれ?
 女 ………。
 男 おい、寝るなよ。自分の頭で考えるんじゃなかったのかい。
(文化部 梁井朗)
                  ◇
 12月2日まで、道立帯広美術館(緑ケ丘2)。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白い展覧会評 (怜な)
2011-09-27 22:29:28
こんばんは。偶然、見つけました。
森弘志さんについての、会話による記事ですね。今日、森弘志個展(風景画)を観てきました。

写真のよう。だけではない、緊張感があって、
画家の姿勢が画風から現れるようで、観る方にも姿勢を正すような美しい絵と思いました。
(今、野田弘志著「リアリズム絵画入門」を読んでいて、尚、そう感じたのかも知れません)

機会を見て、展覧会評をもっと読みたいと思います。
返信する
怜なさん、ありがとうございます~! (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2011-09-27 23:24:01
当時は新聞にすき放題書いてましたから(笑)。

森弘志さんからは、10年ほど前に、現代にふさわしい風景画を描きたいというような意味のことを聞いたことがあります。
だから、たぶん、野田弘志さんのようなウルトラ写実が狙いではなく、かといって一水会調でもない、風景画なのだと思います。
いま開催中の個展。すごく見たいです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。