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■高橋俊司展 Stapler work 2018-1-RSJ (2018年6月9日~18日、札幌)

2018年06月18日 11時54分31秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 1990年代からゼロ年代にかけてさかんに個展を開いていたり、グループ展に参加したりした高橋俊司さん。
 2010年6~7月の個展(筆者は札幌に転居する直前なので、見ていない)と12月の500m美術館展を最後にしばらく発表が途絶えていたが、今回、8年ぶりの発表となった。

 作品は4点。
 自身が撮った写真を7千枚オフセット印刷し、ステイプラー(ホチキス)を使って、会場でつなげていく。
 それぞれのプリントはサービス判より少し小さい、ホチキスで留めやすい大きさ。

 幅は2メートル。
 最初は自宅で、据え置き型のホチキスを用いて規則正しく留めていく。
 上部に小さな穴をいくつか開け、黒いビスで、壁に取り付けた棒に固定している。
 途中から、手持ちの一般的なホチキスに持ち替え、留める作業を続けていくうちに、最初は平面だった作品の表面がしだいに波打っていく。
 筆者が訪れたときには、1点は、教室の窓のカーテンが激しく風に揺れている様子が瞬間的に固化したような形状をしていた。

 高橋さんによると、この形は意図してできるものではないという。
 「バシッ、バシッ」という、けっこう大きな音を立てて、1枚につき5~7カ所ほどホチキスで紙をどんどんつなげていくうち、少しずつ表面がたわみ、そのまま大きな波のような形になってしまうそうだ。
 幅は2メートルを超えているし、うねりの形の底に当たる部分は、ホチキス作業がやりづらくなる。

 ちなみに、残る3点は、程度の差はあるが、おおむね平面の形状を保持していたり、いちばん下部が少し波打っていたりした。

 発表していなかったこの8年館、高橋さんは
「次はシンプルにいこう」
と決めていたという。
 印刷の色味の違いで、わずかに濃淡のある藍色の表面。そこに、上部は規則的に、途中からはランダムに配置されてピカピカと光るホチキスの針。
 立つ位置により、あるいは時間帯により、見た目は微妙に変わる。
 しかも高橋さんは現場制作で、ホチキスを手に紙をつなげていくので、作品はどんどん成長していく。最終的にどんな形になるのかは、作者にも予想できない。

 ちなみに写真は、札幌・大通公園の噴水の水しぶきを撮影したものという。

 なお、搬入時には一部ができているだけなので、設置は用意だが、搬出時は作品を壊さないと会場から出せないらしい。
 時間とともに変化し、最後には跡形もなく姿を消す作品というのも、現代的なアートのありようだと思う。


2018年6月9日(土)~6月18日(月)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara (札幌市中央区北1西28 MOMA place)

500m美術館・その3(2010)
高橋俊司個展 ステープラーワーク ■つづき (2008年)
FIVE ENERGY(07年)
北海道立体表現展(06年)
札幌の美術2004
高橋俊司展 「水辺 みずのほとり 2003/7」





・地下鉄東西線「円山公園」駅・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分
※円山公園駅は改札と地上の間が長いので、両駅からレタラまでの距離はそれほど違いありません

・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽行き都市間高速バス全便(北大経由除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります


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