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■番匠克久写真展「汽憶」 (2017年12月1~6日、札幌)

2017年12月06日 15時09分59秒 | 展覧会の紹介-写真
 ひとくちに「鉄道写真」といっても、「●●型」などの車体にフォーカスを合わせたものもあれば、鉄道をとりまく風景全体をとらえたものもあります。
 今回の個展は後者が30点余り。赤みを帯びた真冬の曇り空の下の苗穂機関庫、海岸沿いを行くディーゼルカー、夕焼けをバックに橋の上を行き過ぎる1輛の列車、日暮れどきを走る寝台列車や、舞い散る雪片の向こうを走る「北斗星」…。
 冬の斜めにさす光線のおかげもあるのでしょうが、見ていると、なんともいえない懐かしさのような感情がこみ上げてきます。
 夏場の写真もありますが、多いのは冬の朝夕。
 オホーツク管内遠軽町丸瀬布に森林鉄道のSL雨宮21号を撮りに行き、保線作業をしている人とSLの煙を中心に撮ったのが1枚、夕焼け空と上下するシグナルを撮ったのが1枚。雨宮号の車体は、今回の個展ではまったく見ることができません。しかし、こういう思い切りの良さが、すばらしい作品を生んでいるのだと思います。


 勤めのかたわら撮っているので、この10年の作品から選んでいるそうです。
 キャプションではとくに書いていませんが、すでに廃止された夜行列車や留萌線の瀬越―礼受間、いまは通れなくなっている根室線の東鹿越―幾寅や日高線の新冠―節婦間など、JR北海道が失ってきたものが、ここにはたくさん写っています。
 
 そのことが、いっそう作品の切なさをきわだたせているように、筆者には思えました。

 日高線の絵笛駅附近で、馬をひいて線路を渡ろうとしている男性を望遠で撮った1枚がありました。
 この風景ももう永遠に見られないのでしょうか。


 ここに写っているのは、ことさらにレトロ趣味を強調したり、懐かしさだけのものではありません。
 北海道の美しい(しかし、いわゆる観光名所だったり、鉄道写真の世界ではおなじみの場所ではない)大地を、そして、厳しい自然の中を、黙々と走る列車たちがとらえられています。
 それは、単にノスタルジーをかもし出す装置ではなく、わたしたちの日常そのものと地続きであるということが、それぞれの写真から静かに伝わってきます。


 なお、館内は撮影可でした。
 ポストカードのほか、エムジーコーポレーション(札幌)から発売された2冊の写真集「汽憶」が会場で発売されています。


2017年12月1日(金)~6日(水)午前10時~午後6時
富士フイルムフォトサロン札幌(中央区大通西6 富士フイルム札幌ビル)




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