札幌国際芸術祭の記者発表が12月17日、東京で行われた。
「アートブロガー」を名乗っている以上、こういう話題に何日も乗り遅れるのはじつにみっともないとわれながら思うのだが、なにせ東京からも札幌からも遠く離れたところに住んでいるという事情に免じて許されたい。
すでに、各メディアで報じられている。
日本テレビのニュースにリンクをはっておこう。
□日テレNEWS24「坂本龍一、札幌国際芸術祭テーマ曲に意欲」 http://news24.jp/entertainment/news/1625973.html
そのほか、いちばんシンプルで読みやすかったのは、SAPPORO MEDIA ART LABO というサイトだった。
それによると、
《テーマ》
は
「都市と自然」。
《サブテーマ》
は
「自然」「都市」「経済・地域・ライフ」。
ということで、テーマとサブテーマの関係がよくわからないが、毎年どかどかと雪が降り、原生林に接し、野生の熊が時おり住宅地に出没する大都市というのは、世界的にもほとんどないので、この「都市と自然」というテーマ設定はなかなか良いところをついていると思う。また、地球環境の危機が叫ばれる現代にふさわしいテーマでもあるだろう。
筆者が注目したことを、3点書いておこう。
その1。
企画アドバイザーとして、浅田 彰(京都造形芸術大学大学院長)の名が挙がっていること。
浅田氏は、1980年代半ばには超有名人であった。
「ニューアカデミスムの旗手」
などと呼ばれる存在だった。
京都大で経済を教えていたが、フランス現代思想を論じ、「構造と力」「逃走論」は相次ぎベストセラーになった。
いま思うと、ニューアカデミスムといっても、実態がよくわからないが(要するに浅田、中沢新一、四方田犬彦を総称する語じゃないかという気がするが)。
彼は芸術にも造詣が深く、のちに柄谷行人と組んで出した雑誌「思想空間」では、米国の絵画論の古典などのアンソロジー「モダニスムのハードコア」という別冊を発刊しているし、雑誌「Intercommnication」でも再三、芸術批評の筆を執っていた。
ただし、その後あまり単著を出していないため、若い世代には「知る人ぞ知る」存在ではないかと思われる。
彼の「思想空間」時代の批評は、たとえば
かくも幼稚なる「現代美術」
草間彌生の勝利
などにみられるように、相当な辛口であり、裏を返せば、芯が一本通っているということである。
専業の美術評論家でないにもかかわらず、ここまで鋭い美術批評の書き手は、めったにいるものではない。上のリンク先からいろいろ読んでみてほしい。
浅田氏が絡むことで、かなりの程度まで水準的なものが保証されるのではないかと、期待したい。
その2.
数カ月前に筆者は、坂本龍一の起用にふれて
「札幌は有名人が好きだ」
などと、相当に皮肉のまじった文章を書いた。
しかし、それについては、率直に反省したい。
上のほうで日テレのニュースにリンクを貼った。
それで筆者は気づいたのだが、もし坂本龍一がゲストディレクターでなかったら、日本テレビはこれを報道したか、ということ。
たぶん、とりあげていないだろう。
一般人やテレビ局の関心を引き寄せるのに、有名人というのが効果絶大であるということが、ここではっきりわかった。
坂本氏にいくらギャラを払っているのか知らないが、日テレで全国に札幌国際芸術祭のニュースが流れたと思えば、おそらく安いものだろう。
地方の都市が「本気を出してるぞ」ということを、いちばんわかりやすいかたちで広くアピールする手段は、「有名人の起用」なんだろうな。
ところで、一般的にはさして有名ではないが、美術界ではビッグネームであるアンゼルム・キーファーの名前がこの段階で挙がっているということは、ひょっとすると彼の参加があるのかもしれない。
これは率直に歓迎したいと思う。
その3.
「ビエンナーレ」の文字がきれいさっぱり消えていること。
英訳でも
Sapporo International Art Festival 2014
であり、Triennale とか Bienale という表現はどこにもない。
これは、2016年あるいは2017年以降の計画が白紙になっているということではないだろうか。
関連記事へのリンク
札幌国際芸術祭のゲストディレクターに坂本龍一氏 (2012年9月)
■札幌プレ・ビエンナーレ 表現するファノン展・その4(2011年11月)
■札幌ビエンナーレ・プレ企画2011 アートから出て、アートに出よ さっぽろアートステージ特別協賛事業 表現するファノン サブカルチャーの表象たち (2011年11月)
札幌ビエンナーレの議論がTwitterで盛り上がっていた件について (2010年10月)
国際芸術祭について意見を求められる、の巻 (2010年3月)
「アートブロガー」を名乗っている以上、こういう話題に何日も乗り遅れるのはじつにみっともないとわれながら思うのだが、なにせ東京からも札幌からも遠く離れたところに住んでいるという事情に免じて許されたい。
すでに、各メディアで報じられている。
日本テレビのニュースにリンクをはっておこう。
□日テレNEWS24「坂本龍一、札幌国際芸術祭テーマ曲に意欲」 http://news24.jp/entertainment/news/1625973.html
そのほか、いちばんシンプルで読みやすかったのは、SAPPORO MEDIA ART LABO というサイトだった。
それによると、
《テーマ》
は
「都市と自然」。
《サブテーマ》
は
「自然」「都市」「経済・地域・ライフ」。
ということで、テーマとサブテーマの関係がよくわからないが、毎年どかどかと雪が降り、原生林に接し、野生の熊が時おり住宅地に出没する大都市というのは、世界的にもほとんどないので、この「都市と自然」というテーマ設定はなかなか良いところをついていると思う。また、地球環境の危機が叫ばれる現代にふさわしいテーマでもあるだろう。
筆者が注目したことを、3点書いておこう。
その1。
企画アドバイザーとして、浅田 彰(京都造形芸術大学大学院長)の名が挙がっていること。
浅田氏は、1980年代半ばには超有名人であった。
「ニューアカデミスムの旗手」
などと呼ばれる存在だった。
京都大で経済を教えていたが、フランス現代思想を論じ、「構造と力」「逃走論」は相次ぎベストセラーになった。
いま思うと、ニューアカデミスムといっても、実態がよくわからないが(要するに浅田、中沢新一、四方田犬彦を総称する語じゃないかという気がするが)。
彼は芸術にも造詣が深く、のちに柄谷行人と組んで出した雑誌「思想空間」では、米国の絵画論の古典などのアンソロジー「モダニスムのハードコア」という別冊を発刊しているし、雑誌「Intercommnication」でも再三、芸術批評の筆を執っていた。
ただし、その後あまり単著を出していないため、若い世代には「知る人ぞ知る」存在ではないかと思われる。
彼の「思想空間」時代の批評は、たとえば
かくも幼稚なる「現代美術」
草間彌生の勝利
などにみられるように、相当な辛口であり、裏を返せば、芯が一本通っているということである。
専業の美術評論家でないにもかかわらず、ここまで鋭い美術批評の書き手は、めったにいるものではない。上のリンク先からいろいろ読んでみてほしい。
浅田氏が絡むことで、かなりの程度まで水準的なものが保証されるのではないかと、期待したい。
その2.
数カ月前に筆者は、坂本龍一の起用にふれて
「札幌は有名人が好きだ」
などと、相当に皮肉のまじった文章を書いた。
しかし、それについては、率直に反省したい。
上のほうで日テレのニュースにリンクを貼った。
それで筆者は気づいたのだが、もし坂本龍一がゲストディレクターでなかったら、日本テレビはこれを報道したか、ということ。
たぶん、とりあげていないだろう。
一般人やテレビ局の関心を引き寄せるのに、有名人というのが効果絶大であるということが、ここではっきりわかった。
坂本氏にいくらギャラを払っているのか知らないが、日テレで全国に札幌国際芸術祭のニュースが流れたと思えば、おそらく安いものだろう。
地方の都市が「本気を出してるぞ」ということを、いちばんわかりやすいかたちで広くアピールする手段は、「有名人の起用」なんだろうな。
ところで、一般的にはさして有名ではないが、美術界ではビッグネームであるアンゼルム・キーファーの名前がこの段階で挙がっているということは、ひょっとすると彼の参加があるのかもしれない。
これは率直に歓迎したいと思う。
その3.
「ビエンナーレ」の文字がきれいさっぱり消えていること。
英訳でも
Sapporo International Art Festival 2014
であり、Triennale とか Bienale という表現はどこにもない。
これは、2016年あるいは2017年以降の計画が白紙になっているということではないだろうか。
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■札幌プレ・ビエンナーレ 表現するファノン展・その4(2011年11月)
■札幌ビエンナーレ・プレ企画2011 アートから出て、アートに出よ さっぽろアートステージ特別協賛事業 表現するファノン サブカルチャーの表象たち (2011年11月)
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