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■ReguRegu マンドレイクの為の泡のような狂詩曲(2015年12月9~21日、札幌)

2016年03月05日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 




 昨年末に見た展覧会のうち、どうしても忘れられないものの一つ。

 2014年、同じギャラリー犬養で、ReguReguと飴屋さんが行った「ぷうちゃんマーチ」で筆者は、「かわいらしさ」と「おぞましさ」の絶妙な同居という意味のことを書いたけれども、その思いは、いまも変わっていない。
 Twitterではこの展覧会について「かわいい」という讃辞を多く目にした。ぬいぐるみがかわいいことを否定するつもりはない。でも、ReguReguのぬいぐるみはむしろ気持ち悪いもの、夢で見たら怖くて仕方ないものではないだろうか。

 「マンドレイク」は、別名「マンドラゴラ」ともいい、ナス科の植物の根で、人の姿にも似ている。薬草に珍重されてきたが、引っこ抜くときに恐ろしい叫び声を発し、それを聞いた者は死に至るという言い伝えもあるそうだ。

 以上のような話であればネットでわかるが、澁澤龍彦(本来は「彦」も正字)「エロスの解剖」「黒魔術の手帖」などの書物に詳しく出ていた記憶があり、そのときの恐ろしげな記憶の古層が、今度の個展でよみがえってきたのかもしれない。

 ReguRegu さんがすごいところは、ぬいぐるみでマンドレイクを再現するにとどまらず、その標本や押し花を作ってしまうところだ。
 おそらく、他の植物の根や葉から、本物らしくこしらえたのだろうが、添えられたラベルには採集地まで、いかにもそれらしく記されている。これを採集したとき、ReguReguさんは、耳栓をしながら引っこ抜いたのだろうか、などと考えさせてしまうリアリティーがある。
 実験室に並んでいそうなガラス瓶に収められたマンドレイクを見ると、とりわけその感が強い。ReguRegu さんは、世界をまたにかけるプラントハンターを装っているかのようである。
 

 「不気味なもの」「おぞましいもの」といえば、美術史の文脈では、フロイトの精神分析を踏まえたマイク・ケリーやアネット・メサジェの作品が想起される。

 ReguReguさんがそのあたりにどこまで自覚的なのかはわからないし、ケリーやメサジェなどに比べると、残酷さやおぞましさはあまり感じられない。
 おぞましい芸術を論じるのは筆者の手に余るのだが、ともかくその作品世界が、人間の無意識のかさぶたをいたく刺戟するものであることは、間違いのないところだろうと思う。


2015年12月9日(水)~12月21日(月)
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)


□ReguRegu日記 http://koiso.blog68.fc2.com/

ぷうちゃんマーチ ReguRegu 飴屋


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