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「たとう(畳)紙」って、男性は知らない方もいるようですが、着物を包む紙のことです。着物、帯、長じゅばんで、それぞれ大きさが違い、また、たたんで包んだ後で結ぶためのひもが四方についています。
この紙を支持体にした作品だけを集めたユニークな個展を、札幌在住で道内の女性日本画家を代表するベテラン、伴百合野さんが開いています。
会場中央には、表から見ると「貝」、裏から見ると「湖・層」という作品が吊り下げられています。
その下の床に置かれているのは、たとう紙の実物と、7日に開かれたワークショップで作られたものです。
伴さんの手元には、たとう紙が以前からあったそうですが、今回のためにリサイクルショップから分けてもらったとのこと。リサイクルショップでは捨てるしかないそうです。
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会場に入ってすぐのところに飾られているタブローは「風のにほひ」「雪花譜より」。
右の「雪花譜より」は、裏側もあり、先の「多年草展」の際に展示されていました。手裏剣みたいな形に仕立てています。
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右手の壁は旧作コーナー。
右側、昨年に札幌で開いた「四川省 日中交流展」で発表した「分水嶺」。
ヒマラヤの青いケシが中央部に描かれています。
作品のあちこちで、紙が蛇腹状になっていて、壁面にあわせて作品サイズが可変なのがおもしろいです。
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直線は、定規で引いたのではなく、紙を折ってその折れ線に着彩しました。
画面の下に目をやると、中央アジアを行き来する隊商のようです。
右側には、ネパールの空を飛ぶ渡り鳥が描かれています。
なかなか多彩なイメージが、たとう紙の形状を生かして展開されています。
旧作コーナーの中央に展示されている作品は、キトラ古墳からヒントを得たもの。
古墳と同じく、朱雀、玄武、白虎、青竜が四方を固め、中央部にはひつぎの死者が見上げる星座やえと(十二支)、天の使者が配置されています。
今回の個展の出品作全体にいえることですが、古い布をコラージュ的に活用している作品が多いです。
このあたりは、女性の共感を得そうです(この言説は、Polotical Collectness 的にどうかと自分でも思うが、布を手に取るのはおばさんの方が圧倒的に多いのが現状なので、ご賢察ありたし)。
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手前の縦長は、先に説明した「湖・層」。
次の壁から、新作の「トランプシリーズ」になります。
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「国際会議 あるいは条約締結」。
天井の高さでこの会場を選んだというだけあって、壁面を上から下までフルに活用した、平面インスタレーション的な作品です。
中央の部分、ひし形のテーブルを囲んで、4組の王・女王が協議しているというイメージでしょうか。
左下のキングとクイーンはロシアのトランプのデザインから引用。右下は、イスラエルのトランプ、左上は英国のトランプだそうで、それぞれお国柄が表れています(右上は国際的に共通の、おなじみの絵柄)。
画像から外れてしまいましたが、左下の床ぎわには、ロシアのトランプのジャックも描かれており、透視図法を用いたトリック的な画法が使われています。
ちなみに、床上の、床にあわせて描かれた模様の部分に、小石が置いてあります。伴のお孫さんが
「おばあちゃんにおみやげ」
と持ってきてくれたそうです。かわいい。
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「環」。
たとう紙を、円環状に12枚配した作品。
墨を吹きつけ、青を着彩して、布を貼ってちりばめて制作したもの。
中央は白く抜いてあり
「巡るイメージで作りました。一番時間がかかっていません」
とのことですが、迫力と躍動感いっぱいです。
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トランプシリーズの発端となった「王と王妃」。
実際のトランプの図柄と異なり、ふたりがワイングラスを手にしています。王のグラスが少し傾いています。
コシノヒロコのハンカチが貼り付けられたり、周囲に従者が描かれたり、遊び心ある作品です。
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最後の壁に展開されているのは「トランプ遊び」。
たとう紙の紙の繊維にあわせてダイヤの形を浮き立たせ、金色や銀色のボールペンで色付けした部分や、にかわが乾かないうちにラメの粉をまぶして光沢を出したり、技法フル活用といったところでしょうか。
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おなじ作の部分。
右側には、ぎょしゃ座の星座絵。
水で紙をぬらしてから、ハートマークの型を押しておもしろい効果を出しています。
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というわけで、なかなかたのしい日本画展でした。
2013年11月5日~10日(日)午前10時~午後7時(最終日~5時)
ギャラリーエッセ(北区北9西3 ル・ノール北9条)
・札幌駅北口を出て、エルプラザの左側(西側)を通り、モスバーガーのすぐ北どなりです
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