難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

人工内耳の装着時(音入れ)の映像による誤解が・・

2011年10月02日 14時08分36秒 | 人工内耳
人工内耳※を装着した女性が聞こえた瞬間の映像が公開されている。タイトルによって生まれつき全く聞こえない人が人工内耳ですぐ聞こえるようになるという誤解が広がらないか懸念している。
※実際は人工内耳ではなく人工中耳。

今まで聞こえなかった、聞こえにくかった人が新たに聞こえるようになった、あるいは聞こえるようになる可能性を感じた喜びはそれまでの聞こえなかった時代の苦痛を思えば当然だ。

映像を紹介するコメントにある「生まれつき聴覚に障害がある」とという表現は生来の「ろう者」を指している訳ではないだろう。
生まれつき全く聞こえないと音や言葉が脳に刷り込まれていないので、人工内耳で脳に届いた電気信号が「音や言葉」として知覚できないはずだ。
ろう者が人工内耳で聞こえるようになるのは医学的にかなり困難でも、ハビリテーションシステムがきちんとすれば効果はあるだろう。

本人?のコメントとして、
I was born deaf and 8 weeks ago I received a hearing implant. This is the video of them turning it on and me hearing myself for the first time :)
とある。
born deaf と言っているが、アメリカで29年前に生まれた子どもが何の聴覚補償も受けずに育ったり、ろう教育を受けずに成長することは考えられない。重度の難聴であっても補聴器で音や言葉を学習することは出来ていたのではないか。
もし言語が彼女の言語が手話であれば感動した時に手話で感動を表さないはずはないが、映像を見る限り手話は使っていない。
この映像の女性は人工内耳をするまで一定程度の聴覚はあったのではないか。

「生まれつき重度難聴だった女性(29)が初めて人工内耳で聞こえた」にタイトルを修正すべきだ。

ラビット 記
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【感動映像】生まれつき聴覚に障害のある女性(29)が人工耳により初めて「聞こえた」時の瞬間映像
http://rocketnews24.com/2011/10/01/13583/

Youtubeの元の映像がこれだ。
http://www.youtube.com/watch?v=LsOo3jzkhYA

残存聴力活用型人工内耳(EAS)はすべての人工内耳対象者に!?

2011年10月02日 08時24分49秒 | 人工内耳
残存聴力活用型人工内耳(EAS)は低周波域に残存聴力のある難聴者が対象と思っていたが、すべての人工内耳手術を行う重要と言う。
「手術に引き続いて起こる内耳障害」とは具体的に何を指すのか。
将来的に高機能インプラントへの交換、遺伝子治療、再生医療にも言及している。
残存聴力活用型人工内耳(EAS)は手術を受けた人の感想を集めて評価したいが、まだ発表した人がいないようだ。

今後大きな波紋を起こすことは間違いない。

ラビット 記
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「侵襲の少ない人工内耳手術」
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/ent/ci.html
信州大学では低音部の残存聴力を活用する残存聴力活用型人工内耳(EAS)を高度医療として行っています。EASでは低音部の聴力をいかに温存させるかが重要なポイントとなります。従来は内耳に電極を挿入することにより、もともとの内耳機能は失われてしまうと考えられていましたが、侵襲の少ない手術を行うことによって内耳の機能や構造をそのままに残せることが明らかになってきました。

この考えは残存聴力のある患者さんのみでなく、すべての人工内耳手術を行う際に重要になる考えです。全周波数にわたり残存聴力のない重度難聴患者さんに対する通常の人工内耳を実施する際にも、低侵襲手術を行い、手術に引き続いて起こる内耳障害を予防することは、長期的な聴神経の変性を予防する意味からも重要であると考えられています。

特に幼小児の場合、その先70-80年使用することを考えると聴神経の保護には特に気を遣わなければなりません。さらに将来的により高機能のインプラントへの交換の可能性、あるいは今後開発される遺伝子診断、再生医療といった新たな治療法の適応になる可能性も視野に入れ、内耳の構造や機能を正常なまま残しておく手術を行うことが重要です。また、内耳に対する侵襲の少ない手術は、聴覚ばかりでなく平衡機能も正常なまま保存出来ることが明らかになってきています。

信州大学ではそのような理由からすべての人工内耳手術の際に「内耳にやさしい」人工内耳手術を取り入れています。詳しくは下記にお問い合わせ下さい。


本件に関するお問い合わせ

 信州大学医学部耳鼻咽喉科
 TEL:0263-37-2666 FAX:0263-36-9164
 E-mail:orl@shinshu-u.ac.jp

人工内耳のリコールと情報開示。

2011年10月02日 06時54分58秒 | 人工内耳
9月12日、コクレア社は人工内耳ニュークレアス5のインプラント(埋め込み電極)のリコール(自主回収)を発表した。

これについて、9月27日、日本コクレア社は人工内耳のリコールについてアナウンスした。
http://www.cochlear.com/files/External_Comm_Recall1.pdf
?6リコールされたのは未装着のインプラント(埋め込み電極)で、体外装置のサウンドプロセッサーではない。
N5のサウンドプロセッサーは日本でも1ヶ月前に認可されたばかりだ。

A社が自社製品の事故をアメリカ本社が経過や事故について発表し、世界の支社が翻訳したものをホームページで公表しているのに、日本では自社のホームページで公表してこなかった。
医家向けには情報を開示しても、一般市民や利用者には知らせないことになる。

利用者は元より医師、教育関係者、親など以外に一般社会に間違った理解が広がることを恐れる。
9月4日に行われた、人工内耳の日記念ウオーク&トークも人工内耳の啓発と同時に安全、安心な技術の発展を願うアピールを発表しているのもこの理由だ。

日本コクレア社が少し時期が遅れたとは言え、自社で情報開示したことは評価できる。
ただ、問い合わせ方法が電話番号のみというのが聞こえないものにとっては残念だ。

ラビット 記
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コクレア人工内耳 CI500 シリーズインプラントの自主回収について
関係各位様
2011 年 9 月 27 日
株式会社日本コクレア
代表取締役社長
有馬 清
 コクレアでは一昨週、CI500 シリーズのインプラントの自主回収(未装着の流通在庫のみ)を実施することを発表いたしましたので、ここにご報告申し上げます。
 このCI500 シリーズのインプラントは、国内では薬事未承認で、販売されておりません。かつ、CI500シリーズ以外のインプラントはこの自主回収の対象になっておりませんので、この回収による国内でのコクレア製品及び患者様への影響は一切ございません。
 以下、関係者の皆様へのご参考情報として、この自主回収の背景・経緯につき説明申し上げます。
 CI500シリーズの一つである CI512 インプラントの信頼性は 2009 年より海外で発売して以来、99%以上の信頼性を保っておりましたが、最近になって故障率が増加傾向にあることが判明、製品の信頼性に対する取り組みと装用者の方々への十分な配慮を念頭に、コクレアではこの問題の原因を徹底解明するために自主回収することを決定した次第です。
 尚、先月 8 月末に厚生労働省の薬事認可を取得して、既に発売のご案内をしている、Nucleus 5サウンドプロセッサ (CP810) を含め、体外装置であるサウンドプロセッサは機種を問わず、今回の自主回収の対象ではございません。従いまして、今後手術を受けられる方には、体内装置はFreedom (CI24RE) インプラントを、体外装置は前述の Nucleus 5サウンドプロセッサ(CP810)(一部、Freedom サウンドプロセッサ)を引き続きご提供してまいります。
 コクレアにおきましては、25 年以上、人工内耳の信頼性は最重要項目として取り組んでおり、高品質でかつ信頼性の高い製品を提供することを引き続きお約束してまいります。
 尚 、この件で不明な点やご質問等ございましたら、弊社カスタマーサービス部 (TEL: 03-3817-0243) までお問い合わせください。
 今後とも引き続きご高配賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

わさびの香りの火災警報装置は聴覚障害者の発案だ。

2011年10月02日 00時13分47秒 | 日記(つぶやき)
各メディアで、イグ・ノーベル賞にわさびの香りの火災警報装置が受賞したと報じられている。
受賞したのは大学講師、香りマーケティング協会理事長、気体噴射機メーカー、警報装置メーカーなど7人が受賞したとある。
この警報装置の開発のきっかけになったのは聴覚障害者の松森果林さんだ。なぜ松森さんが受賞者の中に入っていないのか。

下記の記事の動画で、今井真滋賀医科大講師は授賞式のスピーチで「火災などの緊急時に聴覚障害者に知らせる方法を考えていた」と話している。
そのヒントを実際に提案したのが聴覚障害者自身であることを言っていないようだ。これこそが大きなニュースバリューだろう。

2010年8月10日の日経ビジネスの記事によると、その聴覚障害者とは松森果林さんだ。松森さんがシームスの商品開発に大きな貢献をしたことが写真入りで報じられている。
開発メーカーの「シームス」は2000年に創業、松森さんが商品企画顧問になったのが2001年、匂いで警報を発する装置の開発に取り組んだのが2003年。

最初にアイデアをだした人がいなければ商品化も臨床試験もないのではないか。
松森果林さんが、イグ・ノーベル賞の受賞者の一人になってもおかしくない。

ラビット 記
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「シームスは2000年11月、「イー・ワンジャパン」の名で創業。」
「そんな松森さんとシームスが出会ったのは、2001年春、聞こえない人の立場から家電製品の不便さを考える目的で開催されたセミナーの会場。最初に出会ったのは、種村秀輝・シームス取締役だった。」
「シームスでは2003年頃から「就寝時でも目覚めるにおい」の研究開発に着手。」

イグ・ノーベル賞に日本の7人 わさびの香りの火災警報装置
化学賞
2011/9/30 10:07

装置開発の「答えはワサビスプレーにあった」 聴覚障害者向け火災警報装置でイグ・ノーベル賞を授賞した今井真滋賀医科大講師
 【ケンブリッジ=共同】ユーモアあふれる科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が29日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で開かれた。わさびのにおいがする気体を噴射して聴覚障害者に火災を知らせる警報装置を開発した田島幸信・香りマーケティング協会理事長(57)、今井真滋賀医科大講師(49)ら日本人7人が化学賞を共同受賞した。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819499E1E2E2E2908DE1E2E2EBE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

「わさびのにおいで命を救う」を生んだ、障害者のチカラ《前編》
シームス
高嶋 健夫  【プロフィール】
昨年4月、“世間の意表を突く”新しいタイプの火災報知器が発売された。火災が起きたことを、「わさびのにおい」を発生させて知らせる「臭気発生装置」というものである。開発・発売したのは、独自の香りビジネスを展開するバイオベンチャーのシームス(本社東京・千代田区)だ。

 大手メーカー製の市販の住宅用火災警報器(住警器)と組み合わせて、親機である火災報知器が作動すると同時に、子機である臭気発生装置が信号を受け取り、わさびのにおい成分を室内に拡散させる仕組みだ。主な販売ターゲットは聴覚障害者。加齢によって聴力が衰えた高齢者も含めて、一般の「警報音」が聞こえない、聞こえにくい人は国内に約600万人いると推定されている。そうした人たちのために、音だけでなく、光や振動で知らせる火災報知器はそれ以前からあったが、においによる火災報知器が商品化されたのはこれが初めて。視覚、聴覚に代わる、いわば「第三の感覚」である嗅覚に着目した画期的な新製品なのである。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100804/215707/?P=1

もちろん、ろうの人たちはいつも振動モードにセットしておくのだが、携帯電話をバッグの中に入れている時とか、就寝中に枕元に置いている時とかには、振動に気づきにくい。そこで、松森さんは「香りで着信を知らせる」というアイデアを提案したのである。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100804/215707/?P=3

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