難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

聴覚障害者の研修、スクーリング等の通訳派遣が必要な理由。

2012年07月31日 05時10分32秒 | 福祉サービス
聴覚障害者が働く上で、研修は必須だ。一般企業でも社員に対する研修は新入社員から中堅社員、幹部社員、経営者にまで行われており、知識、スキルを向上させるための研修も多い。政府も受講料を補助する制度まである。専門職となれば資格等に関わる研修は多い。

これらには公費派遣が認められていない。それは、研修を職務として受講を命ずる雇用者(企業)の営利行為と見なされるからだ。企業と言えども、障害を持つ従業員を障害を理由に差別することは許されないので、研修に伴う通訳の費用は負担すべきだ。
実際には費用の負担を嫌って、聴覚障害者の社員に研修受講を免除することが多い。しかし、これは二重に企業の損失となる。障害を持つものの力量の向上が得られないために日常業務の遂行にも支障を来すだけでなく、社員のモチベーションを著しく低下させ、企業の一番の資質、一体性を損ねるからだ。一体性のない企業の発展はない。

現時点で、障害者の雇用促進に関わる法律でも企業に対し通訳の保障を義務付けるものはないが、改正障害者基本法第22条の意思疎通を仲介する者の派遣を国と地方公共団体の義務としている以上、就労の権利を障害者総合支援法で国がカバーすべきだろう。
障害者総合支援法は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」であり、目的に「障害者総合支援法の目的の実現のため、障害福祉サービスに係る給付に加えて、地域生活支援事業その他の必要な支援を総合的に行うものとする」旨を明記されている。
障害者雇用関係法の整備を待たずしても、適切は派遣が受けられるようにすべきだろう。

また、大学や専門学校等の通信教育にスクーリングがある。
スクーリングがあるのは個々の学生の学習の進捗状況や学習上の問題解決のために行われる。通信による学習と指導とスクーリングは一体のものだ。
厚生労働省の「教育訓練給付制度」でスクーリングがないと指定が受けられないほどだ。

「54通信制講座はスクーリングを必ずセットで行う必要がありますか。
教育訓練給付制度指定講座を適正に運営するためには、適正な本人確認や学習進行管理を行う必要があるため、スクーリングが設定されていないものは原則として指定の対象となりません。」
http://www.mhlw.go.jp/qa/syokunou/kyouiku/qa1.html#1

これは、企業等の直接的な営利行為とは区別され、聴覚障害者の学習という社会生活の一部として、障害者自立支援法のもとでも一定派遣されて来た例がある。総合支援法では、幅広く認められるべきだろう。

ラビット 記

難聴者が音声でコミュニケーションする権利と障がい者権利条約

2012年07月31日 04時10分54秒 | 障がい者制度改革
障害者権利条約は、難聴者の権利の保障に大きな武器となりますが、アメリカではろう者の文化、手話のみを保障することになると反対の署名運動がはじまっています。
しかし、これは全難聴としては、疑問を呈したい。アメリカの特別な事情に日本は一線を画しています。

障害者の権利条約に難聴者の権利を盛り込むために、全難聴は3度にわたり、代表団を派遣し、アドホック委員会で精力的なロビー活動やサイドイベントを行いました。
その結果、第2条の定義には、難聴者のコミュニケーションに関わる音声、補聴器、補聴援助システム、筆記、文字、マルチメディアを用いたあらゆる方法が記述されました。同上に、言語には音声言語が明記されています。
第9条情報アクセスの保障について、難聴者も当然対象になり、音声を補聴器、補聴援助システム等でアクセスすることも含まれるものです。
また、第24条教育で、障害者が社会参加に必要なコミュニケーション手段を獲得する権利が記述され、これは難聴者には読話、手話を学ぶことを指しています。
第26条リハビリテーションで、難聴者は必要な補聴器や人工内耳による聴覚補償訓練を受ける権利を有すると考えています。
第30条の障害者の独自の文化的言語的なアイデンティティを有することは、難聴者が音声による文化、言語環境から排除されないことも意味します。

障害者制度改革推進会議では、難聴者の委員のために磁気ループ、要約筆記者、介助者が用意され、7月から始まった障害者委員会でも同様の配慮が用意されています。

https://www.change.org/petitions/u-s-senate-vote-to-oppose-the-un-crpd-as-it-is-currently-written

ラビット 記

「障害」の定義 差別禁止部会の意見

2012年07月31日 03時00分41秒 | 障がい者制度改革
第3、障害の定義
1、議論の背景
「障害」の捉え方、特に障害者が負う社会的不利の原因を巡っては、従来から医学モデルと社会モデルという考え方があるとされている。
そのような中で、障害者権利条約の前文では「 障害は発展する概念であり、機能障害をもつ人と他の者との平等を基礎として社会に完全にかつ効果的に参加することを妨げる態度や環境の障壁との相互作用に起因するものであることを認め(部会長訳)」るとされ、障害が機能障害(インペアメント)と社会的障壁の相互作用から生まれるという考え方が示された。

ただ、かかる視点を踏まえて平成23年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)は第2条において 「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む )その他の心身の機能の障害」を障害とした上で、障害者を、これらの障害がある者であって 「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義された。

したがって、この定義では「障害」そのものではなく 「障害者」の定義の中 、に社会的障壁が位置付けられることになった。

2、本法における障害の定義に求められるもの障害についてはかように「障害」の定義の中で社会的障壁を考慮するやり方 、と「障害者」の定義の中で社会的障壁を考慮するやり方があるが、本法においては本法の目的や趣旨から「障害」を定義する必要がある。
まず、本法は 人種や性別などのあらゆる事由を含む包括的な差別禁止法ではなく、障害を理由とする差別に特化した法律であるがゆえに「障害」とは何かを明らかにする必要がある。

もちろん、一言で「障害」と言っても実際の在り方は多様であり、また、医学の進歩や技術の革新等により変容し得る概念であるため、法律上の定義としてはある程度曖昧な内容を含むものとならざるを得ない側面もある。
しかしながら、本法は、様々な場面において国、地方自治体及びこれに従事する公務員のほか、民間事業者、私人も含めた社会の行為規範(人々が行為する際の判断基準)として機能することが求められるため、本法の基本的な概念である「障害」の意味については、誰しもが観念し得る一定の明確性が確保される必要がある。

そういった観点に立つと「障害」の中に社会的障壁を盛り込む障害者権利条約上の「障害」の考え方より、機能障害(インペアメント)に限定する障害者基本法上の「障害」の考え方の方が「障害」の内容を分かり易くより明確なものとして提示できると思われる。

また、憲法や諸外国の立法例を見ても、差別が禁止される事由は、性や人種等に見られるように、個人に関係した属性であり、それらの事由により差別されないとされている したがって 本法においても個人の属性といった観点から 障害」が定義されることが求められる。
このことは、個人の属性に社会的不利の原因を求めるものではなく、差別という社会的障壁の発生の契機となる事由を特定するに過ぎないものであるがゆえに、社会モデルの考え方と相反するものではない。

そうした点に鑑みると、本法においても障害者基本法と同様に心身の機能の障害(インペアメント)を「障害」と定義することが妥当である。

第1回障害者政策委員会 差別禁止部会 資料6
「障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定等」に関する差別禁止部会の意見
(部会三役の原案1 )
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/b_1/pdf/s6.pdf