あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

フォークス日記 7

2011-05-09 | 
西海岸の雨は甘くない。
今日は雨音を聞きながら寝よう、などと呑気に構えていたのだが、夜になり雨は強さを増しテント内も浸水した。
さすがのマックパックのテントも西海岸の雨にはかなわないようだ。
テントの中が水浸しになる想い出は南米ペルーでもあった。
20代半ばで南米に放浪の旅に出かけた時、ペルーのインカトレイルを歩いた。
3泊4日、テントに泊まりながらのトレッキングだ。
今では人気コースで入山制限も厳しいようだが、当時はまだ人も少なくマチュピチュへ行く穴場的な存在だった。
その時はボクはまだ晴れ男ではなく、行動中雨が降り続いた。
テント内には数cmの水がたまり、寝袋はびしょびしょ。
楽な山旅ではなかったが、最終日にマチュピチュにたどり着いた時、それまで降っていた雨は止み太陽が差し込んだ。
インカの神様は太陽である。その神様がここ一番という所で味方してくれた。
辛い山旅が全て報われた。あの感動は今も忘れない。

西海岸の雨は夜通し降り続き、朝になっても雨である。
今日は1日雨かな。
テント内から荷物を撤収。寝袋などを干す。
今日はキミもタイも仕事が休みなのだが、この雨ではどこかへ行く気にもなれない。
午前中はダラダラと過ごし、午後はキミにフラックス・ウィービングを教える。
フラックスはニュージーランド原産の植物でこの国ならどこにでもある。
葉っぱは繊維が強く、マオリ族はこの葉を編んで籠やバスケット等を作った。
ボクも数年前にマオリのおばちゃんにやり方を習い、いくつか作った。
家のトイレにあるトイレットペーパー入れも作ったし、形を整えればペン立てにもなる。
何と言ってもどこにでもある素材というのが良い。タイの家の周りにも生えている。
葉っぱを取るのにもルールがある。
真ん中の3本は残し、その外側の葉を取っていく。一番真ん中の短い葉は子供でそれを包むようにお父さんとお母さんの葉なのだそうだ。
葉っぱをある程度の長さにまとめ、編んでいく。
難しい作業ではない。キミにコツを教え、おしゃべりをしながら作業をする。
一度基本を覚えれば、それをもとにして自分で応用できる。
「図書館で本を借りて読んでみたけどなんかピンと来なくて」
キミが言った。
「オレもそうだったんだけど、最初は誰かに教わるのがいいんだよ。そのやり方でいくつか作ってみてから本を読めば理解もできるよ」
マオリの文化は、マオリのおばちゃんからボクへ、ボクからキミへと伝わる。そしてたぶんキミから別の誰かに伝わっていくのだろう。
とてもよろしい。

夕方になり皆で自家製クライミングウォールへ。
皆がやる様子を眺めながらボクはビールを飲む。
こういう自堕落な1日もたまにはよかろう。

コメント
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